2014年 アメリカ映画 141分 ドラマ 採点★★★★
“家族だから何でも許せる”と思われがちですけど、逆に家族だから許せない問題や残り続けるわだかまりってのも多いですよねぇ。相手が他人なら最悪距離を置けばいいだけなんで「ま、いっか」と諦められる事柄でも、家族となるとそうもいきませんし。親子になると尚更で。
【ストーリー】
母の葬儀に出席する為、帰郷を果たした凄腕弁護士のハンク。久しぶりの家族の再会であったが、ほとんど絶縁状態にある地元で判事を務める父ジョセフとの折り合いは相変わらず悪いままで、ハンクは早々と引き返そうとしていた。そんな中、父が殺人容疑で逮捕されるとの一報が入る。父の弁護を受け持とうとするハンクだが、ジョセフはそれを頑なに拒み…。
『ウエディング・クラッシャーズ』のデヴィッド・ドブキンによる、わだかまりと葛藤を抱える家族が再生する様を描いたドラマ。製作には、主演を務めるロバート・ダウニー・Jrとその妻スーザンの名も。
法と正義に対してのみならず家族に対しても厳格な父親ジョセフと、正義よりも法の抜け穴を探し出しどんな悪人でも無罪を勝ち取ることに重きを置く息子ハンクの対立とこじれた感情を中心に、野球選手として将来を展望されながらも、弟ハンクが起こした交通事故によりその夢が破れ、今では地元に残り精神薄弱者である末弟の面倒をみる兄の心の中でくすぶり続ける怒りと遣る瀬無さ、バラバラになっている家族の現状を心の底から悲しみ、美しかった思い出の象徴である8ミリカメラを片時も手放さない末弟、そしてハンクのかつての恋人と、逆算すると種主がどうもあやしいその娘など、複雑に入り乱れて織りなされる人間模様をどっしりと腰の据わった演出で見せてくれた本作。そもそもそういう作品ではないんですけど、丁々発止と劇的展開が楽しめる法廷劇を期待すると肩透かしを食らうが、そんな勝手に外した期待を補って余りあるほどの重厚な人間ドラマを堪能できる一本。
コメディ作家の印象が強いデヴィッド・ドブキンだが、コメディ映画の監督は演者がリラックスして様々なアプローチを試せる環境を作り出し、その中からベストの演技を引き出すことに長けている人が多いってことを考えると、実力派が勢揃いしながらもエゴのぶつかり合いにならず見事なアンサンブルを見せてくれた本作は、コメディ監督だからこそなし得た結果なんだろうなぁと。久々の兄弟の再会が、抱き合うでも殴り合うでもなく、駐車スペースの話題という差し障りの無いもので距離を確認し合う名シーンなどに見られる、演者のアドリブを上手に引き出せたのも、彼だからこそなんでしょうねぇ。
ハンクに扮したのは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のロバート・ダウニー・Jr。今ではほぼほぼ“=トニー・スターク”って印象になってるが、その口八丁な軽薄さを残しつつ、子供の頃から持ち続けるわだかまりがそのまま主人公の少年性に繋がる、曲者実力派の本領を久々に発揮する名演を。
また、『アウトロー』のロバート・デュヴァルや、『ラン・オールナイト』のヴィンセント・ドノフリオ、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェレミー・ストロングらの好演も見事。特にロバート・デュヴァルの、法と正義を遵守する生き様と家族を愛する思いが自分の中でぶつかり合う熱演は絶品。
その他、個人的に苦手な役者なんですけどその苦手さがキャラ的に丁度良かった『ファースター 怒りの銃弾』のビリー・ボブ・ソーントンや、田舎に残り続けるちょいと品の無い女性役ってのが新鮮でしたが、それを全く自然にものにしていた『死霊館』のヴェラ・ファーミガ、一服の清涼剤のような存在だったダックス・シェパードの存在も忘れ難し。
作品そのものも見ごたえ十分でしたが、ブルーレイの映像特典に収められていた、演者たちがそれぞれの役柄に対するアプローチ方法や演技法を語り合う特典映像もなかなか興味深く楽しめた一本で。
家族だからこそ見失う距離感
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