1991年 アメリカ映画 111分 アクション 採点★★★
映画のメイキングやPR映像なんかで「役作りの為に密着しました!頑張ったよ!観てね!」と、実際に役柄と同じ職業を体験する話をよく聞きますよねぇ。「さすがプロだなぁ」と素直に感心したりするんですけど、考えてみれば普段の仕事でただでさえ忙しいのに、一所懸命教えたところでその仕事を生業にするわけでもなければ、次の映画を撮る頃にはただの思い出のひとつになってしまうだけの役者を預からなければならない現場の苦労も相当なもんなんだろうなぁと。職場体験の中学生を一日二日預かるのとは比べ物にならないほど気を遣うんでしょうし。
【ストーリー】
アイドル俳優からの脱皮を図っていたニック・ラングは、刑事役の役作りのために偶然TVで見かけたNY市警の刑事ジョン・モスに密着することを決める。連続殺人犯“パーティ・クラッシャー”を追っていたジョンはその為に担当を外され嫌々ながらもニックの子守を務めるが、プライバシーにもずけずけと入ってくるニックに対し我慢の限界を超え…。
ちょっと忘れられがちな気もするが、娯楽映画の消耗品化が著しく進んだ80〜90年代の象徴的な監督の一人、『張り込み』のジョン・バダムによるアクションコメディ。製作と第2班監督に『デイライト』のロブ・コーエンが。
80〜90年代に山ほど作られたバディ・アクション。性格や人種の違うコンビって組合せのみならず、犬や宇宙人といった人間ですらない相棒まで登場する、中身に然して変わりはないがバリエーションだけは豊富なジャンルと言えるかと。その相棒を、とりあえずは人間である“ハリウッド・スター”ってのに置き換えた本作。それ以上でも以下でもなし。衝突から和解に至る関係性の変移もちょっとした波風も全て定型内に収まる、バディ・アクションのお約束事のみで作られている作品で。
そんな毒にも薬にもならない本作ではありますが、つまらないかと言えばもちろんそんなことはない。お約束事を一つ一つ丁寧に撮り上げつつ、唯一の個性ともいえる“相棒がハリウッド・スター”ってのが生み出す笑いや内幕劇的な面白味を最大限に活かす、娯楽映画を知り尽くしたジョン・バダムらしい職人技が楽しめる作品に仕上がっている。何度観ても鑑賞後すぐ頭から消え去るが、その反面何度観ても面白い。何かを得たり考えさせられる映画ももちろん素晴らしいが、こういう「あー面白かった!さ、寝よ!」ってなる清涼飲料水のような映画も素晴らしいなぁとつくづく思い出させられた一本。内容はもう思い出せませんが。
イメージチェンジに苦しむニック・ラングに扮したのは、『さまよう魂たち』のマイケル・J・フォックス。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で一躍スターになるも、見た目の可愛らしさから似たような役柄ばかりが続き、アイドル脱却を図ってシリアスな役柄にも挑戦するが一定の評価こそ得れたが一般には受け入れられずに苦しんでいた、まさにドンピシャの時期だっただけにドハマリ過ぎるほどハマっていたキャスティング。他人の私生活に土足で上がりこみ、一挙一動を逐一真似、恋愛関係にまで踏み込んでくるこの役柄はある意味『ルームメイト』とかと変わらない、演じる人が違えば恐怖と殺意しか感じられない役柄なんですけど、その辺を持ち前の愛嬌で回避する様も旨いキャスティングだったなぁと。病の兆候が出始めていた時期だからか、役柄と同じ状況に置かれている破れかぶれさからか、時折目つきが非常に怖い瞬間がありましたけど。
一方の被害者役とも言えるジョン・モスに扮したのは、『ヴァンパイア/最期の聖戦』のジェームズ・ウッズ。マイケル・Jと見た目からして真逆って分かりやすさもさることながら、体温の感じられない冷酷さと人情、情けなさとタフさ、だらしなさと几帳面さという相反する役柄全てを演じ分けられるジェームズ・ウッズらしさってのが反映された、こちらも素晴らしいキャスティング。さっきまで嫌みったらしい声でヘラヘラしてたのに、瞬時に殺し屋の目になって悪党を追い詰める、そんな彼の持ち味を堪能できたのも嬉しい。
その他、『沈黙のSHINGEKI/進撃』のスティーヴ・ラングや、この当時引っ張りだこだった『運命の逆転』のアナベラ・シオラ、『リベンジ・マッチ』のLL・クール・Jに、既に子供らしい愛くるしさってのが感じられなくなってた『アフターライフ』のクリスティナ・リッチといった、なかなかの顔ぶれが揃ってるのも嬉しかった一本で。
似たようなのは山ほどあれど、同じのは一本もなし
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