2016年01月29日

ジャッジ 裁かれる判事 (The Judge)

監督 デヴィッド・ドブキン 主演 ロバート・ダウニー・Jr
2014年 アメリカ映画 141分 ドラマ 採点★★★★

“家族だから何でも許せる”と思われがちですけど、逆に家族だから許せない問題や残り続けるわだかまりってのも多いですよねぇ。相手が他人なら最悪距離を置けばいいだけなんで「ま、いっか」と諦められる事柄でも、家族となるとそうもいきませんし。親子になると尚更で。

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【ストーリー】
母の葬儀に出席する為、帰郷を果たした凄腕弁護士のハンク。久しぶりの家族の再会であったが、ほとんど絶縁状態にある地元で判事を務める父ジョセフとの折り合いは相変わらず悪いままで、ハンクは早々と引き返そうとしていた。そんな中、父が殺人容疑で逮捕されるとの一報が入る。父の弁護を受け持とうとするハンクだが、ジョセフはそれを頑なに拒み…。

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ウエディング・クラッシャーズ』のデヴィッド・ドブキンによる、わだかまりと葛藤を抱える家族が再生する様を描いたドラマ。製作には、主演を務めるロバート・ダウニー・Jrとその妻スーザンの名も。
法と正義に対してのみならず家族に対しても厳格な父親ジョセフと、正義よりも法の抜け穴を探し出しどんな悪人でも無罪を勝ち取ることに重きを置く息子ハンクの対立とこじれた感情を中心に、野球選手として将来を展望されながらも、弟ハンクが起こした交通事故によりその夢が破れ、今では地元に残り精神薄弱者である末弟の面倒をみる兄の心の中でくすぶり続ける怒りと遣る瀬無さ、バラバラになっている家族の現状を心の底から悲しみ、美しかった思い出の象徴である8ミリカメラを片時も手放さない末弟、そしてハンクのかつての恋人と、逆算すると種主がどうもあやしいその娘など、複雑に入り乱れて織りなされる人間模様をどっしりと腰の据わった演出で見せてくれた本作。そもそもそういう作品ではないんですけど、丁々発止と劇的展開が楽しめる法廷劇を期待すると肩透かしを食らうが、そんな勝手に外した期待を補って余りあるほどの重厚な人間ドラマを堪能できる一本。
コメディ作家の印象が強いデヴィッド・ドブキンだが、コメディ映画の監督は演者がリラックスして様々なアプローチを試せる環境を作り出し、その中からベストの演技を引き出すことに長けている人が多いってことを考えると、実力派が勢揃いしながらもエゴのぶつかり合いにならず見事なアンサンブルを見せてくれた本作は、コメディ監督だからこそなし得た結果なんだろうなぁと。久々の兄弟の再会が、抱き合うでも殴り合うでもなく、駐車スペースの話題という差し障りの無いもので距離を確認し合う名シーンなどに見られる、演者のアドリブを上手に引き出せたのも、彼だからこそなんでしょうねぇ。

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ハンクに扮したのは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のロバート・ダウニー・Jr。今ではほぼほぼ“=トニー・スターク”って印象になってるが、その口八丁な軽薄さを残しつつ、子供の頃から持ち続けるわだかまりがそのまま主人公の少年性に繋がる、曲者実力派の本領を久々に発揮する名演を。
また、『アウトロー』のロバート・デュヴァルや、『ラン・オールナイト』のヴィンセント・ドノフリオ、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェレミー・ストロングらの好演も見事。特にロバート・デュヴァルの、法と正義を遵守する生き様と家族を愛する思いが自分の中でぶつかり合う熱演は絶品。
その他、個人的に苦手な役者なんですけどその苦手さがキャラ的に丁度良かった『ファースター 怒りの銃弾』のビリー・ボブ・ソーントンや、田舎に残り続けるちょいと品の無い女性役ってのが新鮮でしたが、それを全く自然にものにしていた『死霊館』のヴェラ・ファーミガ、一服の清涼剤のような存在だったダックス・シェパードの存在も忘れ難し。
作品そのものも見ごたえ十分でしたが、ブルーレイの映像特典に収められていた、演者たちがそれぞれの役柄に対するアプローチ方法や演技法を語り合う特典映像もなかなか興味深く楽しめた一本で。

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家族だからこそ見失う距離感

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posted by たお at 13:42 | Comment(10) | TrackBack(14) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月28日

10周年でした

あらあら、気が付いたらこのサブタレも先週の23日で10周年。
“気が付いたら”というか、気が付いてたんですけどその当日前後にすっかり忘れちゃってただけなんですけど。実際“10年”と言っても休んだり再開したりを繰り返してるんで、実働5年くらいなんですけどね。
せっかくの10周年なんだから、手を付けてない大物作品の気合入りレビューとか、過去を振り返った10年ランキングとかやろうかと思ってたんですけど、なんか「ま、いっか!」と挨拶のみに。
「オギャー!」と産まれた人間が歩き始め、気が付いたらランドセル背負って学校に通い、親と一丁前の口げんかをし始めるくらいの期間が10年なんですけど、このサブタレはさっぱり成長しねぇなぁとボヤいて10周年記念記事を締めくくりましょうかねぇ。

そんな成長とは縁のないサブタレでございますが、さすがにあと10年やる自信はないので、あと数年くらいはなにかと大目にみながらお付き合いいただけたらと。せっかくの10周年なので、年内に時々なんか頑張ってみます!たぶん!
ではでは!

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タグ:雑記
posted by たお at 13:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日々のあれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月27日

テッド2 (Ted 2)

監督 セス・マクファーレン 主演 マーク・ウォールバーグ
2015年 アメリカ映画 115分 コメディ 採点★★★

ちょっとコメディ映画のレビューの出だしとしては重苦しいんですけど、逆に人間同様の罪には問えないって理屈がある分ペットがモノ扱いになってしまうのはギリギリ理解出来るとしても、子殺しが通常の殺人よりも罪が軽くなる傾向にあるのはどうしても納得できないんですよねぇ。子は親のなのかと。ケースによってはもちろん様々な事情もあるんでしょうから100万歩ほど譲ってそうだとしても、最も信頼し頼って愛している、そして自分を守ってくれると信じ切ってる存在から殺意を向けられる恐怖なんて、他の殺人以上に性質が悪いと思うんですけどねぇ。

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【ストーリー】
最愛の女性タミ・リンと結婚するも、すぐに夫婦の危機に直面してしまった命を宿したテディベアのテッド。問題解決には子供が一番と子作りに励もうとするが、夫婦双方の問題もあり断念。「じゃぁ養子を!」と申請するが、それがきっかけでテッドに市民権がないことが判明。というか人間でもない。憤慨したテッドは、親友のジョンと新米弁護士サマンサと共に人間と認めてもらうための裁判を開始するのだが…。

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命を宿したヌイグルミのクマと共に素敵なぐうたら中年ライフを送る様を描いた『テッド』の続編。前作同様、『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』のセス・マクファーレンが監督/脚本/テッドの声を担当。
笑いのスタイルも世界観も何も変えないまま、テッドの根本的な問題である“人間の定義”というSFではお馴染みの重いテーマに挑んだ本作。挑戦した結果作品を重苦しくするわけでもなければ、下品な笑いでお茶を濁して逃げるわけでもなく、思いのほかちゃんと捉えたうえで解決していたことに嬉しい驚きが。
前作にあった笑いの攻撃性やパンチ力こそ控えめになってたが、その分常に笑いが起きるジャブが連発しているので、大爆笑までは行かずとも2時間弱ずっと笑い続けてられた楽しい一本に。“成長する為には変わらなければならないけど、本質を曲げてまで変わる必要はなくね?”という基本姿勢が全く変わってないのも好印象。少々笑いのメリハリに欠ける分、前作のレベルを求めると少々物足りないのも事実ですけど、やってることは下品極まりないのにそこにマイルドさを感じさせる、表現力に一種のレベルアップを垣間見れたのも良かったかなぁと。コミコンを舞台に繰り広げられる、ヒーロー入り混じった大乱闘シーンも何気に芸が細かかったですし。
また、『エンド・オブ・ホワイトハウス』のモーガン・フリーマンを筆頭に、『誘拐の掟』のリーアム・ニーソン、今回もナレーションを担当する『X-MEN:フューチャー&パスト』のパトリック・スチュワート、トークショー界の重鎮ジェイ・レノや不正ボール問題というタイムリーなネタでいじられるトム・ブレイディ、そしてもちろん『フラッシュ・ゴードン』のサム・J・ジョーンズといった豪華なゲスト陣も嬉しかった作品で。

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やっぱり声だけの方が表情豊かになるセス・マクファーレンが声をあてるテッドの、見た目と裏腹な品の無さや見た目まんまの動きの愛くるしさがメインになるとはいえ、それはやはり呼応する『ローン・サバイバー』のマーク・ウォールバーグの存在があるからこその面白さ。優しくて気の良いうえに中身が小4男子のままという、ウォールバーグの魅力を最大限に発揮していたなぁと。持ち前のヤンチャさとワルさをちょいとばかし控えるだけで、こんなにも可愛いキャラになるんだから凄い。にしても、インスト曲に勝手に歌詞をのっけるという、暇を持て余した仲良し同士じゃないと成立しない遊びの楽しそうなことったら。まぁ、ウチの長男は一人ででもやってますが
前作でミラ・クニスが扮したジョンの恋人役は、彼女の妊娠による降板のため“離婚した”って設定になり、代わって『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』に続いてのマクファーレン作品への登場となるアマンダ・セイフライドが新ヒロインに。ミラ・クニスが前作で唯一まともな人間だからこそ出てたメリハリが、今回はジャンル的にアホちゃんなヒロインなのでなくなり、中心人物3人全員アホちゃんというフワフワした作風に。基本的に苦手な女優ではあるんですが、流石に“ゴラム”ってあだ名は思いつかなかったなぁ。
その他、『ハード・ラッシュ』のジョヴァンニ・リビシや、『スパイ・レジェンド』のビル・スミトロヴィッチなどの前作組に、『ラブ・アゲイン』のジョン・キャロル・リンチやパパ・スタークこと『アントマン』のジョン・スラッテリーら“見たことある”顔触れが加わった、なんとも賑やかだった作品で。

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検索候補の消し忘れにも御注意を

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posted by たお at 18:52 | Comment(4) | TrackBack(31) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月26日

Mr.タスク (Tusk)

監督 ケヴィン・スミス 主演 ジャスティン・ロング
2014年 アメリカ映画 102分 ホラー 採点★★★

なんかユーチューバーとやらが人気でございますねぇ。うちの子供らも、TVを観る時間よりもゲーム実況とか観てる時間の方が圧倒的に多いですし。ただまぁ、全員が全員とまでは言いませんが、一方通行ならではの自分だけが楽しそうな喋り方とか、コミュニケーション能力に疑問を感じざるを得ない笑い方とか、モノマネのモノマネでしかないキャラ作りなど、どうにも好きになれないんですよねぇ。まぁ、ネットで自己主張をしているって意味では、私も同じ穴のむじななんですけどね。

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【ストーリー】
ポッドキャストを運営するウォレスは取材のためカナダを訪れるが、その取材は空振りに終わってしまう。しかし、地元のバーにあったメモに興味をそそられ元船乗りという老人のもとへ向かい取材を行う。だが、その最中に猛烈な眠気に襲われたウォレスは昏倒、目を覚ますと車いすに縛られており、しかも片足が切断されてしまっていた。そこへ現れた老人の口から、恐ろしい計画が語られ…。

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自身が行っているポッドキャストで喋ったネタを映画化した、『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』のケヴィン・スミスによるホラーコメディ。
本作に収録されていたインタビューで「メジャー作はなにかと面倒!」「いい加減プライベートにネタがない」「映画作りに興味が薄れてきた」など語っているように、ここしばらく元気もらしさもない作品が続いていたケヴィン・スミス。前作『レッド・ステイト』に続いてホラージャンルに挑んだ本作も、その“らしくない”作品のように見えるが、“ポッドキャストで盛り上がったネタ”という一種のプライベートネタを、セイウチ人間という“誰も作らないけど自分が観たい作品”を撮るインディーズ魂とジャンル映画愛を込めて製作する、非常に彼らしい一本に仕上がっていて嬉しかった一本。怖い/怖くない、面白い/面白くないをさて置いて、まず嬉しい

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“旅先でエライ目に遭う”という定番ネタであるが、そのエライ目ってのが“セイウチ人間にされる”というふっ飛んだ設定だった本作。ケヴィン・スミス版『ムカデ人間』と言えばそれまでだが、些細なものから品の無いものまでバラエティに富んだ笑いを提供しつつ、しっかりとジャンル映画の系譜を守った恐怖演出を展開し、クライマックスにはそれらがものの見事に混在した、笑っていいのか怖がっていいのか観てるこっちが困惑する、ここ数年振り返っても味わったことのない衝撃&唖然&困惑するシーンを披露。あれは確かにセイウチだ。“セイウチ人間”としか表現できない衝撃的な生物を、スクリーンの中央にドドーンと据えて、それを若干突放し気味の距離感で撮るなんて、ありとあらゆる人の期待を裏切ってでも自分の観たいものを撮るケヴィン・スミスならではのセンス。もう悶絶。人間の皮膚で作ったセイウチスーツを縫いつけられたセイウチ人間と半裸の老人が肉弾戦を繰り広げる映画なんて、これまでありましたか?そんな唯一無二の作品を作ったってだけでも評価に値するのでは。陰惨なはずなのに不思議と生理的嫌悪感が少ないってのも味でしたし。
成り上がって調子づいたオタクを主人公に据え、オタク仲間の友人とゴージャス過ぎる彼女、ネジが吹き飛び過ぎて原形をとどめていない狂ったキャラにコンビニ店員と、ならではの人物設定も楽しかった一本で。

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“Wallace”と“Walrus(セイウチ)”という、ダジャレレベルの名前が付いた主人公に扮したのは、『ギャラクシー・クエスト』『アフターライフ』のジャスティン・ロング。オタク系青年を演じさせたら右に出るものがいなかった存在ながらも、若手の台頭で脇に追いやられ最近元気がなかった印象もあったんですけど、本作ではそこに“成り上がり”要素を加えて元気いっぱい。まぁ、今後「あぁ!あのセイウチの!」と認識されやしないかと心配にもなりましたが。
また、セイウチ愛に溢れ過ぎちゃってた老人に『アルゴ』のマイケル・パークス、これはこれで良い感じの成長だなぁと個人的には思ってる『シックス・センス』のハーレイ・ジョエル・オスメント、「彼女がこんなんだったらいいよねぇ」って夢と希望と妄想が込められた『ラン・オールナイト』のジェネシス・ロドリゲスに、ケヴィン・スミスの嫁と娘という、らしいキャスティングも楽しめた一本。
そういえば、ジョニー・デップが役名のままでキャスティングされてましたが、まぁ相変わらずだなぁって感じで。

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行きすぎたペット愛みたいなもの

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posted by たお at 12:34 | Comment(4) | TrackBack(8) | 前にも観たアレ■ま行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月24日

アリスのままで (Still Alice)

監督 リチャード・グラツァー/ワッシュ・ウェストモアランド 主演 ジュリアン・ムーア
2014年 アメリカ/フランス映画 101分 ドラマ 採点★★★★

経験や知識がその人となりを形成してると思ってるんですが、てことは“忘れる”ってのはその人の一部を失うということなんでしょうねぇ。日々嫌な思い出をさっさと忘れたいと思ってるんですけど、実際忘れちゃうと自分じゃなくなっていくんでしょうかねぇ。まぁ、嫌な思い出には密接に良い思い出も関連付いてるんで、それだけを忘れることも出来ないんですけど。

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【ストーリー】
大学で言語学を教えるアリスは、仕事も家庭も充実した50歳の日々を送っていた。しかし、講義中に単純な言葉が思い出せなくなったりジョギング中に道に迷ってしまうなど物忘れが頻発し、診断の末に若年性アルツハイマー症と判明する。日々症状が進行するアリスを家族は必死にサポートするのだが…。

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リサ・ジェノヴァの同名ベストセラーを映画化した、若年性アルツハイマーを発症した女性と家族の姿を描いた人間ドラマ。ワッシュ・ウェストモアランドと、本作の公開後程なくしてALSで亡くなったリチャード・グラツァーが監督・脚本を。
知識と言葉を糧に人生を積み重ねてきた女性がそれらを失っていく戸惑いと恐怖、そして彼女を支えていく家族の姿を描いた本作。過剰に演出された過酷な闘病記や不幸と死をネタにした所謂“感動もの”にはせず、言葉が浮かばなくて戸惑うアリスや、名前を間違えられた子供たちの困惑の表情など些細な変化を丹念に描くことで、家族全員で向かい合わざるを得ない問題の大きさを見事に表現している。
若干イジワルな言い方をすれば、アリスはまだ恵まれている。経済的にも恵まれているし、それに裏打ちされた家族関係にも恵まれている。過酷さと不幸話を売りにしたいのであれば、この環境は反感を生むだけかもしれないが、そもそも本作はそんな作品ではないのでは。遺伝性であり子供たちにも発症のリスクがあることを知ったアリスが語るように、次の世代には解決法があって欲しいという希望と、最後に残る言葉が“愛”だったように、全てを失いむき出しになった人間性がこうであって欲しいという望みが込められた一本なのかと。そんな甘いものじゃないのは個人的な経験上からも分かってはいるが、それを持ち続ける重要さは十分過ぎるほど伝わったので評価は高い。

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アリスに扮したのは、『フライト・ゲーム』『ドン・ジョン』のジュリアン・ムーア。常々彼女の作品を観る度に、類稀なる表現力と年々積み重ねていく美しさに“惚れ惚れする”としか書いてないんですが、本作もまさにそう。知性と理性に溢れた女性、それを失っていく恐怖と困惑に襲われる様、そしてその後の虚空と少しずつ確実に変化していく様を見事過ぎるほど的確に表現。
その表情の少なさと棒っぷりが本国でネタにもされる『スノーホワイト』のクリステン・スチュワートがジュリアン・ムーアと共演するってのは、なんか一種の罰ゲームのような感じもありましたが、お得意の低体温ゴス系キャラだったので違和感なし。
また、胡散臭い役柄か陰険な役柄ばかり最近観ていたせいか、大きな愛と懐の深さを見せる夫役の『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のアレック・ボールドウィンにちょっとした新鮮さを。ただ優しいだけではなく、葛藤と弱さをしっかり滲み出す巧みさも見事で。
その他、然程描かれてなかったってのとぱっと見のゴージャスさでウヤムヤにされてた感もあったが、アリスと同じくらいの重いドラマを抱えていた長女に扮した『バトルフロント』のケイト・ボスワースも印象的だった一本で。

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変わらないものだけが残る

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2016年01月21日

カリフォルニア・ダウン (San Andreas)

監督 ブラッド・ペイトン 主演 ドウェイン・ジョンソン
2015年 アメリカ映画 114分 パニック 採点★★

私の中であの大地震を印象付けてるのって、大きく激しかった揺れではなくて“”だったりも。なんか列車が走るような音がするなぁと思ってたらそれがグングンと大きくなり、揺れの始まりと同時に庭の木々が軋み出し、それが家全体に移って家具やら浴室のタイルが壊れる音がし始める。大きくなっていく揺れ以上に、大きくなっていく音に身の危険を感じたもので。

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【ストーリー】
カリフォルニア州を襲った史上最大の巨大地震。たまたまロサンジェルス上空を飛んでいた救助隊のレイは、離婚話が進んでいる妻エマを救出。その足でサンフランシスコに居る娘の救出に向かうのだが…。

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『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』のブラッド・ペイトンがメガホンを握った、巨大地震パニック。
災害時に家族を最優先に守るってのは当たり前の話なんですが、主人公が過去にトラウマを持つ凄腕レスキュー隊員って設定なもんだから、てっきり「身内は最後だ!」ってプロの責任と家族愛との間の葛藤を描くのかと思いきや、未曾有の大災難時にあっさり職務を捨てて家族を助けに行っちゃう本作。助け合いも犠牲の精神も捨てちゃったみたい。職場も「オッケー!気を付けてねー!」と非常にあっさりでしたし。家族のために軽く略奪しちゃったり、盗難車を奪い取ったりとやりたい放題なのだが、そこに“家族のためなら何でもやる”って必死さや物語を集中させるストイックさがあれば救いがあるのですけど、大混乱の中、目的の人物とたまたま出会い続けたり、妻の恋人が都合良く悪人になったりと、結局のところ物語に関心を払っている形跡はなし
でもまぁ、大破壊を楽しむ一種のアトラクション作品として完成されてれば文句も少ないんですが、破壊描写もこれまた雑。雑なCGで車がでんぐり返しを続けるオープニングの見せ場に感じた嫌な予感がそのまま的中してしまう、ただただ街が壊れるだけの単調さ。内陸型地震で津波が発生するとか、真っ先に止まりそうな電気が電線に通ってたりとかする細かいことは抜きにしても、音の恐怖や予兆の緊張感など、“地震”を描けてない演出力の拙さも残念だった一本で。

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主人公に扮したのは、『ワイルド・スピード SKY MISSION』のドウェイン・ジョンソン。今現在、最も“強さ”に説得力を持つアクションスターとしてのみならず、持ち前の器用さと表現力の豊かさで様々な役柄を演じれる彼だけに、今回のような大災害に立ち向かう救助隊の役柄はぴったりはまるんですが、如何せん物語がスッカスカだっただけに持ち味を活かしきれず。これだったら、倒れてくるビルを両手で支えたり、地割れを「フンガッ!」と抑え込んでた方が、作品としては大分アレですがまだ良かったかなぁと。なんかもう、ロックの持ち腐れ
見覚えのある顔触れが揃っているのに、その役柄にこれと言った印象を残さないのも本作の特徴。
凄腕レスキュー隊員の旦那との馴れ初めも謎だけども、その次に捕まえるのが大金持ちの社長という、どんな環境に居るのかさっぱり分からない妻役には、『ファースター 怒りの銃弾』でもドウェイン・ジョンソンと共演済みのカーラ・グギーノ。また、正直なところオッパイにしか目が行かなかった娘役に『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のアレクサンドラ・ダダリオ。もう謎のオッパイ推し
その他、話を進める上でその方が楽だからって理由で悪人にされたとしか思えない『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』のヨアン・グリフィズや、『ロック・オブ・エイジズ』のポール・ジアマッティらも共演。にしても、ふいに出てきたかと思いきや、あっという間に退場するカイリー・ミノーグの扱いが謎

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他人100人助けるよりも身内2人助ける方が大事

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2016年01月20日

マーシュランド (La isla mínima)

監督 アルベルト・ロドリゲス 主演 ラウール・アレバロ
2014年 スペイン映画 105分 サスペンス 採点★★★★

すっごく初歩的なことではあるんですけど、ある特定の年代を舞台にしている作品って、その年代じゃなければならない理由ってのがあるんですよねぇ。ただ、観慣れた国の作品とかならまだしも、然程詳しくない国の作品だったりするとオチの意味すら把握できなくなっちゃう場合も。なもんだから、初っ端に“19○○年”とかテロップが出たら一時停止にしてググルようにしてるんですよねぇ。まぁ、劇場の場合はお手上げですけど。

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【ストーリー】
1980年、スペインのアンダルシア地方。首都マドリードから湿地帯の小さな町へ左遷されてきた若き刑事ペドロとベテランのフアンは、二人の地元少女が行方不明になった事件を担当することに。しかし、少女らは程なく遺体で発見され、その遺体には惨たらしい拷問と強姦の痕跡が残されていた。捜査を進める内に、過去にも同様の事件が発生している事を知った刑事は…。

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独裁国家から民主主義国家へと生まれ変わったばかりのスペインを舞台にした、本格的な刑事ドラマ。『UNIT 7 ユニット7/麻薬取締第七班』のアルベルト・ロドリゲスが脚本と監督を。
少女の惨殺死体や小児性愛、麻薬汚染や貧困といったセンセーショナルな題材を扱いつつもそのキャッチーさに頼らず、湿地帯から染み出る湿気のようにジワジワと浮き出る田舎町の暗部を、己の目と耳と足で暴いていく本格的で重厚な刑事ドラマを満喫できた本作。都会から遅れてようやく変化の波が訪れた田舎町の閉鎖的な空気感や、その町を離れることが容易なようで困難な状況に失望しきった若者の姿、少しずつ明らかになる過去と同時に人物像も明確になっていく刑事らなど、ストーリーのみならず状況や人物描写の見事さにも舌をまく。
決してランニングタイムは長くないのだが、十分過ぎる程どっしりとした充足感を味わえた本作。活劇的なシーンはほぼ皆無だが、ちょっとしたチェイスシーンにある高い緊迫感や暴力シーンの陰惨さなど、メリハリの付け方も非常に上手い、ちょっとこの監督の過去作も漁りたくなるだけの魅力と面白さがあった一本で。

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ここから先はネタバレと憶測になるんですけど、この組織的な拷問殺人事件の末端に居る犯人こそ逮捕するも、その全容が明らかになるどころかベテラン刑事フアンにも疑いの目が行く締めくくりを迎える本作。
ちょっと監督のコメント等までは調べがつかなかったのであくまで憶測ではあるんですが、“フアン犯人説”は少々厳しいかなぁと。事件発生時に犯行可能だったような描写もなければ、時期も過去に遡るので難しい。ただ、写真に残る犯人の腕時計の位置や形状、拷問の達人だった過去やその女好きっぷり、霊媒師の意味深な発言など、観客に疑いを敢えて持たせる作りになってるのも事実。
じゃぁ、なぜそんな描写にしたんだろうという疑問が。これは個人的な解釈でしかないのですが、フアンはこの事件で自分の影を追う羽目になったのではないかなぁと。犯人に向けた怒りや蔑視は全て自分に返って来る、自分の尻尾を延々と追い続けなければならない無間地獄に陥ったかのような。実行犯の一人に対する異常なまでの暴力も、逃れることも消すことも出来ない自分の内なる闇に対する感情の爆発なのかも。また、霊媒師の言葉も、その言葉通り過去の犠牲者の怨が不安の心身を蝕んでいる現在を指してたのかも。個人的にはこれが一番シックリきた解釈でしたねぇ。
そんな、鑑賞後もあれこれ頭に残る、そして決して闇雲に煙に巻くような作りではない本作はやっぱり好みだった一本で。

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美人ばっか住んでるってのも好みで

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2016年01月18日

マザーハウス 恐怖の使者 (La casa del fin de los tiempos)

監督 アレハンドロ・イダルゴ 主演 ルディ・ロドリゲス
2013年 ベネズエラ映画 101分 ホラー 採点★★★

観てない方にはネタバレになっちゃうんですけど、『アザーズ』って謎の人影に怯えるニコール・キッドマンを映し出してましたが、人影側も怖かったでしょうねぇ。引っ越してきたら知らんのが三人ウロウロしてるんですもの。あ、でもニコマン程の美人がウロウロしてるのも悪くないか。

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【ストーリー】
1981年11月。不幸な事故で末息子ロドリゴを失ったドゥルセ。その夜、自宅で悲しみに暮れる彼女は何者かに殺された夫を発見し、長男のレオも彼女の面前で連れ去られてしまう。殺人の容疑で逮捕された彼女は、30年の時を経て自宅へと戻って来る。“家”そのものに家族を奪われたと主張する彼女の言葉を受け、カウンセリングを担当していた神父は家の歴史を調べ始めるのだが…。

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家族を失った母親がその驚愕の真相を知る様を描く、本作がデビューとなる新鋭アレハンドロ・イダルゴが製作/脚本/編集/監督を兼任する大忙しっぷりで作り上げたベネズエラ産SF風味ホラー。
家の秘密とその捻りに捻った設定がほぼ全てになるため、何を書いてもネタバレになっちゃう困った一本。なもんで口数はだいぶ少なくなっちゃいますが、“良く練られた物語に満足できた一本”とだけは断言可能。あとはもう、その目で確かめてと。
確かに初監督ってのもあってか粗さの目立つ作品ではあった本作。家の秘密が判明する最大のクライマックスはなんかモシャモシャした演出によりインパクトが薄まってしまっているし、○○モノに付きもののパラドックスも少々気になる所。そして何よりも、父親のホセが不憫過ぎる。事故とは言え最愛の息子をもう一人の息子によって殺されるってだけでも最悪なのに、○○が実は××じゃなかったと知ってしまった挙句に殺されるなんて、可哀想過ぎるにも程がある。主人公の対応次第では実際に○○を××するかは人柄を考えると微妙なだけに、もうその顛末の悲惨さばかりが気になっちゃって。
ただまぁ、もう二度と味わいたくないはずの屈辱を○○の自分に味あわせる決断をしてまで息子を守ろうとする母親の愛や、その息子を取り囲む様々な愛が判明するラストショットの見事さもあるので、やはり満足度の高いめっけもんホラーだったなぁと。

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ある意味お母さんは自業自得

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2016年01月17日

チャイルド44 森に消えた子供たち (Child 44)

監督 ダニエル・エスピノーサ 主演 トム・ハーディ
2015年 アメリカ/イギリス/チェコ/ルーマニア/ロシア映画 137分 サスペンス 採点★★★

快楽殺人鬼や連続殺人鬼ってどこか西洋や特にアメリカの特産品のような印象もありますが、日本で散発的に起きた殺人事件の概要を見ると、たまたま少数の犠牲者で済んでいただけの快楽殺人ってのも少なくないですよねぇ。

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【ストーリー】
1953年、スターリン政権下のソ連。“西側の病気である殺人はユートピア社会では存在しない”という理由から、変死体で発見された戦友の子供を事故として処理するよう命じられた国家保安省のエリート捜査官レオ。殺人事件であるという疑念が拭えぬままやがて地方へと左遷されたレオは、その地でも同様の変死体と遭遇する。それが連続殺人事件であると確信したレオは、上司のネステロフと共に捜査に乗り出すのだが…。

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チカチーロ事件をモデルにしたトム・ロブ・スミスによるベストセラー小説『チャイルド44』を、『デンジャラス・ラン』のダニエル・エスピノーサが映画化したサスペンス。製作にリドリー・スコットも。
ユートピアに殺人は存在しない”という建前を守るためだけに事件のもみ消しを命じられた男が真実を求め戦う姿と、全体主義社会の恐怖を描いた本作。ネタ元が一緒なので当たり前のことではあるんですけど、どこかオーウェルの『1984年』に通じるSF的怖さも感じられた一本。英雄になるのもエリートになるのも、そしてそこから転落するのも国家の胸先三寸で決められてしまう不条理さも良く描けている。また、最近“自由”ばかりが先走ってる感もあるが、その自由に付きまとう責任や代償ってものの重さってのも表現できていたのかと。
ただ、最初のカット版が5時間半に及んだという話からも推察できるように、一本の映画にするために大胆な省略や再構築を施すというよりも、原作の要素を可能な限り満遍なく取り込もうとしたせいか、盛り沢山だけどどれも消化不良のダイジェスト感が否めないのも事実。国家の目的が明確なのに対し、登場人物らの行動転機や動機が少々不明瞭になってしまってたり、軸となるテーマが乱立して大黒柱がない感じが惜しいなぁと。

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重々しいダイジェスト版って印象だった作品ではあったものの、演者がその辺を存分に補ってたのが救いだった本作。
特に主人公のレオに扮した、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ウォーリアー』のトム・ハーディが素晴らしい。ロシア人に見えるかってのはさて置いて、内にある純粋さや正義感を力づくで無理やり抑え込んでいるような抑圧された人物が本当に似合う。言いたいことが山ほどあるのに抑え込んでしまい、口から出るのは唸り声のみみたいな、強い意志と我があるのに愚直で不器用だから何も言えない様が、なんかアホみたいな表現ですが堪らなく可愛い。妻のことを愛してやまないのに奥さんはそうでもなかったことを知っても唸るだけの様なんて、特にもう。
そんなトム・ハーディのみならず多くの男性キャラから想いを寄せられる妻役が『プロメテウス』のノオミ・ラパスなのは「どうなの?」と、上手い下手を差し置いて思っちゃったのは事実ではあるんですけど、凶暴な臆病者という立ち悪いにも程がある役柄に扮した『ラン・オールナイト』のジョエル・キナマンや、抑えられない衝動に苦悩する犯人に扮した『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のパディ・コンシダイン、もうちょい掘り下げて欲しかったロボコップ』のゲイリー・オールドマンなど、好みの役者がしっかりと脇を固めていたのも好印象。
急逝したフィリップ・シーモア・ホフマンに代わって登板した『オーシャンズ13』のヴァンサン・カッセルや、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のジェイソン・クラーク、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のチャールズ・ダンスなど、隅々重厚な顔触れが配されてたのも魅力だった一本で。

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向いてる方向が同じでも気持ちが同じとは限らず

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posted by たお at 12:58 | Comment(6) | TrackBack(21) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月16日

ピエロがお前を嘲笑う (Who Am I - Kein System ist sicher)

監督 バラン・ボー・オダー 主演 トム・シリング
2014年 ドイツ映画 106分 サスペンス 採点★★★★

「ホギャー!」と産まれた子供が高校に行き始めるくらいのパソコン歴を持ってるんですけど、未だにパソコンのことはチンプンカンプンな私。何が起こるか分からないから触れたことのないキーが結構ありますし。なもんで、ハッカーなんて輩は私の想像を超えるジャンルの連中なんですよねぇ。映画なんかで見るとキーボードを猛スピードで連打しちゃってますけど、もう何をやってるのやらさっぱり。まぁ、そういう演出の方が“何か凄いことやってる”って感が出るからなんでしょうけど。終業時間10分前くらいになると、なんとなく机の引き出しを開けたり閉めたりし始めるみたいな感じで。

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【ストーリー】
殺人事件への関与を疑われ国際指名手配されていたハッカーのベンヤミンは、ユーロポールへ自ら出頭してくる。彼はユーロポールがその存在を追い続ける大物ハッカー“MRX”逮捕への協力と引き換えに、事件の経緯の供述を始めるのだが、そこにはあるトリックが隠されており…。

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「ネタバレしたら怒っかんな!」って人はもうここまで。だってバレちゃうもの
「ウソぴょーん!」で終わる『ユージュアル・サスペクツ』にしろ個人的には好きな作品ではないんですが案外ファンも多い『アイデンティティー』にしろ、考えてみればどんでん返しとしては反則技に近いんですよねぇ。それがアリならなんでもアリじゃんみたいな。ただ、そこに至るまでのドラマ作りの上手さだったり、嘘の整合性の見事さなどが伴ってるんで、今現在まで語り継がれる傑作になり得たんだろうなぁと。
本作もそんなジャンルの一本で、「ボクはこれから嘘をつきます!」と宣言してるのと同様のセリフが繰り返されるおかげでラストのインパクトこそ薄くなってるが、嘘をつく必然性や理由が説得力あるものとして作られているので好印象だった作品。“ハッカー版ユージュアル・サスペクツ”をベースに、『アイデンティティー』と劇中ポスターが貼ってあった『ファイト・クラブ』をミスリードに使用する、好きなものとやりたいことが容易に想像できる新鋭らしい素直さと、下手に背伸びしないでそこに真っすぐ進む真面目さも好みで。

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トリックのみならず物語そのものも楽しめた本作。
修学旅行先で取り残され一人列車で帰って来たという逸話を持つほど存在感の無い主人公。そんな透明人間な彼が叶うことのない仄かな恋心を発端に犯罪に手を染め、これまで出会うことのなかった刺激的な犯罪グループと知り合う。その人生の変化や成長、混乱や刺激などがしっかりとベースとして機能していたのも大きい。また、小悪党の魅力をちゃんと伝えきってたのも見事だったなぁと。
憧れの女性とやたら偶然に出会い過ぎる展開や、その女性がどう見ても同世代に見えないって難点も少なくはなかったんですけど、サイバー空間の演出方法の目新しさや音楽の使い方、嘘の見事さにしてやられた捜査官の爽やかさすら漂うラストの表情など素晴らしい描写も多いので、そんな難もあっさりクリア。
早速ハリウッドに招かれ現在アクションスリラー『Sleepless Night』を製作中のバラン・ボー・オダーですが、ちょいと今後目が離せない映画人の一人かも。

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posted by たお at 11:52 | Comment(0) | TrackBack(16) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする