2014年 アメリカ映画 148分 サスペンス 採点★★★
時代を象徴するもの、若しくは思い起こさせるものって人それぞれですよねぇ。音楽であったり映画であったり、その当時のTV番組や文化と様々。私にとっての80年代って当時の音楽が密接に結びついているんですけど、それより前の70年代となると、また別のものだったりも。それが、日曜洋画劇場を見ていると決まって流れていたレナウンのCM。曲調自体は能天気なんですけど映像がなんとも悪夢的というか、高熱でうなされてるときに見る幻覚のような感じで、いまだにその不気味な印象だけが強烈に脳裏に。ふいにあの曲を思い出すと当時のことをまざまざと思い出すんですけど、どういうわけか悪い思い出しか思い出さないんですよねぇ。
【ストーリー】
1970年、ロサンゼルス。ヒッピーくずれの私立探偵ドックのもとに、別れた恋人のシャスタが相談にやって来る。その内容は、大富豪の不動産王ミッキー・ウルフマンと愛人である彼女を、ミッキーの妻とその浮気相手が罠に嵌めようとしているとのことであった。気の進まないドックが渋々調査を始めると、その背後に巨大な陰謀があることが判明し始め…。
トマス・ピンチョンの探偵小説“LAヴァイス”を、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソンが脚色も手掛け映画化したハードボイルド・スリラー。
音楽はもちろんのこと、ファッションや会話の内容、小道具の数々から役者の顔立ちまで、溢れ出さんばかりの70年代情報に初っ端から圧倒される本作。何も知らずに画面だけを見たら、たぶん70年代の映画と勘違いしそうなほど。時代背景、題材、ロケーションと、非常にポール・トーマス・アンダーソンらしい上に、まったりゆったりと時にユーモラスに進みながらも、画作りが異様なまでに力強いってのも彼らしい。
ロスに集うアウトサイダーの生き様を緻密に描きながら、その能天気な気候とは真逆のドロドロとした謀略と立ち向かうには強大過ぎる力を描いた本作。ハッパが効いてるが如く散漫な展開をしつつ、覚めた時というよりは最高潮に効いてる時の集中力の如く物語が急展開する緩急も心地よく、ダラけながらも長尺さを感じさせない巧い作り。しがない探偵に出来ることと出来ないことがハッキリしている、ユーモラスながらもハードボイルドな骨格を保っているのも好印象。
ただまぁ、ちょいと散漫過ぎて警察内部まではびこる悪の存在と愛人となった恋人、“固有の瑕疵”と“内なる悪”なんてテーマがボヤけてしまい、風変わりな友情物語みたいになってたのは惜しかったかなぁと。
主人公のドックに扮したのは、『ホテル・ルワンダ』のホアキン・フェニックス。すっかり壊れちゃった役者ってイメージもありましたが、そのイメージと自身のルーツでもあるヒッピー文化との相性の良さ、ファッションのハマりっぷりなどが見事に融合し、“70年代のそういう人”感が見事なまでに出ていた好演を。
また、そのドックの守護天使であり、唯一の友人であるドックに対する感情表現が独特なビッグフットに扮した『メン・イン・ブラック3』のジョシュ・ブローリンも見事で。現在のハリウッドで最も70年代が似合う役者であるので、これまたハマりまくったキャスティング。
その他、眉毛をモジャモジャにすればたぶんお父さんにソックリなのであろうキャサリン・ウォーターストンや、濃い演者に押され気味だった『デビルズ・ノット』のリース・ウィザースプーン、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のベニチオ・デル・トロ、『エンジェル ウォーズ』のジェナ・マローン、『エクスペンダブルズ』のエリック・ロバーツに、劇映画で見るのは久しぶりで嬉しかった『インナースペース』のマーティン・ショートといった錚々たる顔触れが集結。
そんな中でも、やはり『クーデター』のオーウェン・ウィルソンの存在が忘れ難し。基本いつも通りのオーウェンなんですけど、1970年代から2010年代までのどの時代でもビーチに居でボーっとしてそうなオーウェンだからこその似合いっぷりだったのかと。
聖書の時代のビーチに居ても違和感無さそう
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