2016年04月07日

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 (Batman v Superman: Dawn of Justice)

監督 ザック・スナイダー 主演 ベン・アフレック
2016年 アメリカ映画 151分 アクション 採点★★★

背負ってる荷物が重過ぎて難儀していたお婆さんの荷物を代わりに背負って目的地まで一緒に行ってあげる。“善悪”で考えればこれは明らかに善ですよねぇ。でも、これが“正義か悪か?”って問題になると、ちょいと複雑になってくる。極端な例え方にはなるんですけど、この婆さんが誰かを殺すために爆弾を背負ってたんなら、善行したつもりが殺人の片棒を担いでしまう。その“誰か”ってのが連続殺人犯とかだったりすると、これまた複雑になってくる。もうちょっと極端にしてみると、その“誰か”ってのが圧政を強いる独裁者だったりすれば、それは所謂西側諸国にとっては“正義”になるのか?逆の立場ではどうだ?結局のところ、“正義”って主観的なものでしかないんですよねぇ。

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【ストーリー】
スーパーマンとゾッド将軍との戦いは、メトロポリスに甚大なる被害をもたらした。スーパーマンの持つ超人的能力は人々の尊敬を集めると同時に、人類の脅威として人々の心に恐怖を植え付けてしまう。バットマンとしてゴッサムシティの闇を守るブルース・ウェインもまた、スーパーマンの存在に脅威を感じていた。そんな折、スーパーマンに対抗しうる力を探していたブルースに天才実業家レックス・ルーサーが近付いてきて・・・。

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DCコミックの2大ヒーローの対決と、タイトルにある通りジャスティスリーグの誕生を描いたアクション大作。『300 <スリーハンドレッド>』のザック・スナイダーが『マン・オブ・スティール』からキャストと共に続投し、キャストが総入れ替えとなったダークナイト組のクリストファー・ノーランらは製作総指揮に。
ウルトラマンメビウスの第一話で、念願の地球デビューとなった新米ウルトラマンのメビウスが張り切って怪獣を倒すも周囲の街は瓦礫の山と化し、防衛チームの隊員に怒られションボリ。ふとそんなことを思い出させるオープニングから、一貫して“正義”の意味と功罪を描く本作。複数の人間の意志決定で行われるのではなく、一個人でしかないヒーローの主観的正義観念による行動がもたらしかねない恐怖や、その強大な力を前にした時の人々の反応、移ろいやすい世論など、ヒーローが現れた時の“もしも”視点で描かれる世界観が非常に興味深い。スーパーマンの宿敵として有名なレックス・ルーサーが力で対抗するのではなく社会的に抹殺しようと試みたり、スーパーマン自身もバットマンをメディアの世論誘導で悪者にしようとする、人間目線に寄った視点も面白い。

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スーパーマンとバットマンという2大ヒーローの激突をメインに描いているのだが、このヒーローたちの描き分けも巧い本作。
根っからの善人であり、その行動はあくまで個人的な正義感と善意に基づくスーパーマン。ただその一方で、『ウォッチメン』のDR.マンハッタンとオジマンディアスのように正義の実現のために自ら悪になる覚悟も大局的視点も持たない故に、その行動が思わぬ場所に害をなす場合も。また、欲や理念が行動原理を占めてるわけではない善人ならではの融通の利かない性格と、天罰に匹敵するパワーは国家や人類の脅威になりうる危険性も。アメリカを中心として活動しているが、本人に悪気がない分敵対国側に立った行動をしてしまう危険性もなくはない。国家としては危険極まりない存在
一方のバットマンもまた個人的な主観に基づいた正義感で行動をしているが、理念を実現する為には犯罪行為に手を染めることも厭わず、また自覚もしている。また、その視点は徹底的に人間側に立っている。同じくスーパーマンに対し脅威を感じているレックス・ルーサーからクリプトナイトを強奪するのだが、まだ表立った犯罪行為を行ってないルーサー側に容赦ない攻撃を加え強奪する様は、まさにダークヒーローここにあり
この性質の似て非なるヒーローたちの描き分けや社会描写、DCコミックらしい暗く重いビジュアルなど見どころ満載な本作なのだが、面白いのは残念ながらクライマックスを前にしたここまで

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いざ対決がメインとなる中盤以降になると、一気に描写が雑になってしまう本作。結局レックス・ルーサーは何がしたいのかさっぱり分からなくなるし、スーパーマンの脅威となるクリプトナイト槍を捨てたロイス・レインはそれがドゥームズデイに対抗しうる唯一の武器であることを知らないはずなのにおもむろに取りに戻ったりする行き当たりばったりさ。そんなスーパーマン最大の敵であるはずのドゥームズデイも、「あぁ、そう言えばレックスなんかやってたなぁ・・・」と思っちゃうくらい登場が唐突だし、スーパーマンすら一度は倒れた強大な敵が突然現れちゃうもんだから、バットマンは途端に空気になってしまうパワーバランスの悪さも気になる所。その空気と化したバットマンがジャスティスリーグ結成の必要性に気付く経緯も、やっぱりなんか唐突でしたし。
結局のところ、アベンジャーズでアメコミ映画フランチャイズビジネスを大成功させたマーベルに、ジャスティスリーグで対抗しようってのが本作の目的なんでしょうけど、先に挙げたパワーバランスの悪さやキャラ描写の雑さなどマーベルと比べてしまうと準備不足感が否めないだけに、今後単品で登場する予定のフラッシュやアクアマン、サイボーグらに対する期待感がイマイチ高まらないのは痛い。

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そんな後発としての焦りが見え隠れしてしまった本作ではありましたが、思わぬ収穫があったのも事実。それはブルース・ウェインに扮した『ゴーン・ガール』のベン・アフレック。そのケツアゴのせいか何度かアメコミヒーロー役候補として名が挙がり、実際にマーベル映画の黒歴史の一つである『デアデビル』やある意味スーパーマン役だった『ハリウッドランド』にも出演。ただ、どちらかと言えばいじめっ子や卑屈な役柄が似合うだけに、正統派ヒーローに扮すると違和感ばかりが際立ったりも。
今回もバットマン役に名が挙がるや否や世界中から反対の声が上がってしまったベンアフでしたが、どうしてどうして。これがなんとも素晴らしい。あくまでパーソナルな恨み辛みに怒り、嘘に信頼感の無い胡散臭さなどなど、人間としてのネガティヴさが全面に出たブルース・ウェインを見事なまでに好演。ガチムチ重量型バットスーツから見えるケツアゴも見事にフィットした、ベンアフならではのバットマンを思う存分堪能できた一本。
正直言うと男性ファンを中心に圧倒的な支持を得ているノーラン版バットマンがどうにも好きになれない私だけに、このベン・アフレックと、英国式アイロニーがより出ていたアルフレッドに扮した『エラゴン 遺志を継ぐ者』のジェレミー・アイアンズのコンビによるお高くとまり過ぎないバットマンってのを新たに作ってもらいたいなぁと思ったほどハマってたキャスティングで。

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ベン・アフレックとジェレミー・アイアンズにばかり目を奪われてしまった本作ではありましたが、大作ならではの豪華キャストを楽しめた一本でも。
古典的な二枚目なのだが、どこか嘘をついてるかのような信用できなさが良いスパイスになっているスーパーマンに扮した『コードネーム U.N.C.L.E.』のヘンリー・カヴィルを筆頭に、今後足を引っ張るだけの存在に成り下がる気配もあった『人生の特等席』のエイミー・アダムス、『キルショット』のダイアン・レイン、『シグナル』のローレンス・フィッシュバーン、『ドラフト・デイ』のケヴィン・コスナーら『マン・オブ・スティール』はそのまま続投。『MUD マッド』のマイケル・シャノンも死にっぱなしで続投
また、マーク・ザッカーバーグを更に突き抜けさせたかのようなレックス・ルーサーに扮した『ファンキーランド』のジェシー・アイゼンバーグや、スクリーンで見るのは随分と久しぶりな気がした『Mr.インクレディブル』のホリー・ハンターらも印象深し。
そしてやっぱり外せないのは、本作最大のウリでもあるワンダーウーマンに扮した『ワイルド・スピード MEGA MAX』のガル・ガドット。物語に絡んでそうで案外そうでも無かったり、出てくるや否や大暴れする溜めの無さも気にはなったが、あの攻撃的な美貌とスタイルはやはり見もの。展開そっちのけで目を奪われてしまうだけの魅力と存在感は忘れ難し。ジャスティスリーグ単品作品群の中で、唯一劇場で観たいなぁと思わせるだけの存在だったなぁと。

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焦る気も分からなくはないですが

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posted by たお at 16:04 | Comment(6) | TrackBack(35) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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