2011年 アメリカ映画 118分 サスペンス 採点★★★★
検察と裁判官が同じチームにいるかのようなこの国の司法の現状はどうしようもないと思うんですけど、法の原理原則よりも自分らの理念や理想論をアピールするのに忙しい弁護側もどうしようもないよなぁと。法や手続きの不備を突いて無罪を“勝ち”取るアメリカの司法制度が最高だとは到底思えないんですけど、活用次第では原告にとっても被告にとっても法が間違いなく平等に働くって意味では全然マシで。
【ストーリー】
司法取引を利用して罪を可能な限り軽減させる手法を得意とするやり手弁護士ミック・ハラーのもとに、女性殴打事件で告発された資産家の御曹司ルイス・ルーレから弁護依頼が舞い込む。無実を訴えるルイスであったが、事件を詳細に調べていく内に、ルイスが4年前にミックが担当した殺人事件の真犯人である可能性が浮上する。立場上身動きが取れないミックは・・・。
マイクル・コナリーによる同名ベストセラーを、『ハード・クライム』のブラッド・ファーマンがメガホンを握り映画化した法廷サスペンス。
過去に死刑を回避するための司法取引で依頼人を有罪にした殺人事件の真犯人を、そうと知りつつも弁護をせざるを得なくなった弁護士が巻き込まれるトラブルと苦悩を緊迫感たっぷりに描いた本作。巧みな罠にはめられた上に、制度上身動きの取れない主人公が知恵と裏技を駆使して大逆転していく様がなんとも痛快。定番ではあるが、被告の母親が絡むラスト近くのひと捻りも程よい闇を物語に与えていた。原作本同様、情報が一気に出てくる序盤は若干混乱を生みだしちゃうし、事務所代わりにリンカーンを乗り回しているというキャラ設定の肝が活かされていない点など気になる所はあるが、物語自体が持つ面白さがその辺を存分にカバー。
そんな物語以上に魅力的なのが、主人公である弁護士ハラーのキャラクター性。一見勝てれば何でもいいような悪徳弁護士のように見えて、しっかりとした仕事をしない検察に対する怒りや無実の人間を刑務所に送ることに対する恐れを持つ、正統派の正義漢ではないが独自の正義感を持つハラー。ビジネスライクの冷淡さを感じさせる一方で、なんだかんだと面倒見の良い下町派弁護士の顔を垣間見せたりも。程よい毒と愛情に溢れたハラーと周囲の人物の魅力がたっぷりに描かれてただけに、原作もまだあることだしマシュー・マコノヒーが続投するのであればシリーズ化を願いたい作品だったなぁと。
“マシュー・マコノヒーが続投するのであれば”と書いたのも、それだけ『MUD マッド』のマシュー・マコノヒーが素晴らしかったから。心の感じられない冷たい顔をしたかと思いきや、家族や友人の前では表情は変わらないのに一気に心が入ってくる、非常に細やかな表現でキャラクターの持つ性質や魅力を存分に表現。一時元気がなかった感じもした彼ですけど、本作前後以降ピークが来てるなぁと。
そんなマシュー・マコノヒー以外にも、非常に豪華な顔触れが好演を見せてるのも本作の魅力。個人的にはジュリアン・ムーアと共にMILFの代表格である『ラブ・アゲイン』のマリサ・トメイを筆頭に、ボンボンの変態ってのを苛立たしいまでに好演した『父親たちの星条旗』のライアン・フィリップ、登場するや否や「あぁ、今日はもたなそうだなぁ・・・」と確信させるだけのフラグをビンビン立ててた『ザ・バッド』のウィリアム・H・メイシー、法の末端でビジネスをしている如何わしさが抜群だった『ジョン・ウィック』のジョン・レグイザモなど、メインに絡むだけでも好みの顔触れがわんさか。
その他にも、ひたすら可哀想だった検事に扮した『かぞくはじめました』のジョシュ・ルーカスや、善人からやさぐれてしまうふり幅の広さが見事だった『アントマン』のマイケル・ペーニャ、『告発のとき』のフランシス・フィッシャー、『GODZILLA ゴジラ』のブライアン・クランストン、『アルゴ』のボブ・ガントンに、相変わらずの棒演技に驚かされた『フィラデルフィア・エクスペリメント』のマイケル・パレと、もう隅々豪勢なんでそれだけでも満腹感味わえる一本で。
無実と無罪は別物
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