2016年03月26日

NARC ナーク (Narc)

監督 ジョー・カーナハン 主演 ジェイソン・パトリック
2002年 アメリカ/カナダ映画 105分 サスペンス 採点★★★★

毎日どこかで必ず発生している殺人事件。相当センセーショナルな事件でもない限り、ざっくりとした事件の概要がニュースで伝えられるだけなんですけど、そういった事件に対して私たちが持つイメージって概ね“加害者が悪人で被害者が善人”ってものだったりしますよねぇ。もちろん犯罪を犯した人物はどんな理由があるとしても“悪人”に変わりはないんですけど、だからと言って犠牲者が“善人”であるとは限らないのではと。殺人に至らないケースでもこういうイメージを持ちがちで、時には“被害者は嘘をつかない”を前提に物事を決めつけたりも

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【ストーリー】
売人との銃撃戦で一般市民を巻き添えにしてしまい18ヵ月の停職処分となった麻薬潜入捜査官のテリスは、復職の条件として潜入捜査官カルベス殺人事件の捜査を命じられる。カルベスの元相棒で、粗暴なやり方で問題を起こしてばかりいるオーク警部補と共に捜査を始めるのだが・・・。

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長編2作目となる本作で注目を浴び『M:i:III』の監督に大抜擢されるも、方向性の違いやらなにやらでスタジオと衝突し降板して以降、なにかと浮き沈みの激しい監督って印象が強くなった『クレイジー・ドライブ』のジョー・カーナハンが監督と脚本を手掛けたクライムサスペンス。出演者のレイ・リオッタも製作者に名を連ね、本作に惚れ込んだトム・クルーズが製作総指揮を名乗り出た一本。
9.11以降ハリウッド映画がだいぶ内向きになっていたとは言え、まだまだ勧善懲悪を描く単純構造のヒーロー映画が求められていた時流に思いっきり反する、善と悪の境が紙一重でしかない刑事の姿をリアルで重厚に描き切った本作。物語展開はもちろんのこと、粗く冷え切った映像も70年代ニューシネマを彷彿させてくれるのも嬉しい。また、小手先に走りがちな若手が多い中、無駄のないカメラワークでどっしりと映像を収めながらも、要所要所で的確な映像的変化を与えることでダレ場を作らない手腕も見事。特に、荒々しく凄惨なオープニングシークエンスは、その後の映画の色を一発で決めさせた名シーンで。
タイプの異なる二人の刑事が未解決の警官殺し事件の真相を追うという、物語のベースとしては定番と言える本作ではあるが、真相が見えてくるにつれて観客が巧みにその定番の罠に嵌め込まれていく脚本がまず巧い。一人の女性を守りたい、守るためなら法なんてクソ食らえだという強い思いと、単純な善悪の物語ではないことが判明し、その後を主人公と観客の手に委ねられるラストが与えるインパクトと余韻は素晴らしいの一言。万人に愛される作品でも、今現在に至るまで表立って語られ続ける作品でもないのだが、21世紀を代表する刑事ドラマのひとつではないのだろうかと。

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主演こそテリスに扮した『ルーザーズ』『ロストボーイ』のジェイソン・パトリックだが、本作はやはり何といってもオークに扮した『デート&ナイト』『グッドフェローズ』のレイ・リオッタが素晴らしい。口ひげをたくわえ体重を増やしたことで、ブライアン・デネヒーに匹敵するほどの刑事っぽさを身に付けたレイ・リオッタ。その外見のみならず、犯罪者を追う役割ながらも単純な正義の味方なんかではなく、法を執行する側とされる側の違いでしかない善と悪の紙一重さ、狂気を孕みながらも独自のブレない正義感を持つ複雑な性格を内面から見事に表現。また、登場するだけで漂う独特な胡散臭さが物語のツイストを際立たせたりもする、レイ・リオッタなくしては作品が成り立たない圧倒的な存在感を誇示。もともと巧い役者ではあるが、本作でのパフォーマンスは彼のキャリアの中でもベストの一つに。
そんなレイ・リオッタに食われっぱなしのジェイソン・パトリックではあるんですが、その“食われっぱなし”ってのが役柄上重要なので、単に存在感の無い人ではなし。長年潜入捜査を続けた故に倫理観が揺らぎ始め、一般市民を犠牲にしたことで正義感までもが揺らぎ始めたテリス。善悪の間を漂うテリスだが、そこに彼を遥かに凌ぐオークが現れることでテリスは自分の立つべき場所を再確認する。そういった役柄である以上は一歩下がって然るべきであるし、そうすることで“刑事も人間である”ってのがより深く伝わる好キャスティング。
そんなタイプの異なる二人のバランスのとれた熱演のみならず、基本トロントでの撮影だがその寒々しさと、映し出されるのは僅かながらも舞台となるデトロイトの寂れっぷりやそこで暮らす人々の姿も作品の顔として強烈な印象を残していた一本で。

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法のみが善悪を定めてるわけではなく

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2016年03月23日

MUD マッド (Mud)

監督 ジェフ・ニコルズ 主演 マシュー・マコノヒー
2012年 アメリカ映画 130分 ドラマ 採点★★★★

自分のことを振り返ってみると、社会と接点を持ち始めた高校や大学の頃に出会った大人たちから受けた影響って絶大なんですよねぇ。考え方や身の振り方など、今現在の自分を作り上げたと言っても過言じゃないほどの影響を。うちの子どもらはまだ親や先生くらいしか接点を持つ大人っていないんですけど、今後どんな出会いを経験して成長していくのか、親が口を出しにくい部分なだけに不安もありますが楽しみでも。

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【ストーリー】
アーカンソーの田舎町で決して裕福とは言えない生活を送る14歳のエリスと親友のネックボーン。ある日、彼らはミシシッピ川に浮かぶ島の、洪水によって木の上に打ち上げられたボートで寝泊まりするマッドと名乗る男と出会う。彼は愛する女性ジュニパーのために殺人を犯し逃亡中の身で、この島で彼女と落ち合い逃亡する準備をしていると彼らに告げる。愛を信じたいエリスはその話に引き込まれ、マッドに協力をするのだったが・・・。

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テイク・シェルター』で注目されたジェフ・ニコルズが脚本と監督を務めた、多感な少年と殺人犯との交流を描く犯罪ヒューマンドラマ。
川に浮かぶボートハウスで、川魚を売る父とその生活に嫌気がさしている母親と暮らすエリス。親友のネックボーンには両親が居らず、川底を漁って生計を立てている伯父と暮らしている。裕福とは言い難い生活であり、町で暮らす住人との間には目には見えないが超えられない壁が存在している。でもエリスはその人生を受け入れ、愛する父親の仕事を手伝い、余暇は同じ境遇のネックボーンと遊ぶ日々。過酷な境遇故に他の子供たちよりも早く大人になり始めているエリスだが、一方で“愛”を無垢なまでに信じている。しかし、愛し合ってたはずの両親は別居を決意し、恋人だと思っていた年上の女性にも年齢を理由に冷たくあしらわれる。愛さえあればなんだって乗り越えられるはずなのに、現実はそうもいかない。そんな時に、愛ゆえに殺人を犯した逃亡犯と出会う。
そんなちぐはぐな環境と大人たちに翻弄される少年の心情を、細やかかつ鮮烈に描いた本作。木の上の船や毒蛇など宗教的な概念が自然に溶け込んだ寓話性が愛の物語により深みを持たせた脚本も、監督の出身地でもあるアーカンソーの寂れた町並みに役者同様に顔と人格を持たせた映像も非常に素晴らしい。大人の都合で分かりづらくなった全容を明らかにするのではなく、少年の視点で分かる範囲のみにしているのも良し。また、マッドが迎える顛末も悪くないが、新たな環境で生活せねばならなくなった不安や慣れ親しんだ場所を離れる悲しみも、近所に年上のお姉さま方が住んでるのを知り「うん!これも悪くない!」と非常に男の子らしい心の切り替えをするエリスの顛末も清々しくも素晴らしい、今まで見逃していたことを惜しんでしまう一本で。

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逃亡中の殺人犯マッドに扮したのは、『インターステラー』『フレイルティー/妄執』のマシュー・マコノヒー。彼の演技と存在感の圧巻さたるや。ミステリアスに登場するも、展開が進むにつれ、後先を考えない一途さ故の危うさや、想定外の展開に思考が停止してしまう脆さなど明らかになってくる人物像を見事に表現。90年代の本作の構想を始めた時点でマコノヒーが監督の頭にあった、一種のあて書きのような脚本ではあるが、その要望に応えて余りある熱演を披露。
ただ、そんなマコノヒー以上に心に残るのが、本作が映画出演2作目になる、どうやら年上が好みらしいエリスに扮したタイ・シェリダン。現状を受け入れると同時に悩みや辛さも呑み込んでしまった破裂寸前の脆さや、マッド同様思いこんだら真っすぐに進む以外にない危うさが手に取るように伝わる好演。どこかトム・ハーディを思い起こさせる風貌も役柄にマッチ。
その他、南部男の象徴的存在でもある『デンジャラス・ラン』のサム・シェパードや、トラッシュ役が板についてきた『デビルズ・ノット』のリース・ウィザースプーン、ニコルズ作品常連である『ロシアン・ルーレット』のマイケル・シャノンなど隅々行き届いたキャスティングも良かったが、中でも「エリスと一緒にいたい」ってだけで物語に絡むネックボーン役のジェイコブ・ロフランドがなんとも可愛かったなぁと。

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5年分にも値するひと夏

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2016年03月22日

ファンキーランド (Why Stop Now?)

監督 フィリップ・ドーリング/ロン・ナイスワーナー 主演 ジェシー・アイゼンバーグ
2012年 アメリカ映画 87分 コメディ 採点★★

今年小学校を卒業した長男は中学入学と同時に社会人混成のマーチングバンドに入団するんですが、その後はその筋では有名な高校に進学して、将来はドラムの指導者になりたいんだそうで。その夢を親としてどれくらいバックアップし応援できるかはちょっと分からないんですけど、少なくても邪魔だけはしたくないなぁと。

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【ストーリー】
薬物依存症の母ペニーと靴下人形が手放せない問題児の妹ニコールと暮らす大学生イーライ。ピアニストとしての才能を買われ著名な音楽学校のオーディションを受けることとなったイーライだったが、その前に母親を薬物更生施設へ入所させなければならなかった。しかし、母親がここ数日薬物絶ちをしてたせいで薬物反応が出ず入所を拒否されてしまう。母親を入所させるためなんとしてでもドラッグを手に入れようとするイーライだったが・・・。

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本作が長編初監督となる美術畑のフィリップ・ドーリングと、『フィラデルフィア』などの脚本を手掛けたロン・ナイスワーナーが共同監督として作り上げたヒューマンコメディ。
自分の夢の実現と母親の更生、崩壊しかけてる家庭の再構築のために母親にクスリをやらせようとする、ストーリー自体は結構ぶっ飛んでる本作。大事なオーディションが目の前に迫ってたり、片思いの女性に想いを告げようとしたりと、構成自体は典型的なドタバタコメディ。ただ、全くもって笑えず
確かにコメディのストーリー展開を敢えて笑わせない演出で描くことにより、人間の滑稽さや悲哀を浮き彫りにする手法もあるし、そういった作品も嫌いではないんですが、本作はそこを狙ったっていうよりも、こうしか撮れないって感じ。画も暗いし。時折アート系気取りのショットを挟み込んだり、登場人物全員に何か良いことを言わせようとするのも悪い意味で外しっぱなし。

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主演には、ここ数年名実ともに充実し始めているジェシー・アイゼンバーグが。そこに目を付けて日本未公開の過去作を引っ張り出してくるのは良いんですけど、『ゾンビランド』『アドベンチャーランドへようこそ』と「なんかランドが多いから」みたいに付けられた意味不明の邦題は難ありかと。
それはさて置き、暗く重ための顔立ちとユダヤ人らしい神経質さを持つジェシー・アイゼンバーグは使いようによってはコメディでも花開くとは思うんですけど、如何せん本作は演出も重いので作品をただただ重苦しくしてしまうキャスティングに。
また、母親役に扮した『イコライザー』のメリッサ・レオも、その実力を発揮し過ぎて本当に苛立たしいヤク中にしか見えず、これまた作品を重苦しく。
そうなってくると、否応がなしに“黒い出川”こと『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』のトレイシー・モーガンと、『処刑人ソガの凄まじい人生』のポール・カルデロンに期待をしちゃうんですけど、これまたどちらとも重々しくて台無しっていう逃げ場の無さ

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だいたいずーっとこんな感じ

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2016年03月19日

コードネーム U.N.C.L.E. (The Man from U.N.C.L.E.)

監督 ガイ・リッチー 主演 ヘンリー・カヴィル
2015年 アメリカ/イギリス映画 116分 アクション 採点★★★★

ちょっとした疑問なんですけど、なんでこのタイトルになったんでしょうかねぇ?TV版と同じタイトルを持つ原題を使うわけでもなければ、一定の世代には定着している“ナポレオン・ソロ”を使うわけでもなく、微妙にありきたりな“コードネーム”ってのを付けちゃったこのタイトルに。やっぱりアレですか?“ナポレオン”ってのが何かイヤなんですかねぇ?あ、そう言えば『バス男』も・・・。

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【ストーリー】
冷戦最中の1960年代前半。核兵器を巡る国際的陰謀に巻き込まれていると見られる天才科学者を父に持つ、東ベルリンの女自動車工ギャビーの確保へ向かったCIAの凄腕エージェント、ナポレオン・ソロ。同じ思惑で動いていたKGBの凄腕イリヤの追手を掻い潜り確保に成功したソロだったが、世界的危機を前に米ソが手を組んだため共に協力し合う羽目となる。反発し合いながらもテロ組織を追うソロとイリヤだったが・・・。

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往年のTVドラマ“0011ナポレオン・ソロ”を、『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』のガイ・リッチーが製作・原案・脚本・監督を兼ねて映画化したスパイアクション。製作総指揮に『ジャッジ 裁かれる判事』のデヴィッド・ドブキンが。
如何せんオリジナルシリーズは何話かつまみ観しただけなので「うわーい!ナポレオン・ソロだー!やっほーい!」とも、「そうそう、コレコレ!」とまでもならない私ですけど、それでも思う存分楽しむことが出来た本作。スパイ活劇にとって最高の舞台となる冷戦下で、敵同士として描かれやすい米ソが手を組みナチの残党と戦うって設定も盛り上がることこの上なし。また、60年代ファッションや音楽、小道具などが織りなすカラフルさと、ガイ・リッチー特有のリズム重視の演出の相性も抜群で、映画的快感に溢れたずーっと楽しい2時間弱
“U.N.C.L.E.ビギニング”的な作品なのでアンクル・カーなどのイカしたガジェットは出てこないが、その分キャラクターの性格や魅力を伝える部分に注力した感がある本作。ルックス・知性・能力全て兼ね備えたナポレオン・ソロが前に出ているようでいて、なんだかんだとイリヤがオイシイとこ取りしてたり可愛げを発揮してたりするコンビバランスの絶妙さや、CIAよりもKGBの方がテクノロジーが発達しているパワーバランスの面白さが素敵。今のところシリーズ化のアナウンスはないが、十分する価値がある魅力作りに成功していた一本だったなぁと。

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持ち前のちょいと悪いクラーク・ケント風クラシカルなハンサム顔を活かし、絶対的な安心感や信頼感にはやや欠けるソロに扮した『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のヘンリー・カヴィルも、鉄のカーテンからやって来た冷酷マシンなのに、ちっちゃい女子に良い様に振り回される様がなんとも可愛いイリヤに扮した『ソーシャル・ネットワーク』のアーミー・ハマーも、共にキャラクターを演じる分には全く問題ないキャスティングだった本作。ただまぁ、それが“ハマり役”だったかと言うとちょっと微妙なのかも。なんと言うか、完成されてるキャラクター像を邪魔しないキャスティングみたいな。ジェイソン・ボーンとマット・デイモンがイコールのような、またそれとはちょっと違いますけどイーサン・ハントをトムちんが丸呑みしたような“彼ら以外に考えられない”ってとこまでは至ってなかったかなぁと。もちろん回を重ねればその印象も変わってくるんでしょうけど。
ただ、『噂のモーガン夫妻』のヒュー・グラントは絶品。基本的にはいつも通りのヒューなのだが、その似合わなさが英国諜報部員の“食えない奴”っぷりを強調する見事なキャスティング。活劇ってのに縁のないヒューですが、この路線であればヒューがメインのスパイアクションってのを観てみたい。
その他、華奢で可愛いから守ってあげたいと近付くも、実は自分よりも全然強くてばつの悪い思いをしちゃいそうなアリシア・ヴィカンダーや、もうちょっとネットリした悪女っぷりを見せて欲しかったエリザベス・デビッキ、『ザ・ウォード/監禁病棟』のジャレッド・ハリスらがキャスティング。デヴィッド・ベッカムも初っ端に顔を出してますけど、まぁ話題作りのカメオってことで。

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確かに顔の印象が薄い方がスパイには向いてますが

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2016年03月15日

デッドフォール (Tango & Cash)

監督 アンドレイ・コンチャロフスキー 主演 シルヴェスター・スタローン
1989年 アメリカ映画 104分 アクション 採点★★★

共に1985年に公開された、スタローンの『ランボー/怒りの脱出』とシュワルツェネッガーの『コマンドー』で華々しく幕を開けた“筋肉映画”。多少の紆余曲折がありましたが二人とも今現在もスターの座に君臨していますし、その後の作品も喜んで追っかけてたのでその“筋肉映画”の時代が長く続いていたような印象を持ってますけど、87年には新たなタイプのバディアクションとして旋風を巻き起こした『リーサル・ウェポン』が公開され、88年には密室孤立型アクションの傑作としてのみならず、非アクションスターがアクション映画の主演を務めるという新たな流れを生み出した『ダイ・ハード』が公開されてるんですよねぇ。アクションの主流が次々変化していってる。一方その頃の二人はと言えば、シュワは『プレデター』をものにしつつも筋肉映画に限界を感じつつあったのかコメディに活路を求め始めてるし、スタは『オーバー・ザ・トップ』『ランボー3/怒りのアフガン』と、筋肉路線をエスカレートし過ぎて明らかに低迷期に入り始めてる。てっきり80年代はずーっと筋肉が輝いてたと思ってたら、ちょっとした打ち上げ花火だったんだなぁと、調べなおしてみてちょいと驚いた。

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【ストーリー】
ロサンゼルス市警の東西の分署に分かれて所属するタンゴとキャッシュ。スタイルも性格も真逆の二人ではあったが、彼らは共に市警ナンバー1の座を争う凄腕の刑事だった。そんな二人に煮え湯を飲まされ続けていた犯罪組織のボスであるペレットは、二人を社会的に抹殺するため彼らを犯罪者に仕立て上げ刑務所に投獄させる。しかし罠に嵌められた二人は脱獄、反発しあいながらもペレットを追い・・・。

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『暴走機関車』のアンドレイ・コンチャロフスキーがメガホンを握った、巨大組織の罠にはまった二人のスター刑事の活躍を描くバディアクション。
いかにも“ソヴィエト映画ですたい!”的な重苦しい作品を撮ってた監督の作品とは思えぬ破れかぶれなまでの能天気っぷりに、「社会主義国家から見たハリウッドのカリカチュアなのか?」と思ったりもしましたが、よくよく調べてみるとコンチャロフスキーが監督を務めていたのは3カ月余りで、予算超過でクビになった以降は製作総指揮を務めていた『ランボー3/怒りのアフガン』のピーター・マクドナルド、『プリンス/パープル・レイン 』のアルバート・マグノーリ、スタローン自身もちょいと噛んで、最終的に『エグゼクティブ・デシジョン』のスチャート・ベアードが仕上げたっていう、現場のゴタゴタがそのまんま作品の破れかぶれさに現れちゃったようで。「ランボーなんか目じゃないぜ!」から始まり、顔の骨格に特徴が全て詰め込まれたマニアック・コップに対しては「コナン観たよ!」とシュワいじりをし、キャッシュの「なんだ?デニッシュでも食ってたのか?」の問いにスタ扮するタンゴが「デニッシュ(デンマーク人)は嫌いだ!」と離婚したばかりのブリジット・ニールセンを揶揄するみたいな内輪ネタ・楽屋オチがてんこ盛りだが、それらも微妙に空回り
ただ、このハチャメチャっぷりは嫌いではなく。本国では89年12月22日に公開された80年代最後の映画になる本作だが、能天気で大雑把で大味で、それでもって派手さと笑いと筋肉が混在する、まるで80年代の総決算のような本作を嫌いになれるわけもない。機銃を搭載した“地獄から来たRV”やモンスタートラック、バギーカーが大爆発を背景に暴れまわるプチ・メガフォースみたいなクライマックスなんて、もうザ・80年代ですし。密度は別にして、サックリとお祭り気分を味わうには丁度いい一本だなぁと。

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まだまだトップスターとして君臨しながらも、主流の変化と次世代の突き上げもあり一枚看板役者としての地位に陰りが見え始めていた『ロックアップ』のスタローンと、『若き勇者たち』のパトリック・スウェイジのコンビでもともと企画されていた本作。ただ、スウェイジが『ロードハウス 孤独の街』の方を選んだので、代わりに“カーペンター映画でお馴染みの”ってポジションから“笑いもアクションもドラマもなんでもござい!”という次世代スターの座へ駆け上がり始めていたゴースト・ハンターズ』のカート・ラッセルがキャスティング。このコンビネーションが思いのほか素晴らしい
カート・ラッセルはお馴染みの気さくでいい加減なキャラを好演し、一方のスタローンはバブリーでキザというちょっと珍しい役柄に挑戦しているのだが、そもそも二人ともベースに土臭さがあるので相性は悪くない。慣れない役柄のスタローンを巧くラッセルが補ってましたし。この後何作か二枚看板映画を作るスタローンですけど、カート・ラッセル程の相方には出会えてないなぁと。次にこの組合せが見れるのは、現在撮影中の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2』になるのかな?
そんなスタローンとカート・ラッセルばかりに目が行っちゃう作品ではありますが、強いんだか弱いんだかさっぱり分からない犯罪組織のボスに扮した『ヤングガン』のジャック・パランスを筆頭に、『48時間』のブライオン・ジェームズ、『地獄のヒーロー』のジェームズ・ホン、『マニアック・コップ』のロバート・ツダール、アークエット家の家長ルイス・アークエットに、『処刑ライダー』のクリント・ハワードといった顔触れが悪役に扮する贅沢っぷり。
それに留まらず、昨年惜しくも亡くなってしまった『ダーティファイター/燃えよ鉄拳』のジェフリー・ルイスがノンクレジットで出演し、『3人のゴースト』のマイケル・J・ポラード、“犯罪のことならお任せ!”な『バトルランナー』のエドワード・バンカーが囚人役じゃなく刑事役で登場する、ほんと隅々目が離せない一本。まぁ、この盛り沢山なキャストも作品のゴタゴタ感を際立たせてしまってはいるんですけどね。

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で、消耗品軍団入りはいつ頃に?

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2016年03月12日

【予告編】シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ (Marvel's Captain America: Civil War - Trailer 2)

“キャプテン・アメリカ”シリーズの第3弾となる『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の最新予告編。メガホンを握るのは、前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』同様アンソニー&ジョー・ルッソが。
もう既にご覧になった方も多いでしょうし、その多くの方々がそうだったんでしょうが・・・
いやぁ驚いた!!
「そう来たか!」と。こりゃぁもう、来月の公開日が待ち遠しいってもので!
因みにラストのアレは、リブート版のアレも控える『わたしは生きていける』のトム・ホランドのようで。

【Marvel's Captain America: Civil War - Trailer 2】


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タグ:予告編
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2016年03月10日

キアヌ・リーブス ファイティング・タイガー (Man of Tai Chi)

監督 キアヌ・リーヴス 主演 タイガー・チェン
2013年 アメリカ/中国/香港映画 105分 アクション 採点★★★

アメリカでは何かっつうと銃撃戦と爆発が起きて、イギリス人はとりあえずパブ。香港人は皆カンフーの達人で、インド人は踊りだす。そんな大雑把なイメージが各国の映画にありますよねぇ。それが持ち味であり特徴であり文化でもあるんですけど、時代や環境の変化でそういったものが薄れていってしまうことも。でも、その薄れていってるってことに敏感に気付いて取り戻そうと動く人って、案外地元の人間ではなく、外からその文化を愛してた方々だったりするんですよねぇ。タランティーノやベッソンみたいに。

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【ストーリー】
太極拳を学ぶ真面目な青年タイガーのもとに届いた招待状。それは闇格闘技大会を主催する謎の男ドナカからのものだった。師匠の教えに背くこととは知りながらも、師匠のお寺を再開発から守るため参加を決意するタイガー。しかし、連戦連勝を続けるうちに“力”に魅了されたタイガーは・・・。

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ジョン・ウィック』のキアヌ・リーヴスが初監督を務めた、米中港合作のカンフーアクション。今にもズンドコ節を歌い出しそうな主人公に扮したのは、“マトリックス”シリーズでスタントを務めたタイガー・チェン。アクション監督に『酔拳 レジェンド・オブ・カンフー』のユエン・ウーピン、カースタント・コーディネーターにブルース・ロウが配される、アクション面では鉄壁の布陣。
どういう経緯でこの映画が作られることになったのかは分からないんですけど、役者仲間よりもスタントマンとの交流の方が密接なキアヌのことだから、『マトリックス』の現場なんかでユエン・ウーピンらと“夢のカンフー映画”の話題で盛り上がり、それがなんだかんだと形になっていったのかなぁと憶測。
そのせいか、今回のキアヌは役者としても気合十分。アクションは全く問題ないが主演となるとまだ役不足なズンドコを補うかの如く、普段の無感情能面演技とは打って変わって感情むき出しのフルスロットル演技を披露。上手いかどうかは別にしても、こんなに喜怒哀楽を明確にしたキアヌは久しぶりに見た。
また、“師匠”といったらユエン・シャオティエンの次に浮かぶ『少林寺』のユエ・ハイや、久しぶりに見たけど加齢をさっぱり感じなくて驚いた『エンター・ザ・フェニックス』のカレン・モク、『アイスマン 超空の戦士』のサイモン・ヤムといった趣味の良いキャスティングも良かった一本。楽しみだった『ザ・レイド GOKUDO』のイコ・ウワイスの暴れっぷりが少々消化不良に終わったのは残念でしたけど、まぁその辺は面子を保つために仕方なかったのかと。

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役者の話から入ってしまいましたけど肝心の映画の出来はと言えば、これも全然及第点に達する一本。
欧米人が絡むとクロースアップを多用しがちなカンフーシーンも極力全体像を映し出すことに注力し、それぞれのクォリティも決して低くない。舞台も対戦相手のバラエティも豊かなので、単調に陥らず最後まで勢いを持続。
物語自体も、心技体の“心”を忘れダークサイドに堕ちそうになる若者が我に返るまでというシンプルなものだし、舞台も“謎の大物が主催する闇武闘大会”というお馴染みなもの。その安定感によりメインのテーマ、矢継ぎ早に挿入される対決シーン、警察vs闇組織らの要素が互いに邪魔をしない丁度良いバランスで楽しめる一本に。
確かに、手足が長く身体も決して柔らかくないキアヌのカンフーは相変わらず腰痛持ちのカンフーみたいで“美しさ”は感じられないし、主人公のズンドコも闇試合で好き放題やってたくせに、いざ“殺し”を目の前にした途端にヘタレて警察に駆け込み、でも違法に入手した財産は手放さないなんとも狡賢い奴に見えてしまう難点もなきにしろあらず。ズンドコのまる儲け。
ただまぁ、作り手の“こういうのが好きなんです!やりたかったんです!”って気持ちが全面に溢れ出ている作品を揶揄する気には到底ならないので、その程度の難点では満足度も評価も低くするまででもなく。

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ドラマも現実も「あ、彼いいねぇ」から始まったのかと

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2016年03月09日

食人族 (Cannibal Holocaust)

監督 ルッジェロ・デオダート 主演 ロバート・カーマン
1980年 イタリア映画 95分 ホラー 採点★★★★

日本では83年に正月映画第2弾として公開され、『E.T.』に次ぐ大ヒットを飛ばした本作。“本物”を謳ったセンセーショナルにも程がある宣伝や、TVでもまだ普通にやってた残酷・奇習ドキュメントってのが身近だった状況ってのもあるんでしょうけど、「E.T.混んでるからこっちでいっか!」という選択肢の幅の広さに今思うと驚かされますよねぇ。心に余裕があるというか、映画に対し感動ばかりを求めてない娯楽最優先の時代だったってことでしょうか。私の地元ではこれと『処刑教室』という夢のカップリングで上映されてたんですが、これを子どもたちだけで観に行けたってのも、今となっては素敵な思い出。

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【ストーリー】
ドキュメンタリー制作のためにアマゾン川奥地へと向かった4人の撮影隊が消息を絶つ。捜索に向かったニューヨーク大学のモンロー教授は、様々な危機をかいくぐった末に白骨化した4人の遺体と撮影されたフィルムを発見する。そのフィルムに写っていたのは、4人が原住民に対し行った目も覆いたくなる蛮行の数々と、彼らが迎える凄惨な最期で・・・。

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食人ホラーとしてはもちろんのこと、フェイクドキュメンタリー、ロストフッテージ物の金字塔として未だ色褪せない輝きを放っている、ルッジェロ・デオダートによるモンド風味ホラー。
私自身少なくてもこれまで3人ほど“本物”もしくは“本物かもしれない”と信じている人に出会ったことがあるほど、本物と偽物の織り交ぜ方が巧みな本作。普通の精神状態なら明らかにフェイクと分かる強姦シーンや食人シーン、虐殺シーンの数々も、首を切断してもなお動き続ける亀の甲羅を引っぺがしデロンデロンの内蔵を貪り食う、ホラー慣れした私もさすがに食欲が失せる亀の解体ショー(後でスタッフが美味しく頂きました)や、猿の頭をかち割り脳汁を啜る(現地の人が美味しく頂きました)シーンなどの生々しく凄惨な“本物”を混ぜ込むことにより、「全部本当にやらかしてるかも知れん」と思わせる巧い作り。本物の処刑映像については「コレはヤラセだよ」と言ってくるんで、尚更なにが真実なのか混乱してしまう構成も見事。
エロとグロという本能的な快楽と理性的な部分での嫌悪感ってのを突き詰めた本作。とことん下品なもので観客を喜ばせようとするイタリア式サービス精神が非常に嬉しい一本なんですが、最低限ストーリーを構成する為に添えられた“白人至上主義”に対する皮肉ってのもなかなかパンチが効いていた本作。

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ヤコペッティの『世界残酷物語』をはじめとする残酷ドキュメントってのがお家芸でもあったイタリア。アフリカやアジアの奇習や残酷行為を“ドキュメンタリー”という触れ込みで映し出していたが、そこには結構多くの“演出”が施されていたのは今では周知の事実。本作で描かれている蛮行の数々は誇張だとしても、実際に現地で傍若無人な振る舞いをしていただろうってことは容易に想像できる。また、そういった作品を観る側にとっても、建前こそ「学術的に〜」みたいな言い分があるが、結局のところは未開人の野蛮さを見て自分たちの優秀さや幸福さを再確認するだけでしかない。「あー、土人じゃなくてよかった」みたいな。
文明の象徴として映し出されるニューヨークとアマゾン奥地の対比、泥だらけで野蛮な現地人と上品なスーツに身を包んだ白人との対比。そして、原住民にあらん限りの残虐行為を行う白人と、その白人を惨殺し食らう原住民。白人クルーが原住民に対し行った行為に眉をひそめながらもTV放映を強行しようとするTV局の上層部(もちろん全員白人)が、そのクルーが原住民に殺されるシーンを見るや否やフィルムの抹消を命じる。上等民族の白人が下等民族に対して蛮行を行うのは許されるが、下等民族が一矢を報いようとするのは絶対に許さない。この強烈な皮肉たるや。上品な曲さえ流してれば本音を隠せるかの如く、モンド映画でお馴染みのリズ・オルトラーニの美しい旋律が流れ続けるのも、この皮肉をさらに際立たせているようにも。ビジュアルの不快感もさることながら、これまで自分たちが行ってきたことに対する笑いを忘れたブラックコメディな要素こそが最も強烈で、そこが未だに作品を輝かせ続けている一本で。
余談ですけど、このレビューを書くにあたりアマゾンでDVDを探してたんですけど、ブルーレイを含めアマゾンでは置いてなくてちょいと驚きましたねぇ。

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郷に従えないなら入っちゃダメ

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2016年03月07日

クルーレス (Clueless)

監督 エイミー・ヘッカリング 主演 アリシア・シルヴァーストーン
1995年 アメリカ映画 97分 コメディ 採点★★★★

自己啓発セミナー帰りの人みたいな若干気持ち悪い物言いではありますけど、なんだかんだ言って“素直な人”にこそ幸せって訪れると思うんですよねぇ。してもらったことを素直に喜ばず、してもらわなかったことを僻んだり、他者の劣ってる点を探し出すことで優越感を感じたりするように、妬み・嫉みが基本成分の方には幸せが来ないと。まぁ、来てたとしても気付きませんし。やっぱり、アホでも素直が一番だよなぁ。

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【ストーリー】
ビバリーヒルズの裕福な家庭で暮らすシェールは、ファッション、エステ、デート、パーティが全てな女子高生。ある日「人気者はなにか良いことしなきゃ!」と思い立ち、イケてない転校生のタイを人気者に仕立て上げようと奮闘し始める。しかし、人気者の座をタイに奪われた揚句、タイに義兄ジョシュとの仲を取り持つよう頼まれた時に初めてシェールは自分の愚かさと本当の気持ちに気付き・・・。

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初体験/リッジモント・ハイ』のエイミー・ヘッカリングによる、ジェーン・オースティンの“エマ”を骨組みにした学園コメディ。後にTVシリーズ化も。
何不自由なく暮らす甘ったれなお嬢様が、なんだかんだある内に自分本位でしかない善行の愚かさや、今まで見失っていた大切な人の存在に気付く様を、軽妙なテンポと魅力溢れる登場人物たちで描いた本作。古典的な骨組みと現代的学園ドラマとの融合も巧い。また、ヘッカリングらしい学園生活描写の詳細さや、キャラクターに対し深い愛情が注がれている様も楽しめる一本。女子高生の傍若無人な元気っぷりとその勢いに任せているようでいて、主人公の関わった人たちがその行動により主人公も含め最善の幸せを手にしていくように、良く練られた脚本がベースにあってこその勢いだったりするのも見事。確かに言葉やファッションなどの文化面では時代の経過を感じざるを得ないが、笑いの質やスピード感、物語の本質などは一切古びていない、現在の学園コメディのひな型的作品として忘れてはいけない一本で。ボウイ絡みの曲が2曲使われているのも好ポイントのひとつだってのは、もう言わずもがな
そしてなんと言っても、主人公シェールの魅力が本作の輝きのほぼほぼ全て。10代や20代の気持ちに余裕がない頃に観ていれば、その自分本位さや考えの浅さに苛立ちを感じてたかも知れませんが、いい加減オッサンの歳になるともうただただ可愛い。その行動には基本的に悪意はなく、ただ素直なアホちゃんだから大切なことに気付かないだけ。で、素直なアホちゃんだからこそ、改善行動が早い。浅はかな行動の数々にハラハラするも、「でも(アホだけど)素直な娘だから大丈夫だろう」と親目線で見守ってしまう可愛らしさが絶品だったなぁと。学園ドラマを親目線で観るのもどうかとは我ながら思いますが

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主人公のシェールに扮したのは、『アレックス・ライダー』のアリシア・シルヴァーストーン。大きな垂れ目と若干だらしなく開いた口元が、ものの見事なアホちゃん風味を醸し出す抜群のキャスティング。ちょいと悪い子って役柄が続いていたが、本作では悪気もなければ考えも特にないスコーンと突き抜けた明るいキャラを好演。よく動く目と口が非常に魅力的だっただけに、バットガールなんぞに手を出さずもうちょっとこの路線を続けて欲しかったなぁと。
また、痩せて化粧を変えるだけで女性はガラリと変わるんだなぁと実感させられた、『サウンド・オブ・サイレンス』のブリタニー・マーフィのジャガイモっぽさも衝撃で。この世にもう居ないなんて、やっぱり未だにシックリこない
そんな女性陣に押され気味ではありましたが、男性陣もなかなかの顔触れが揃ってた本作。中でも本作が劇映画デビューとなる『アントマン』のポール・ラッドと、『ロード・トリップ』のブレッキン・メイヤーは絶品。特に『初体験/リッジモント・ハイ』のスピコリ的ポジションのブレッキン・メイヤーの可愛らしさたるや。やっぱり男子はアホが一番
その他、既にニセトラボルタ風味が出ていた『呪い村 436』のジェレミー・シストや、『コマンドー』のダン・ヘダヤらも印象的だった一本で。

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自分で気づいて自分で直せるのも素直だからこそ

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2016年03月06日

エクスプロラーズ (Explorers)

監督 ジョー・ダンテ 主演 イーサン・ホーク
1985年 アメリカ映画 106分 アドベンチャー 採点★★★

『エイリアン』に出てくるクリーチャーって、見た目はもちろんのこと、悪意も邪念もない本能のみの純粋な存在だからこそ怖いんですよねぇ。手加減もなければ分かり合える可能性もない、常に全力で殺しにかかって来るから怖い。そういう意味では、テレタビーの連中も相当怖いと思うんですよねぇ。文字通り無邪気で悪気の欠片もなく、本能の赴くまま常に全力で遊んでる。手加減ももちろんしないから、遊びに巻き込まれたら下手すりゃ死ぬかも知れないですし。見た目が可愛い分だけ性質が悪いとも。あの惑星に迷い込んだら間違いなく発狂しそうだなぁと、娘が小さい頃一緒にビデオを観ながら思ったもので。

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【ストーリー】
宇宙に強い憧れを持つ少年ベンが見た不思議な夢を基に作られた物体移動装置。友人のウォルフガングとダレンと共にガラクタを集めて作った宇宙船にその装置を組み込み、3人は宇宙へと飛び立つのだが、そこで彼らを待っていたのは・・・。

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インナースペース』のジョー・ダンテによるSFファンタジー・アドベンチャー。
“『グレムリン』のジョー・ダンテの最新作!特撮はILM!なんか『E.T.』っぽい話しみたい!”と散々期待を膨らませるも、劇場を後にした時には同時上映の『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』のことしか覚えてない、と言うか思い出したくない変な映画として一部で語り草の本作。劇場で観た当時は変な映画としか認識してませんでしたが、30年振りに観てみたらやっぱり変な映画。ただ、その“変な部分”こそが本作の魅力。
家庭や学校で問題を抱えた少年たちが友情を育みながら宇宙船を手作りするどこかノスタルジックな前半と、まるで別な映画化のように狂いだす後半という毛色の違い過ぎる展開をみせる本作。一般的には前半のロマン溢れる物語を後半で台無しにしたと見る向きが多いようですけど、正直なところ前半はありきたりな展開の寄せ集めにすぎない印象が。家庭の問題も学校の問題も掘り下げるわけでもなく、友情の変化に起伏もない。かつて宇宙を夢見た老保安官が唐突に出てくるが、特に絡むことなく「やったな、坊主!」で終了。ダンテがこの物語に関心を持ってる様子がないってのもあるんでしょうが、たとえ巧く作ったとしても当時山ほどあったこの手の作品の一つとして埋もれてしまったのでは。

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そう考えると、突然『トワイライトゾーン/超次元の体験』の“こどもの世界”の再現が如く狂いだす後半は、個性の乏しい作品に色を付けるために必然の展開だったのかと。まぁ、アプローチ方法が正しかったかどうかは甚だ疑問ではありますが、30年を経てもそこだけは忘れられない映画になってるんだから間違ってもいないのかと。地球のTVマニアの宇宙人が、意思疎通そっちのけでわめき散らすシーンの狂気と恐ろしさ、トリップ感覚はそうそう味わえるものでもありませんし。
また、私の世代では若くして命を落としたスターの代名詞であるリヴァー・フェニックスと、『プリデスティネーション』のイーサン・ホークのデビュー作として有名な本作。中でも、線の細い美少年として輝きを放ちながらも、どこか自虐的な微笑みと暗い眼差しが異彩を放ってもいたイーサン・ホークの存在感は見事。それにしても、この手のチビッコアドベンチャー映画の中心人物に、暗く重たい表情の三人を据えちゃうってのは斬新だなぁと。
その他、『ソルジャーズ・アイランド』のジェームズ・クロムウェルや、ダンテ作品の常連『メイフィールドの怪人たち』のディック・ミラーの顔も。

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無理に分かり合おうとせず、程よい距離感を保つのも大事

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