2014年 オーストラリア映画 97分 SF 採点★★★★
様々な局面で様々な選択をしてきた結果が今の自分と状況を作り上げているんですけど、振り返ってみると“やっちまった選択”ってのも少なくなし。というか、そんなんばっか。もし過去に戻れるんだったら、過去の自分にもうちょっとマシな選択を進言してやりたい気もしますが、後悔を積み重ねた“今の自分”と難を逃れ続けた“理想の自分”とでは、圧倒的に後者の方がアホっぽいので、たぶん余計な進言はしないんだろうなぁと。そもそも誰かの意見を素直に聞くような人間でもありませんし。
【ストーリー】
女性として生まれ孤児院で育ったジェーンは、成長し最愛の男性と出会い彼との子を宿すが、突然の別れと彼女自身の得意な体質ゆえ、出産後男性として生きることを余儀なくされてしまう。更に生まれたばかりの子供を何者かに誘拐され、ジェーンは絶望のどん底を生きていた。そんなジェーンの壮絶な身の上話を聞いていたバーテンダーは、彼女に復讐のチャンスを与えることを約束し、二人で7年前へとタイムスリップをするのだが…。
ロバート・A・ハインラインの短編“輪廻の蛇”を、『アンデッド』のスピエリッグ兄弟が脚色/監督を務めて映像化したSFサスペンス。
奇抜な状況設定と凝った構図のアクションが魅力の反面、そこに頼りっきりの印象もあるスピエリッグ兄弟なんですけど、今回は原作そのものが超絶に奇抜なだけあってジックリと物語を描くことに集中した感のある一本。冷静に考えれば「じゃぁ、最初の○○はどうやって産まれたの?」とか、爆弾魔の○○はどの時点からやって来たのか/居続けたのかとか、あれやこれや所謂パラドックス的な問題が目に付いてしまうんですけど、そこが逆に細かなルールに縛られ過ぎないSF全盛期の面白さってのを生み出している。
一発ネタでもあるので物語に触れれば全部ネタバレになっちゃうので控えさせてもらいますけど、“選択と宿命”ってのをベースにしながらも、その背後に全てを見通している神/悪魔の如き上司の存在があるので、どう足掻こうが逃れられないというか仕組まれているかのような不条理感が漂っているのも好みだった一本で。
主演は『デイブレイカー』に続いてスピエリッグ兄弟作品への参加となったイーサン・ホーク。いっつもイーサン・ホークについて「卑屈な眼差しが堪らん!」と絶賛させてもらってるんですけど、今回もそう絶賛せざるを得ない卑屈さ。充分過ぎるほどハンサムなのに、奥底に恨み辛みがパンパンに詰まった、そして常人なら見ることのないものをウンザリするほど見つめてきたかのような眼差しが、まさにこの物語にピッタリの完璧キャスティング。
ただ、このイーサン・ホーク以上に本作の顔となっているのが、オーストラリアの新進女優セーラ・スヌーク。複雑過ぎるにも程がある役柄をこなした地力もさることながら、ちょいとガービッジのシャーリー・マンソンを髣髴させる、劣等感とプライドと怒りと妬みと困惑が入り混じり、局面毎に違う顔を出してくるその表情の素晴らしさたるや。ちょいと今後に期待したくなる女優の一人で。
その他、全部を見透かしているような気持ちの悪さが絶妙だった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のノア・テイラーなんかも印象的だった一本で。
自分だったら「まぁ色々あるけど頑張ってね」くらいしか言えないなぁ
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