2012年 アメリカ映画 112分 コメディ 採点★★★
「観たい!」と思った映画しか観ないってのは鑑賞姿勢としては間違ってないんですけど、ジャンルに偏りが出るのは仕方がないとしても、役者に偏りが出てしまうのは後々のことを考えると少々問題が。20年後には、お爺ちゃんが大活躍する映画しか観るものが無くなりそうですし。なもんで、たまには先行投資って意味合いも兼ねて「どれどれ、最近の若者はどんなの観るんだい?」と、普段は敬遠しちゃうような作品を手に取るのも大事なのかと。まぁ、カジャグーグーのCDを聴きながらこれを書いてる私が言うのも説得力無いんですけど。
【ストーリー】
音楽プロデューサーになることを夢見ながらも、大学教授の父親の勧めでバーデン大学に嫌々ながら入学したベッカ。他人にも学園生活にも興味がないベッカだったが、強引な勧誘で女子アカペラ部“ベラーズ”に入部。個性的なメンバーと共にアカペラ全国大会を目指し練習に励む彼女だったが…。
ミッキー・ラプキンによる実録本を基に、本作が劇映画デビューとなるジェイソン・ムーアが映画化した学園ミュージカルコメディ。製作者に『ピッチ・パーフェクト2』で長編監督デビューを果たした『スリーデイズ』のエリザベス・バンクスが。
「いらねぇ!」って言ってるのに元気と共感を強引におすそ分けするような人種も作品も苦手な上に、やってる本人は気持よさそうなアカペラも嫌い。アレンジは別にして好きな曲は一曲だけあったが、他は好みから少々ずれた選曲ばかり。こんな“私の苦手なもの”ばかり集まったかのような作品ではありますが、これがなかなか悪くない。
『スタンド・バイ・ミー』ばりのゲロ噴射で幕を開け、ターニングポイントでもう一回噴射、人種ネタや性ネタなど煌びやかな上っ面とは裏腹に攻撃的な笑いが豊富なコメディとして存分に楽しめた本作。ばらばらだったのが一つにまとまるって意味では分かるが、その後の別離には触れない『ブレックファスト・クラブ』の引き合いの仕方や、伝統や習わしに縛られ過ぎちゃいけないってのも分かるけど、勝つためにガラリと変わってしまう様に「ベラーズってなんなの?」って根本の部分に疑問も頭をよぎったりするが、恋や友情をメインにした下手に捻らないしっかりとした土台があるので、笑いと歌の勢いで全然乗り切れる仕上がり。
ただ、やはり本作の魅力のほぼほぼ全てを担っていたのは、『エンド・オブ・ウォッチ』『50/50 フィフティ・フィフティ』のアナ・ケンドリックにあったのかと。細くて小さな身体にちょい大きめの頭が乗っかってる、なんかバブルヘッド人形のような可愛らしさと、基本ひとつの笑顔で乗り切ってはいるのだが、その笑顔に苦みと醒めを織り交ぜ、他者との距離感を巧みに表現。これが「愛よ!友情よ!夢よ!」とグイグイ来るタイプがメインだったりすると、私のようなオイちゃんは知らん子の学園祭に迷い込んだかのような心境に陥るんですけど、程よく醒めた彼女がメインだったおかげで最後まで楽しめた結果に。
そんなアナ・ケンドリックにしか目が行かなかったからか、最近の定型からはみ出なかったからか他の若手の印象は薄いんですけど、『フライトナイト/恐怖の夜』のクリストファー・ミンツ=プラッセが観れたのは嬉しかったなぁと。
それにしても、本国公開から3年も経ってようやく日本でも公開された本作。本国で莫大な利益を挙げた作品とは言え権利が案外高かったのかもしれませんし、当時はまだアナ・ケンドリックが日本ではほぼ無名だったこともあるんでしょうけど、題材としては決して日本で受けなさそうな代物ではなし。まして、誰しも無名からスタートしてヒットして初めてスターとなるってのに、そのきっかけを作りだそうとしない日本の映画業界の仕事っぷりには、相変わらず過ぎてもう言う言葉なし。ソフトが出たかと思えば独占レンタルですし。スター・ウォーズの度に値上げするという、映画愛好者の神経を逆なですることには才を発揮するくせに。
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