2015年 アメリカ/カナダ映画 101分 ホラー 採点★★
ちょっと大きな家に引っ越したおかげで、念願だった自分だけの2階の部屋を手に入れた中1の長男。初日の日中こそは「うふーうふー♪」と大喜びで部屋の準備をしてたんですが、いざ夜になるとこれまで狭い家で家族5人がぎゅーぎゅー詰になってた密度に慣れちゃってた上に持ち前の怖がりを発揮して、さっぱり部屋に上がろうとしない。仕舞いには6歳の末っ子に「一緒に寝てください!」と土下座する始末。いずれ慣れるとは思うんですけど、兄弟でピッタリくっついて寝てる姿が可愛いので、お父さんは寝る前に怪談話をぶち込んでしばらくはビビリのままでいさせようかと。
【ストーリー】
仕事を失ったことによる経済的理由で、郊外の格安物件に引っ越すこととなったボーウェン一家。新しいスタートを切ろうとした一家だったが、引っ越してくるや否や怪異現象に悩まされる。そんなある夜、末娘のマディソンが忽然と姿を消し、TVの中から助けを求める声が響く。超常現象研究家に助けを求めた一家は、その家にまつわる恐ろしい秘密を知り・・・。
スピルバーグが製作し、トビー・フーパーがメガホンを握って1982年に公開された『ポルターガイスト』のリメイク。『スペル』のサム・ライミが製作を担当し、『エンバー 失われた光の物語』のギル・ギーナンが監督を務めた騒霊ホラー。
オリジナル版はビデオ、DVD、ブルーレイとメディアが変わるごとに買換えてた思い入れのある作品なのでフェアな視点での鑑賞は難しかったとは言え、ビジュアル的にもテンポ的にも経年劣化が著しいとは言えぬ作品をなんでわざわざリメイクし、しかもこんな形にしちゃったのか理解がさっぱり出来なかった本作。リメイクする以上は完全コピー品でお茶を濁すのではなく、より良いものにしようという気持ちだけでも伺えればまるで別物になっていても楽しめるのだが、本作にはそんな姿勢もオリジナルを好きだって気持ちもしっかり研究した気配も感じられない、ホント「なぜ作った?」としか言いようのない一本に。なんか、「『インシディアス』とか『死霊館』が当たってるから丁度いいんじゃね?」という安易な発想からスタートしたような感じが見え見え。オリジナル版の影響を多大に受けた作品にリメイク版の方が追従しちゃった、コピー版の劣化コピー版的な作品。
“額に汗して得た成功”ってのがリアルじゃなくなった時代なので、経済的に困窮している一家への変更はまぁ分かる。それが家族関係の希薄さを生み、異常な経験を経て家族の再生を図るってのもまぁ。「それじゃぁ『悪魔の棲む家』のリメイクじゃね?」って気もするが、その辺は大目に。善し悪しは別にして、時代に合わせた変更を試みたんでしょうし。
ただ、実際に報告された霊現象に基づいた怪異描写の静かな積み重ねとエスカレーションや、子供のために全てを投げ打って怪異に立ち向かい親の強烈なまでの愛、原因に接点を持っていた家族という設定、闇でひと際輝く子役の姿、祖父母の居ない核家族化が進む郊外族に助けの手を差し伸べる一つ上の世代、そしてジェリー・ゴールドスミスによる素晴らしいテーマ曲など、オリジナルを輝かせた素晴らしい要素の数々をバッサリ削っちゃったのはどうなのと。代わりに目を引くものが加えられてるなら良いんですけど、本作に加えられたのが研究家と霊能力者の不器用な恋模様とか、屋内で居る場所の高低差まで判別するGPS、なんかラジオみたいに雑音を拾いまくるスマホ、霊界に突入するドローン、エンディングに唐突に流れてくる全くそぐわない曲にオマケシーンと、どれもこれもいらないものばかり。長女が「ショッピングモールも潰れてる街」と言った次のシーンで父親がショッピングモールで買物してたり、近所に人が住んでる気配が全くなかったり、初日に地下室からヘドロが湧き出てるのになんら文句を言わなかったりする、脚本のいい加減さも目に余る。
まぁ、こんな細かいところばかりに文句を言ってると単なる年寄りの小言みたいなので、『ポルターガイスト』をモチーフとしたアトラクション映画として楽しもうと気持ちの軌道修正を図るも、とんとん拍子に怪奇現象が起きてとんとん拍子に解決する、なんの溜めも開放もない平坦な作品なのでアトラクションとしてもイマイチ。なんというか、真っすぐ平坦なレールの上を時速30キロくらいで走るジェットコースターのよう。
無駄遣いでしかなかったとはいえ、『セブン・サイコパス』のサム・ロックウェルをたっぷり観れたってのだけは救いだったかと。
幽霊屋敷だろうが失業中に家が買えるんだからまだマシ
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