2012年 アメリカ/イギリス/フランス映画 109分 アクション 採点★★★
上司に気に入られることに全力を尽くす人っていますよねぇ。それはそれで才能の一つだとは思うんですけど、気に入られた結果、大きなプロジェクトや責任ある立場を任せられちゃって実力不足を露呈したりも。そこで身の程を知って努力をすればいいんですが、そういう人って責任転嫁の才にも長けてるんで、実力を伴わないまま出世し続けたりも。
【ストーリー】
世界最高の運び屋と称されながらも、家族のために裏稼業から足を洗い真っ当な生活を送っていたクリス。だが、義弟が麻薬の密売に失敗し多額の借金を背負ってしまう。組織から家族を守るため、クリスはかつての仲間を集めパナマから大量の偽札密輸計画を立てるのだが…。
2008年のアイスランド映画『Reykjavík Rotterdam』を『2ガンズ』のバルタザール・コルマウクルがリメイクした犯罪アクション。主演のマーク・ウォールバーグも製作者に名を連ねている。以前にも一度鑑賞しているんですが、「なんか面白かった」って以外はすっかり記憶から消え去っていたので再鑑賞を。
“堅気になった凄腕犯罪者が家族のためにもう一度だけ犯罪を犯す”という、よくあるプロットをよくある展開で最後まで通す、よくあるづくしの本作。主人公が犯罪の才も頭脳も腕力もずば抜けているので全くハラハラしない安心感に溢れすぎてるってのも、鑑賞後するする記憶から消え去っていく要因なのかと。
じゃぁ、その“なんか面白かった”って印象はどこから生まれたかと言えば、それはやはり犯罪描写の緻密さから。組織やネットワークの在り方から手口、巧みなトリックなど「そんなにバラして大丈夫なのか?」ってほど運び屋稼業の手の内を見せてくれている。犯罪には変わりないし運ぶ物にもよってくるんですが、基本他人に害を与えないどこか“怪盗○○”を見てるかのような清々しさや面白さ、憧れすら感じるカッコ良さが。
また、全てにおいて優れている主人公目線で観るとスリルが感じられないが、そんな主人公の近くにいたからこそ評価され、それを実力と勘違いしてしまった身の程知らずの悪役目線で観るとなかなかスリリング。困ってるのは主人公じゃなく悪役の方だし、四面楚歌で絶体絶命なのも悪役の方でしたし。
主人公のクリスに扮したのは、『テッド2』『ローン・サバイバー』のマーク・ウォールバーグ。素がそうだからしょうがないんですけど、元チンピラもしくは現在進行形のチンピラがここまで似合う役者もそうそう居ない。天才的な犯罪者で人望も厚く、腕っ節が強くて奥さんが美人という完璧すぎる役柄を、完璧なキャスティングであるマーク・ウォールバーグが演じてるという所が案外本作の印象を薄くしてしまった一因なのかと。
また、恋愛感情に似た匂いすら漂う忠実な部下や相棒役をやらせるとひときわ輝く『メカニック』のベン・フォスターや、やたら凄んでくるのに主人公にやられっぱなしで良い所が一つもなかった『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』のジョヴァンニ・リビシなど、この“ハマり過ぎたキャスティング”ってのは隅々に施されていた本作。似合い過ぎてて印象が薄いってのはここでも同じなんですが、悪巧みが全てばれて主人公にボコられた後の、まるで失恋をしてしまったかのような哀しげな顔したベン・フォスターは絶品で。
この中では、クリスの美人過ぎる妻に扮した『トータル・リコール』のケイト・ベッキンセイルに若干の違和感を感じるんですが、田舎町でよく見かける“品の無いママグループの中では上品”という程よい下品さが、やっぱり良くハマってたなぁと。
その他、「コイツ一人死ねばいいんじゃね?」と思うほど状況を悪化させるだけの存在だった『ビザンチウム』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズや、ジョン・ブックの頃の面影が半端に残っててちょっと気持ち悪さすら感じた『インセプション』のルーカス・ハース、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のJ・K・シモンズに、ボールドウィン一家やウェイアンズ一家並にウジャウジャいるウォールバーグ一家より『イコライザー』のロバート・ウォールバーグらがキャスティング。
強い人の隣にいると自分も強いと勘違いしちゃいがちで
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