監督 チャド・スタエルスキ/デヴィッド・リーチ 主演 キアヌ・リーヴス
2014年 アメリカ映画 101分 アクション 採点★★★★
映画の観方ってのは人それぞれ自由であっていいと思いますし、批判も自分の思った通りに展開すればいいと思ってる私。ただ、その作品が“何を描いてるのか?”“何を見せたいのか?”ってのだけは見誤らないように常々注意しないといけないなぁとは。なんというか、難病で死ぬ様を描いて観客を悲しませたい映画に対し「ケッ!内臓も飛び出さないのかよ!」と文句をつけたり、恋愛ものに「オッパイが足りない!」と不満を言うみたいな。一方で、オッパイ売りの作品でたまたまストーリーが良かったとしても、「
形が悪い!」と批判するのはある意味正しい鑑賞姿勢とも思いますが。
【ストーリー】
愛する妻を病で亡くし悲しみのどん底に落ちていたジョン・ウィックのもとに、失意の夫の癒しになるよう妻が用意していた子犬が届けられる。妻の愛の深さに胸を打たれるジョンであったが、ある夜、彼の車目当てに家に侵入してきたマフィアのボスの息子に襲撃され、子犬を目の前で殺されてしまう。怒りに燃えるジョンは、すぐさま復讐に立ち上がる。一方のマフィアのボスは、息子の襲撃した相手の名を知り驚愕する。ジョン・ウィックは、どんなターゲットも抹殺する伝説の殺し屋だったのだ。
『
ハートブルー』でのキアヌのスタント・ダブルでデビューして以来、数多くの作品でスタント・コーディネーターやアクション監督を務めてきたチャド・スタエルスキと、同様にベテランスタントマンであるデヴィッド・リーチが共同で初メガホンを握り描いたリベンジ・アクション。ザックリと言えば“
キアヌがガン=カタっぽいアクションを披露するセガール映画”。主人公の名を聞いたボスがあそこまでうろたえる様なんて、セガールの『
暴走特急』以来観たことなかったですし。
込み入った設定や世界観と内省的な内容のアメコミ映画がアクション映画の主流になりつつあることへの反発か、はたまた50男になると
何の躊躇もなくカッコいい自分を演じたくなるのか定かじゃありませんが、ただただ強い主人公のひたすらカッコいい姿だけを描いた本作。これまでも数多くの現場で顔を合わせてきたキアヌとチャドが、60〜70年代の日本映画や香港映画、往年のギャング映画など好きな映画の話題で盛り上がり「あんなアクションしたい!こんなアクション作りたい!」と夢を膨らませてる内に形になっていった様子が容易に想像できる、“オレたちの好きなものだけで出来てる”作品。
そんな夢と希望の塊映画を嫌いになれるわけがない。
確かに粗は多い。殺し屋協会の掟を破ればどうなるのか重々承知しているのにも拘らずあっさり破る殺し屋が居たり、友情とプロ意識との葛藤が全然描かれてなかったり、仕舞いには結局のところ
犬だったら別に何でもよかったというオチに着地したりと、真面目に考えれば首をかしげる展開が多い。しかし、本作はそんな所を観る映画ではない。そこばかりを批判するのは、食事に行ってお店自慢のメインディッシュには触れず、
お通しに対し延々文句を言ってるようなものである。本作の観るべきポイントはアクションと夢のようなヒーロー像。もうそこのみ。そこ集中。
スタントマンあがりらしい、デジタルやメカニカルに頼り過ぎず、肉体のテクニカルな部分に特化したアクションが堪能できる本作。柔術をベースにした格闘アクションや、その格闘技とガンアクションを融合させた銃撃戦、場面こそ少ないがスピード感より重量感に重きを置いたカーアクションなど、かなりハイレベルのスタント仕事が隅々に。特に格闘ガンアクションの流れるような美しさは『
リベリオン』以来だったのではと。“ボス驚愕”からのオープニングアクションの素晴らしさと、そこで貯めた貯金を使い切らずに保った勢いも見事。
また、主人公の愛車が『
フェイク シティ ある男のルール』と同じだったり、隠れ家で使ってる名前が何気に“Neo”だったりと、一緒歴の長い気の合う仲間が集まってる感が伝わってきた本作。画作りや物語自体はヘビーなはずなのに、
作り手が満面の笑顔でこっち見てる“ボクらが作りました!”感も好みだった一本で。
なにやら三部作を予定していて、既に次回作の準備に入ったとも言われる本作。下手に欲張ったり賢くなったりせずこの路線を突っ走ってくれるのならば、最後まで付き合ってみたいなぁと。
ジョン・ウィックに扮したのは、イーライ・ロスの『Knock Knock』も控えてるキアヌ・リーヴス。ヒョロリと細長くベタついた髪の毛に骸骨のような輪郭を生み出す髭面が、ブラジル当たりの骸骨キーホルダーを彷彿させ、出始めこそは「
あれ?今日のキアヌなんか気持ち悪い…」と思ってしまったが、これまでの中でも最高レベルのアクションを披露し始めると俄然輝いてくる。その骸骨感も“死神”をイメージさせ、役柄にハマってましたし。スター俳優にこう言うのもアレですが、
キアヌは本当に感情表現の乏しい役柄がハマる。
また、最後は肉弾戦を挑んでくる、なんかカート・ウィマー作品のラスボスみたいなボスに扮した『
ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のミカエル・ニクヴィストや、“マフィアのボスの息子”で思いつく全ての要素を持ち合せていたダメ息子役に“ゲーム・オブ・スローンズ”のアルフィー・アレン、“スピード”シリーズでキアヌとニアミスしていた『
グランド・ブダペスト・ホテル』のウィレム・デフォーなど、イイ顔が揃っていたのも印象的だった本作。
その他、『
世界侵略:ロサンゼルス決戦』のブリジット・モイナハンや、『
ヘラクレス』のイアン・マクシェーン、『
GAMER』のジョン・レグイザモ、『
レギオン』のエイドリアンヌ・パリッキといった何気に豪華なキャスティングも魅力。そんな中でも、WWEのレジェンドレスラーであるケビン・ナッシュと『
48時間』のデヴィッド・パトリック・ケリーを短いシーンながらも観れたのは嬉しかったなぁと。
“ペットロスには新しいペットを”って話
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