2014年 イスラエル映画 89分 ドキュメンタリー 採点★★★
100万ドルで作った映画だろうが1億ドルで作った映画であろうと、概ね同じ料金で楽しめるってのが映画の素晴らしい所の一つですよねぇ。ただ、本来なら老若男女気軽に楽しめる大衆娯楽のはずが、こと日本ではおおよそハンバーガーのセット3個分、牛丼なら5杯分に匹敵する料金設定もあってか、“映画に行く”ってのがイベント化しちゃってなかなか気軽に楽しめなくなってきた感じも。そうなってくると上映される作品や観に行こうとする作品も料金に見合うものに偏ってきちゃって、バラエティにも品質のふり幅的にも乏しくなってきたなぁと。
【ストーリー】
イスラエル映画界で成功を収めた映画監督のメナヘム・ゴーランと、従兄弟でプロデューサーのヨーラン・グローバスは渡米し、映画の都ハリウッドで新興映画会社キャノン・フィルムズを立ち上げる。低予算娯楽映画を大量生産し巨万の富を築き上げた彼らは、巨額予算作品やアート系など映画全方位に手を広げていくのだが・・・。
80年代ハリウッドで大旋風を巻き起こしたキャノン・フィルムズの繁栄と衰退、そして形は違えど映画に対し情熱を燃やすゴーランとグローバスの姿を描いたドキュメンタリー。
とりあえず出だしにキャノン・フィルムズに対する思い入れとか思い出とかを書いて、ノスタルジックなレビューにでもしようかと思ったんですけど、どう頭を捻っても特に思い入れなど出てこない。いや、別に全く無関心なわけなんかじゃなく、ざっと調べただけでもその特定の時期に映画館なりビデオなりで観たキャノン映画の数が50本近いという、あまりに当たり前の存在過ぎて書くことが浮かばず。80年代の映画体験のかなりの割合がキャノン。もう、ほぼほぼただの日常。なので、特に書くことなし。
ただ、今の若い子なんかはキャノン映画と言われてもピンと来ないでしょうから簡単に特徴を説明すると、概ねチャック・ノリスとブロンソンとニンジャで出来てる映画。時折ゴダールやシェークスピアに手を出しちゃったりもしますが、それと同時にスタローンやトビー・フーパー、そしてやっぱりチャック・ノリスとブロンソンも手掛ける、“面白ければ別に良いじゃん”的会社。例えるなら量が多くて味付けが濃い目の大衆食堂って感じでしょうかねぇ。
そんなキャノン・フィルムズを作り上げたゴーランとグローバスの姿と会社の盛衰を描いた本作。当人たちやジャン=クロード・ヴァン・ダム、ジョン・ヴォイトら関係者のインタビュー、当時の映画製作の舞台裏、社会や業界の反応などで構成された本作は、キャノン・フィルムズの歴史のみならず80年代映画史の一側面をうかがい知ることが出来る、懐かしさに頬を緩めながら非常に興味深く楽しめた一本で。
もともとキャノン帝国の滅亡と共に袂を分かったゴーランとグローバスの再会をメインにした作品であるためか、80年代業界史としてもキャノン映画史としても満遍なく抑えている分ある特定の分野に特化した深みはなく、「もうちょっと知りたい!」という欲求が出てしまうのだが、その辺は同時期に製作されたキャノン・フィルムズに関するドキュメント“Electric Boogaloo: The Wild, Untold Story of Cannon Films”やもろもろの映画本で補完も可能なので、その方面の知識を深めたい方々の導入編としては十分な一本。
メジャー会社が牛耳るハリウッドに風穴を開けかけた、本作の完成後程なく惜しくも亡くなってしまったメナヘム・ゴーランの映画製作に対する情熱、そして暴走するそんなゴーランを後ろでしっかりと守り続けたヨーラン・グローバス。この二人のエネルギッシュな姿に、今の映画に足りないものがなんなのかという答えが一瞬頭をよぎる感じもした一本でしたねぇ。まぁ、それが『スーパーマン4/最強の敵』じゃないことだけは確かですけど。
失敗を悔いない姿勢は見習いたいなぁ
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