2015年11月16日

22ジャンプストリート (22 Jump Street)

監督 フィル・ロード/クリストファー・ミラー 主演 ジョナ・ヒル
2014年 アメリカ映画 112分 コメディ 採点★★★

なんかついこの間も似たようなこと書いた気もしますが、ヒット作の続編に期待することって、別に予算増大による豪華さやスケールアップなんかじゃなく、以前と変わらぬ面白さってのを求めてたりするんですよねぇ。確かに豪華になると「おぉ!」とはなりますが、好きだったあの映画とは違うって印象になると元も子もありませんし。なんと言うか、行きつけのラーメン屋が繁盛した結果、好きだったシンプルな中華そばが伊勢海老とアワビの金箔入りラーメンに変貌しちゃったかのような。

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【ストーリー】
麻薬ルート撲滅のために、今度は大学へ潜入することとなったシュミットとジェンコ。ところが、ジェンコが容疑者であるズークと意気投合してしまい、フットボールの花形選手として大活躍してしまったことから二人の間がギクシャクし始めてしまい…。

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本部移転でタイトルも変わった、『21ジャンプストリート』の続編。前作に引き続き、『LEGO(R)ムービー』のフィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビがメガホンを。
劇中でネタになるほど、高校が大学になった以外基本的には前作と何も変わっていない本作。その変わらなさを筆頭に、“予算倍増で好き放題”や“見えないところに無駄遣い”など続編ビジネスってのをエンドクレジットに至るまで徹底的におちょくった笑いの数々がなんとも楽しい。また、ジョックスとギークの立場を逆転してみる試みこそ興味深かったが、如何せんスクールカーストを排除した学校描写でイマイチそれが効果を示してなかった前作と異なり、ジョックスが学園生活を謳歌するストレートな描写に変えた結果、本来なら混じり合うことのないシュミットとジェンコの関係性の面白さがより明確になった印象も。
お楽しみであるトリップシーンは良い方向にグダグダとなり、恋に友情にと敢えて定番的な内容の膨らませ方も効果的だった本作。個人的には前作以上に楽しめただけに、アナウンスされた第三弾も楽しみで。シリーズ作で鬼門となりがちな“パート3”をどうネタにするのか期待ですし。

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ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』のジョナ・ヒルと、『フォックスキャッチャー』のチャニング・テイタムによるコンビ芸が楽しい本作。攻撃的なジョナを見れないってのが少々寂しいのは事実ですけど、なんかカッコいいこと言えと言われて「なんかカッコいいことー!」と叫ぶチャニングの脳みそまで筋肉で埋め尽くされたボケと、それに対する的確なジョナの突っ込みが楽しめるのは本作ならではの面白さ。見た目からキャラまで全て正反対で、尚且つその真逆っぷりを笑いにちゃんと活かしている見事なコンビ芸だなぁと。
また、前作ではほぼゲスト扱いだったが、今回はより凶暴になって出番も増えた『トリプルX ネクスト・レベル』のアイス・キューブや、そのアイス・キューブとの大御所ラッパー同士の夫婦役がなんとも豪華だった『バレンタインデー』のクィーン・ラティファ、『クラウン』のピーター・ストーメア、オーウェン・ウィルソンからより一層知能指数を差っぴいた感じがちょいと可愛かった『カウボーイ&エイリアン』のワイアット・ラッセル、前作から引き続き登場する『インターンシップ』のロブ・リグルに『フライトナイト/恐怖の夜』のデイヴ・フランコといった賑やかな顔触れも楽しい一本。エンドクレジットに『グリーン・ホーネット』のセス・ローゲンと、『スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方』のビル・ヘイダーが登場するのは嬉しい驚きでしたし。

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そろそろコンビ名付けても良い頃かと

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2015年11月14日

ピッチ・パーフェクト (Pitch Perfect)

監督 ジェイソン・ムーア 主演 アナ・ケンドリック
2012年 アメリカ映画 112分 コメディ 採点★★★

「観たい!」と思った映画しか観ないってのは鑑賞姿勢としては間違ってないんですけど、ジャンルに偏りが出るのは仕方がないとしても、役者に偏りが出てしまうのは後々のことを考えると少々問題が。20年後には、お爺ちゃんが大活躍する映画しか観るものが無くなりそうですし。なもんで、たまには先行投資って意味合いも兼ねて「どれどれ、最近の若者はどんなの観るんだい?」と、普段は敬遠しちゃうような作品を手に取るのも大事なのかと。まぁ、カジャグーグーのCDを聴きながらこれを書いてる私が言うのも説得力無いんですけど。

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【ストーリー】
音楽プロデューサーになることを夢見ながらも、大学教授の父親の勧めでバーデン大学に嫌々ながら入学したベッカ。他人にも学園生活にも興味がないベッカだったが、強引な勧誘で女子アカペラ部“ベラーズ”に入部。個性的なメンバーと共にアカペラ全国大会を目指し練習に励む彼女だったが…。

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ミッキー・ラプキンによる実録本を基に、本作が劇映画デビューとなるジェイソン・ムーアが映画化した学園ミュージカルコメディ。製作者に『ピッチ・パーフェクト2』で長編監督デビューを果たした『スリーデイズ』のエリザベス・バンクスが。
「いらねぇ!」って言ってるのに元気と共感を強引におすそ分けするような人種も作品も苦手な上に、やってる本人は気持よさそうなアカペラも嫌い。アレンジは別にして好きな曲は一曲だけあったが、他は好みから少々ずれた選曲ばかり。こんな“私の苦手なもの”ばかり集まったかのような作品ではありますが、これがなかなか悪くない。
『スタンド・バイ・ミー』ばりのゲロ噴射で幕を開け、ターニングポイントでもう一回噴射、人種ネタや性ネタなど煌びやかな上っ面とは裏腹に攻撃的な笑いが豊富なコメディとして存分に楽しめた本作。ばらばらだったのが一つにまとまるって意味では分かるが、その後の別離には触れない『ブレックファスト・クラブ』の引き合いの仕方や、伝統や習わしに縛られ過ぎちゃいけないってのも分かるけど、勝つためにガラリと変わってしまう様に「ベラーズってなんなの?」って根本の部分に疑問も頭をよぎったりするが、恋や友情をメインにした下手に捻らないしっかりとした土台があるので、笑いと歌の勢いで全然乗り切れる仕上がり。

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ただ、やはり本作の魅力のほぼほぼ全てを担っていたのは、『エンド・オブ・ウォッチ』『50/50 フィフティ・フィフティ』のアナ・ケンドリックにあったのかと。細くて小さな身体にちょい大きめの頭が乗っかってる、なんかバブルヘッド人形のような可愛らしさと、基本ひとつの笑顔で乗り切ってはいるのだが、その笑顔に苦みと醒めを織り交ぜ、他者との距離感を巧みに表現。これが「愛よ!友情よ!夢よ!」とグイグイ来るタイプがメインだったりすると、私のようなオイちゃんは知らん子の学園祭に迷い込んだかのような心境に陥るんですけど、程よく醒めた彼女がメインだったおかげで最後まで楽しめた結果に。
そんなアナ・ケンドリックにしか目が行かなかったからか、最近の定型からはみ出なかったからか他の若手の印象は薄いんですけど、『フライトナイト/恐怖の夜』のクリストファー・ミンツ=プラッセが観れたのは嬉しかったなぁと。
それにしても、本国公開から3年も経ってようやく日本でも公開された本作。本国で莫大な利益を挙げた作品とは言え権利が案外高かったのかもしれませんし、当時はまだアナ・ケンドリックが日本ではほぼ無名だったこともあるんでしょうけど、題材としては決して日本で受けなさそうな代物ではなし。まして、誰しも無名からスタートしてヒットして初めてスターとなるってのに、そのきっかけを作りだそうとしない日本の映画業界の仕事っぷりには、相変わらず過ぎてもう言う言葉なし。ソフトが出たかと思えば独占レンタルですし。スター・ウォーズの度に値上げするという、映画愛好者の神経を逆なですることには才を発揮するくせに。

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売るのが仕事なのにおこぼれ貰うことばかり

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2015年11月13日

モール・コップ ラスベガスも俺が守る! (Paul Blart: Mall Cop 2)

監督 アンディ・フィックマン 主演 ケヴィン・ジェームズ
2015年 アメリカ映画 94分 コメディ 採点★★

映画がヒットすれば続編作ってもうひと儲けってのは、ビジネスとして非常に真っ当。で、どうせ作るならもっとスケールアップして大ヒットを狙い、シリーズ化への軌道に乗せてウハウハっても理解できる。ただ、予算もスケールも倍増させて前作より面白くなった作品ってのは、それこそ数えるくらいしかないんですよねぇ。まぁ、既に名前の知られた続編を作る方が金が集まりやすいからって理由も少なくないんでしょうけど。

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【ストーリー】
6年前にショッピングセンター強盗事件を解決し、最愛の女性とも結婚できたことで幸せの絶頂に居たかのように見えた警備員のポールだったが、妻は僅か6日間で彼のもとを去り、母親は事故死。結局シングルファーザーとして仕事に没頭する孤独な日々を再び送っていた。そんな彼のもとに、ラスベガスで行われる警備連盟総会の招待状が届く。優秀な警備員のみが招かれるその総会に喜び勇んで出席する彼だったが、滞在先の豪華ホテルでは美術品強盗団が潜んでいて…。

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闘魂先生 Mr.ネバーギブアップ』のケヴィン・ジェームズ主演でスマッシュヒットを飛ばした、『モール★コップ』の6年ぶりとなる続編。『ゲーム・プラン』のアンディ・フィックマンがメガホンを握り、製作にはもちろんアダム・サンドラーも。
予算に大差ないせいか、舞台のほとんどがセットだったせいか全体のスケールアップ感は然程なかったものの、如何せんだいぶ前に一度観たっきりですし私の記憶力がアレだってのもあるんですけど、「ポール・ブラートってこんなキャラだったっけ?」ってのが最初に来るほど、主人公のダメな部分がスケールアップした感強い本作。そのダメな部分に笑いを集中させる前半部の、こつこつヒットを狙いに行きながら凡打が続いてしまうかのようなハズしっぷりが痛い。笑いの質がドタバタと化す後半に多少盛り返すものの、トータルでの低空飛行感は否めず。重要なポジションじゃないってのが救いではありましたが、ヒロインにあたる『クライモリ デッド・エンド』のダニエラ・アロンソの大失敗したハル・ベリーのような残念さもちょいと痛恨。ブラート父娘が妙にモテるってのも、笑わせたいのかそうじゃないのかいささか不明で。
話術に動きにとオールマイティな笑いを生み出せるケヴィン・ジェームズの才を活かしきれてなかったのはアレでしたけど、ゲイリー・“ケヴィン兄”・バレンタインや、嫁サンドラー、ニコラス・“ジョン弟”・タートゥーロにバス・ルッテンといったお馴染みの顔触れが揃ってるのはやはり嬉しい。相変わらずサンダーバードの人形のようだった『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のニール・マクドノーの気持ち悪さも絶妙でしたし。

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好きな人には堪らないのかと

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2015年11月11日

誘拐の掟 (A Walk Among the Tombstones)

監督 スコット・フランク 主演 リーアム・ニーソン
2014年 アメリカ映画 114分 サスペンス 採点★★★

最近めっきり本を読まなくなってきた私。別に読書欲が無くなったわけでも面倒くさいわけでもないんですが、どうにもこうにも目が疲れてしんどい。っていうか、よく見えない。もともと視力自慢だったんですけど、流石に年齢と共に徐々に衰え始め、最近では子供の集合写真から自分の子を見つけられないほどまで劣化。運動会なんかに行ったら、全然知らん子をカメラで連写してたりしますし。まぁ、字幕が見えなくなったらメガネデビューしようかと。

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【ストーリー】
1999年のニューヨーク。とある事情で警察を辞め、それと同時に禁酒を誓ったしがない私立探偵マット・スカダー。そんな彼のもとに、ドラッグディーラーの男から妻を誘拐し惨殺した犯人の捜索依頼が舞い込む。やがて、警察に助けを求められない麻薬犯罪者の身内を狙い凌辱の果てに惨殺する犯人グループの存在に辿り着くスカダーだったが、そんな中、新たに14歳の少女までもが誘拐されてしまい…。

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『800万の死にざま』でも知られるローレンス・ブロックの“マット・スカダー”シリーズの一遍“獣たちの墓”を、『愛と死の間で』『マイノリティ・リポート』の脚本を手掛けたスコット・フランクが脚色し、自らメガホンも握り映画化したクライム・サスペンス。製作者の中にはダニー・デヴィートの名も。もともとは、ジョー・カーナハンが『NARC ナーク』の次にハリソン・フォード主演で映画化する予定だったとか。
身代金はボーナスのようなもので、あくまで真の目的は非道極まりない凌辱とその後の惨殺にある連続猟奇誘拐殺人犯と、重い過去を背負う元刑事の私立探偵との戦いを描いた本作。ほぼほぼ現代に時代設定を置きながらも、どこか往年のハードボイルド映画を彷彿させる雰囲気も魅力。また、登場人物に多くを語らせない代わりに一つ一つの台詞を大切にし、その言葉と言葉の間に心情や背景を浮かび上がらせる読書感を残した脚本家ならではの丁寧な作りも上手い。妻を殺された怒りや悲しみ、憎しみを表には出さないが内側でたぎらせている夫の様や、婚約者が殺されたっていうのに妙にサバサバしている男の姿など、真人間とはちょっと違う犯罪者たちの描写も悪くない。何が行われているのかが分かると戦慄が走るオープニングや、物語からはちょっとずれるが、サウンドガーデンの“ブラック・ホール・サン”をカヴァーしたエンディング曲も良い仕上がり。

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ただ、丁寧に作り過ぎたせいかメリハリに乏しく、犯人へと繋がる手掛かりの発見やクライマックスに訪れる葛藤、過去との関わり方など肝心なターニングポイントがモヤっとしてしまうのがなんとも惜しい。また、そのメリハリの乏しさがこの作品ならではの個性ってのを生成しきれていない印象も。
まぁ、その印象を強めた一因が『フライト・ゲーム』『96時間/レクイエム』のリーアム・ニーソンにあるのかと。酒びたりの末にやらかしてしまった過去を引きずる主人公役はピッタリだし、むやみやたらと振りかざさない静かな正義感や強さと弱さを兼ね備えてる様もリーアムならでは。ただ、その“リーアムらしさ”ってのが本作を“最近のリーアム映画”ってジャンルに埋もれさせてしまい、マット・スカダー作品ってのを薄めさせちゃったのかなぁと。逆を言えば、リーアム映画を求める分には不満もない作品ってことにもなりますけど。
そんなリーアム・ニーソンと『ラン・オールナイト』でも共演していたボイド・ホルブルックや、『靴職人と魔法のミシン』のダン・スティーヴンス、『イコライザー』のデヴィッド・ハーパー、物語に良い感じの変化と弾みをもたらしていた相方役のアストロなんかも悪くなかった一本で。

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安心感も善し悪しかと

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2015年11月09日

料理長(シェフ)殿、ご用心 (Who Is Killing the Great Chefs of Europe?)

監督 テッド・コチェフ 主演 ジョージ・シーガル
1978年 アメリカ/イタリア/フランス/西ドイツ映画 112分 サスペンス 採点★★★

独身の頃は、「あそこの店、美味しいよ〜」と聞けば気軽に食べに行ってたもので。味や香りに苦手なものが少ないので、どこの国の料理であろうがホント気軽に。ただまぁ、結婚して子供が親の数を超えた今はそう簡単に外食が出来なくなっちゃいましたねぇ。味よりも値段と量重視。そんなんだから、田舎者にとっては見たことも聞いたこともない街のお店を紹介するグルメ番組なんて、まったくもって他人事なんですよねぇ。

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【ストーリー】
料理雑誌の出版社を経営し自身も大の美食家であるマックスが選出した“世界一の料理人4傑”。しかし、その選ばれた料理人が、それぞれ得意とする料理の調理法に倣った方法で殺されていく。その4人に選ばれたパティシエのナターシャは、元夫のロビーと共に犯人探しを始めるが…。

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ランボー』『地獄の7人』とゴツゴツした作品ばかり撮ってる印象が強いが、本作でも主演したジョージ・シーガルの『おかしな泥棒ディック&ジェーン』や『バーニーズ/あぶない!?ウィークエンド』など、洒落ながらも多少ドタバタしたコメディにも才を発揮するテッド・コチェフによるミステリー・コメディ。
オーブンで丸焼きにされたり圧搾機で頭を潰されたりと殺害方法こそはかなり猟奇的だが、作品自体は洒落たコメディに仕上がっている本作。丸焼きの死体を前に「こんなに焦がす料理人がいるわけない」と言ってみたり、被害者=認められた料理人ってことになるんで死ぬ名誉を選ぶか無視される恥辱を選ぶか悩んだりと、独特なユーモアセンスも魅力。ミステリーとしてはちょいと粗すぎるが、想定内からほんのちょっとズレた所に犯人を設定したりする、サクっと楽しむには丁度いいさじ加減も良い感じ。一般人の口にまず入ることのない料理を芸術や文化として尊ぶマックスと、そんなマックスに忌み嫌われる低価格フランチャイズ店ばかりオープンさせるロビーとの対比もなかなか面白い。ちょっと憂鬱な気分にさせておいてからライトに戻すオチの丁度良さもなかなか。
そしてなによりも、登場する料理がなんとも美味そう。この辺は料理人一家に育ったテッド・コチェフのこだわりなんでしょうけど、ダイエット中や深夜に観るのは非常に危険な食欲促進映画に。

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そんな料理の数々以上に目を奪われるのが、『ドミノ』のジャクリーン・ビセットの美貌。さすがに『ザ・ディープ』の水濡れスケスケ白Tシャツほどのインパクトはないが、全体的に紗のかかった映像によりその美貌の際立つことったら。
その他、マックスに扮したロバート・モーレイや、『オリエント急行殺人事件』のジャン=ピエール・カッセル、『ニュー・シネマ・パラダイス』のフィリップ・ノワレ、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』のジョス・アックランドといった、贅沢気分味わえる料理やロケ地に負けない欧州役者の顔触れも魅力だった一本。
ちょいと話はズレますが、私の世代にとってはTVの映画番組の恒例プログラムだった本作。今回も鑑賞中、滝口順平や鈴木弘子の声が脳内で自動再生されたりも。ただ、残念ながらDVDには日本語吹替えは収録されておらず。確かに、吹替え版のビデオが出てない作品の吹替え音源を捜すのは大変な作業だと思うんですよねぇ。権利が切れてれば放送局は処分してしまってるケースも多いでしょうし、新録するには金が掛かり過ぎる。まぁ、ユーザーの勝手気ままな要望でしかないんですけど、洋画劇場の雰囲気をもう一度楽しみたいってジャンルの作品も少なくないんで、当時の録画テープを持ってる人を探し出して音を拾い起すとか、そんな努力もして欲しかったなぁと。決して安い価格設定でもないんですし。

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食い気も色気も手の届かない所に

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2015年11月06日

ヘッドハンター (Hodejegerne)

監督 モルテン・ティルドゥム 主演 アクセル・ヘニー
2011年 ノルウェー/スウェーデン/デンマーク/ドイツ映画 100分 サスペンス 採点★★★

なにやら若者の恋愛離れってのが深刻だとか。興味がないとか気の合う仲間と一緒にいた方が良いとか、はたまた面倒くさいとやらのもっともらしい理由を挙げてるようですけど、要はフラれて傷つきたくないだけなんでしょうねぇ。最近の“フリ方”にも問題あるよなぁってのはいずれ触れるとして、こういう方々に対し「高望みし過ぎ!」って声もチラホラと。ただ、フラれ続けて数十年の私からすると「高望みしなさ過ぎ!」って印象があるんですよねぇ。「望めば大統領にでもなれる!」みたいな夢と希望の大安売りはどうかと思いますが、恋愛にしろ仕事にしろ生活環境にしろ、多少背伸びすることで得れることが多いと思うんですよねぇ。もともとダメ元なんですし。

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【ストーリー】
有能なヘッドハンターであるロジャーは、その低い身長を除けば美しい妻を持ち豪邸で暮らす誰もが羨む生活を送ってるように見えた。しかし、妻の気持ちを繋ぎ止めその生活を維持する為、彼は顧客の情報を巧みに利用して高級絵画を盗み出す絵画泥棒としての裏の顔を持っていた。そんなある日、新顧客である精密機器メーカーの元重役クラスの持つ絵画を盗み出したロジャーであったが、それをきっかけに命を狙われるようになり…。

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ジョー・ネスボによるベストセラーミステリー“ヘッドハンターズ”を、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のモルテン・ティルドゥムが映画化したクライム・サスペンス。クリスチャン・スレイター扮するヘッドハンターが顧客を執拗に追いかける同名映画と立場を逆にしただけのような気がしないでもないが、一応別作品で。
先の読めない展開に一種の心地よい翻弄を味わえる本作。冷静に考えれば、“A社に入社し企業秘密を盗み出したい→じゃぁヘッドハントされよう!→興味を持ってもらうためにそいつの妻に近付こう”までは分かるとしても、“妻に手を出したのバレて仕事紹介してくんね→殺そう!”の流れがいささか乱暴過ぎるし、愛人絡みの話など詳細に描いてないことを良いことに力づくでまとめ上げてる感も拭えないんですが、細かい伏線をあれよあれよと回収しつつ、一番説得力のある着地点に難なく着陸する手際の良さは見事。小説ならではの面白さを残しつつ、映画的なダイナミックさとスピード感を損なわなかった良い例のひとつなのかと。顔面陥没、犬串刺し、全身ウ○コ塗れと、要所要所にビックリするシーンを挟み込んでるのも良いスパイスに。
また、身長も含め色々と身の丈に合ってない生活を手にしてしまった男の悲哀劇としても面白い。妻を失いたくない一心で罪と嘘を重ねていく主人公の姿は、痛々しくもありつつその気持ちが理解できなくもなかったなぁと。

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主人公のロジャーに扮したのは、『30アサルト 英国特殊部隊』『ヘラクレス』のアクセル・ヘニー(168cm)。ぱっと見スティーヴ・ブシェミに見えちゃう瞬間こそ多々でございましたが、それが高級車に高級装飾品、豪邸に美人妻を手にしてるんだから“無理してる”感並々ならず、非常に丁度いいキャスティングに。
一方のクラスに扮したのは、『MAMA』『オブリビオン』のニコライ・コスター=ワルドー。“北欧ハンサム図鑑”なるものがあれば表紙を飾りそうな彼だが、そこから漂う微妙な胡散臭さが役柄にマッチ。欲しいものは全て向こうからやって来る上に、自分の大切なものも全て持ってかれそうな男の敵役を好演。
そんなニコライ・コスター=ワルドーと並ぶと全く生活感を感じさせない、それこそ雑誌の表紙みたいだったシヌーヴ・マコディ・ルンドの、ブリジット・ニールセンから若干威圧感を抜いたような美貌を印象的。「誰もが自分に好意を持っていて、自分もそれは承知してる」ってのがぴったりハマる、典型的な美人だったなぁと。冷たさと温かさが混在した美人だったので、一時話が出たっきり止まってるハリウッド・リメイクが進むのならば、是非ともシャーリーズ・セロンにやっていただけたらと。

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背伸びの為に無理するのと無茶するのは別

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2015年11月05日

捜査官X (武侠)

監督 ピーター・チャン 主演 ドニー・イェン
2011年 香港/中国映画 115分 アクション 採点★★★

過去の積み重ねが今現在の自分を作り上げてるだけあって、変えようと思ってもそうそう変えられるものじゃないですよねぇ。理想の姿があったとしても、「まぁ、無理だから理想なんだよね」で終わっちゃうことがほとんど。ただ、着たことのない色の服を買うとか、眉毛をちょちょいと整えるとか、思い切って引っ越しするとかそんな“普段しないこと”をしてみることが案外良いきっかけになることも。まぁ、そんなきっかけの遥か手前で足踏みしてる私が言っても説得力皆無ですけど。

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【ストーリー】
1917年、中国雲南省の小さな村を訪れた二人組の強盗が、たまたま居合わせた紙職人ジンシーともみ合う内に死亡する事件が発生。この事件は正当防衛として処理され、真面目で温厚な好人物のジンシーは村の英雄として称えられる。しかし、捜査に当たっていた刑事シュウは、強盗犯は卓越した武術によって倒されたのではないかと疑問を持つ。およそ殺人を犯すようには見えないジンシーの周辺を調べていくうちに、シュウはジンシーの隠された過去を知り…。

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原題がストレートに“武侠”なのに、物語のスパイスであるミステリーを中央に据えた邦題が少々疑問に感じる、製作を務めた『孫文の義士団』に続いてドニー・イェンとコンビを組んだピーター・チャンによるカンフー・ミステリー。
ざっくりと言えば、ドニー版『ヒストリー・オブ・バイオレンス』な本作。忌まわしい過去を封印し真っ当な生活を手にするために男が耐え奮闘する様を、美しいロケーションと苛烈なアクションで描き切った一本。一般人になりきり温厚さを全面に押し出すドニーさんや、アワアワ慌てるドニーさん、タン・ウェイ扮する言いたいことを口に出せず耐える奥さんを包み込むドニーさんに、ハエすら寄せ付けぬ殺気をまとうドニーさんと、ドニー・イェンを堪能する分には全く文句のなかった作品でも。元祖片腕ドラゴンこと『炎の大捜査線』のジミー・ウォング顔役と片腕で戦うクライマックスなんて、もう燃えること間違いなし。ドラマもアクションも完全に手中に収めたドニー・イェンの見事さったら。
しかしながら、本来ドラマパートとミステリーパートを担わなければならなかった金城武の扱いがどうにも弱い印象を拭えず。キレ者捜査官としてドラマを回していくのだが、如何せん難癖レベルの推理で状況を悪化させていくだけの役割にしか感じず。ドニー・イェン同様重い過去を背負う役柄ではあるがその重さの釣り合いも取れておらず、役割が大きい分だけアンバランスさも。もう少し役割を小さくするか、迎える結末を逆にするかすれば印象が大きく変わったのかなぁとも。

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この邦題って、『ダイ・ハード』のタイトルを『巡査部長パウエル』にするのと変わらない気が

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2015年11月02日

ビッグゲーム 大統領と少年ハンター (Big Game)

監督 ヤルマリ・ヘランダー 主演 サミュエル・L・ジャクソン
2014年 フィンランド/イギリス/ドイツ映画 90分 アクション 採点★★★★

素晴らしい脚本に演出、演者の熱演に支えられた所謂“良い映画”や、娯楽のツボをしっかりと押さえた“面白い映画”、私自身のツボを刺激する“好きな映画”ってのは、レビューを書く際は案外楽なんですよねぇ。褒め所が豊富なもんで。その逆も然り。ただ、レビューを書く際に非常に悩まされるのが“嫌いになれない映画”ってやつ。特に素晴らしい個所があるわけでもなければ好きな役者が出てるわけでもなく、巷で評判が悪いのも十分理解できる代物なのに、どうやっても嫌いになれない類のやつ。そんあ高評価を付けながらもその評価の理由が浮かばない作品ってのに、数年に一度くらいは出会うんですよねぇ。

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【ストーリー】
テロリストのミサイル攻撃を受けフィンランド上空で撃墜させられた、アメリカ大統領ウィリアム・アラン・ムーアが乗るエアフォースワン。緊急脱出ポッドにより辛うじて命は助かった大統領であったが、フィンランドの山奥の森にただ一人取り残されてしまう。そこに現れたのは、一人前のハンターになるために森へ来ていた13歳のちびっ子狩人オスカリ。彼の助けで森を脱出しようとする大統領であったが、大統領狩りにテロリストも森へやって来て…。

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全裸の老人が雪原で子供を襲う異色サンタ映画『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』のヤルマリ・ヘランダーによる、極悪テロリスト相手に子供とヘタレ大統領が奮闘する様を描いたちびっ子アクションアドベンチャー。たんまりといる製作者の中には、『ジャッジ・ドレッド』のアレックス・ガーランドの名も。
フィンランド映画史上最大の予算を費やし製作されたという本作なのだが、外国人の目から見たアメリカの誇張された姿とは言えやたらと「最強!」を口にする大袈裟すぎる尊大さや、そこに至るまでは緻密な計画だったんでしょうけど、いざ実行したらやたらと大雑把な暗殺計画、大味過ぎるアクション描写に噛み合ってるとは言い難い笑いの要素。肝心なことが解決しない本作に、作り手の「ふざけてやってます!」って姿勢が全面に出ているのであれば多少納得も出来るんでしょうけど、生憎ふざけているのか真面目なのかイマイチ分かりづらいってのも困りもの。なんかもう、とても2014年の作品とは思えぬ仕上がり
この貶し所の豊富な本作なんですけど、困ったことになんとも嫌いになれない。『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』での花子顔をベースに、良い具合の“出来ない子”顔に育ったオンニ・トンミラの味わい深い顔立ちや、久々の三枚目役を演じていた『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』のサミュエル・L・ジャクソンらも、この“嫌いになれない”大きな要素の一つではあるんですが、全然それだけではない魅力に溢れていたのも事実。魅力というか魔力

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なんかこうダイ・ハード的と言うか、80年代後半から90年代前半、感覚的に言うなら88年から92年の間の雰囲気に溢れていた本作。もしかしたら、この“2014年の作品とは思えぬ”ってのが最大のポイントなのかと。ヘランダーが76年生まれだってことを踏まえると、最も影響を受けやすい年頃に観た映画の原体験、その大好きだった映画群への思い入れの全てをこの作品にぶち込んだのではないかと。ヘランダー自身が大統領役に熱望していたのがメル・ギブソンだったってのも、そう思わずにはいられない要因のひとつ。
これもまた憶測ではあるんですが、その時期に母国を離れハリウッドで大活躍したフィンランド映画界が誇る巨匠、レニー・ハーリン大先輩に対する溢れんばかりのリスペクトってのもこの作品の魅力なのではと。宵越しの金を持たぬ江戸っ子の如く湯水のように予算を使い、多少の粗をエモーショナルさすら感じるアクションでねじ伏せるハーリンスタイルが本作に漲っている気がしてならない。そう思うと、本気なのか冗談なのか分からないアクション描写の数々も、そのアクション前にいちいちキメ台詞があるのも、異常なまでに派手な爆発も、やたらと高いところから飛び降りるのも、爆発をバックに脱出ポッドで主人公らが逃げ出すのも全て納得がいく。憶測重ねで申し訳ないんですけど、尊敬する大先輩が作った『ダイ・ハード2』の後に続く作品が残念な仕上がりだったことに対する積年の思いと言うか、“俺のダイ・ハード3”が本作のベースにあるのではないのかと。プラス“俺のクリフハンガー”。
そんなヘランダーによるハーリン愛と俺イズムと俺の夢が詰まった作品を嫌いになれるわけがないので、客観的な出来云々を差し置いてでも高評価を。
あ、因みに共演には『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のレイ・スティーヴンソンや、『アルゴ』のヴィクター・ガーバー、『沈黙のSHINGEKI/進撃』のテッド・レヴィン、『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のジム・ブロードベントに、オンニのパパのヨルマ・トンミラが『レア・エクスポーツ 〜囚われのサンタクロース〜』同様今回もパパ役で。

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次はハーリンが頑張る番

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posted by たお at 11:38 | Comment(6) | TrackBack(16) | 前にも観たアレ■は行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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