2014年 タイ映画 90分 アクション 採点★★
昨年7月に急逝した『マッハ! ニュー・ジェネレーション』のパンナー・リットグライが、監督/脚本を務め最期に遺したムエタイアクション。主演には、だんだんホリプロの南田マネに見えてきてしまう『ロケットマン!』のダン・チューポンが。
ムエタイとガンアクションの融合という新しい地点を目指した気配は感じますし、遺作はあんまり貶さないって空気もあるので大人として可能な限り褒める方向で頑張ってみようかと。
【ストーリー】
潜入捜査官だった両親を幼い頃に殺され、伯父のもとで育てられていたジーとタンの兄弟。やがてジーは両親の復讐を果たすため家を飛び出し犯罪組織の暗殺者となり、一方のタンも伯父を手伝いながら鍛錬を重ねていた。そんなある日、仇の犯罪組織が彼らのもとに殺し屋を送り込み…。
真面目に褒めようとすると、「スターを夢見る若手スタントマンが身体を張って頑張ってたのが良かったです!」としか書きようのない本作。もはや我慢比べと化した苛烈なスタントが繰り広げられる格闘サッカーで幕を開け驚かされるも、それが物語にサッパリ繋がっていないどころか意味すら持っていないことにさらに驚かされる。もう、出だしからにしてこう。
で、父の元同僚の下で暗殺者として鍛錬を積む主人公ですが、特に訓練シーンがあるわけでもないまま唐突に挿入される回想シーンで父の元同僚死亡。独り立ちした主人公の仕事っぷりを、ポジティブに捉えれば『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』風のワンカット撮影で描いてますけど、カメラは主人公の足元しか映しません。最後に主人公の姿をさらして「あの主人公がこうなったんだよ!」と驚かせたかったようですけど、逆に違う人が出てきた方が驚きます。というか、これで驚くと思ったこと自体に、ワンカット撮影よりも驚かされました。
その後、結局最後まで何で絡んでるのか分からなかったヒロインが登場し、あれやこれやで大怪我を負う主人公。身体のど真ん中を太い鉄パイプが貫通してます。「あら、これで主人公が死んで弟にバトンタッチかしら?」と思いきや、突然登場する謎の中国人老師が「急所は避けてるから大丈夫!」と薬を塗りたくって治しちゃいます。これが四千年の歴史の実力ってやつでしょうか?
で、急に男女三人の微妙な三角関係的展開をしてみたり、初代プレステのようなCGをバックにアクションしてみたり、主人公らが敵ボスの返り討ちに遭う絶体絶命のピンチをなんとなく放置されて生き延びてみたりと、あまり普通の映画では見られない展開を乗り越えようやくクライマックス。やたら燃える手榴弾の爆発と両手にアサルトライフルという、なんか四半世紀前の香港映画のようです。明らかにチョウ・ユンファをイメージしたんでしょうけど、ショットガンに持ち替えた途端に大門団長になります。でもサングラスが外れると南田マネに。
そんでもって最終決戦。ヒロインを人質に取った敵ボスに手が出せず車に撥ねられ続ける南田。頑張ってるアピールが凄いですね。そんな頑張ってる南田をしり目に、弟がボスを仕留めます。銃を持ってるならもっと早めに仕留めればいいのにって思い以上に、これまで頑張ってきた主人公の苦労を台無しにする展開に愕然としました。
そんな、撮ってみたいアクションシーンだけを並べ、理屈は通っていないが辛うじて筋が通る物語を添えただけの本作。肝心のアクションシーン自体にもこれといって見どころのない残念な仕上がりではありましたが、身体を張る若手の姿勢と、タイアクション界を牽引してきた実績に敬意を表し★ひとつオマケめで。
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