2015年06月29日

マッドマックス 怒りのデス・ロード (Mad Max: Fury Road)

監督 ジョージ・ミラー 主演 トム・ハーディ
2015年 オーストラリア/アメリカ映画 120分 アクション 採点★★★★★

“マッドマックス”シリーズの第4弾として2003年頃からプロジェクトがスタートするも、ロケ地ナミビアの情勢不安定による治安の悪化や、当然の如く主演を予定されていたメル・ギブソンの『パッション』製作やその後の情緒不安による人気の悪化などから、プロジェクトは静かにフェードアウト。それがまさかの再始動を始めたってニュースが流れたのが数年前。ただまぁ、正直なところその時点では全く期待してなかったんですよねぇ。前作の『マッドマックス/サンダードーム』があんまりにもアレでしたし、確かに『ベイブ/都会へ行く』はファミリー映画らしからぬ狂った傑作でしたけど、ファミリー映画に大きくシフトしたジョージ・ミラーがあの狂いに狂った世界を異常なテンションでフィルムに焼き付けることが出来るのかって疑問もありましたし。そもそも、滅菌されたエンタメ作品ばかりとなった21世紀のメインストリームで、それが許されるのかって不安も大きく。

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【ストーリー】
核戦争により文明が破壊され、尽きかけている資源を巡り幾多もの武装集団が争いを続ける世界。家族を守れなかった罪悪感に苛まれる元警官マックスは、独裁者イモータン・ジョーを神の如く崇めるカルト武装集団に捕まり、彼らの輸血袋として利用される。そんな中、ジョーの右腕であり戦闘員“ウォーボーイズ”のリーダー格である女戦士フュリオサが彼の妻5人を連れ逃亡。ジョーは総動員での追跡を開始する。この苛烈な追跡劇に巻き込まれてしまったマックスは…。

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そんな不安や心配など全く無意味だった本作。
と言うか、ヤバイ。面白すぎる。鑑賞後サブタレ用にレビューを書こうとPCの前に座るも、興奮し過ぎて何から書いたらいいかサッパリ浮かばず、何時間も足掻いている内に全てのシーンを全部文字に起こしちゃうか「スゲー!スゲー!」と書いて終わりにしちゃうかってとこまで追い込まれ、それじゃあんまりなんで一晩置いて冷静になろうと寝て起きるも、やっぱり興奮冷めやらず。なので、大まかな構成も着地点も全く決めていない、いつも以上に支離滅裂なレビューになってしまうことを予め宣言。勘弁してくだされ
客観的に作品を評価する際の基準となる完成度や所謂芸術性なんてものを度外視すると、映画館での映画体験でこれだけの興奮を味わえたのは、大げさな話ではなく子供の頃観た『地獄の黙示録』のヘリ襲撃のシーン以来なのでは。てか、追う/追われるの立場は逆だけど、ジョージ・ミラーがコンラッドの『闇の奥』を映画化したらこうなるんじゃないのか。
理屈や屁理屈、常識や非常識がゴチャゴチャと混じり合った、普段の日常とはまるで別の世界に突然強制的に放り込まれる感覚を存分に味わえる本作。目を覚ましたら、そこはさっきまで寝ていたはずのベッドの上ではなく、何処かもわからぬ砂漠のど真ん中に居る上に白塗りの武装集団に囲まれてる。もしそうなったらスゲェ驚くだろうし混乱もするんでしょうけど、それに近い感覚を久々に味わえたのがこの映画。観ているこっちの何かを狂わせてしまう、そんな力に満ち溢れていた作品。
普段見ることなど絶対に出来ない“なんかスゲェもの”を見せるのが映画の原点であるってのを思い出させられたのと同時に、それによって自分自身の映画原体験にある興奮をも思い出させられたかのような一本で。

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『マッドマックス2』のリブートとかリ・イマジネーションのような趣がある本作。あの作品は数多くのフォロワーを生み出しただけではなく、崩壊した世界のイメージを決定付けたって意味でもいまだに影響力が強い作品でも。そんな世界を生みの親であるジョージ・ミラーが再び描き出すってのにワクワクさせられる一方で、完成された雛形にスッポリと収まってしまっているのではって危惧を感じたのも事実。ライブアクションの現場から長らく離れているってのもそう思わせた要因のひとつであるし、そもそも21世紀にあれがまた作れるのかって疑問も。つうか、70歳にもなればいい加減枯れてるだろうって思いも。
ところが、蓋を開けてみればそこに描かれているのは狂いに狂った狂乱の世界。
スクリーンの中心に据えれば物理的な大きさ以上の存在感の大きさと共に、“主役”としての風格を漂わせた巨大トラック“ウォー・マシン”を筆頭に、全体に金属のトゲを生やしたりショベルカーをそのまんま乗っけたりするデザインの大いに狂った車の数々だけではなく、中世の軍楽隊の如き大太鼓軍団を背にダブルネックのギター(しかもネックの先から炎を噴上げる!!)をかき鳴らし続ける盲目のギター魔人や、放射能の影響か、身体のどこかが肥大してるか退化している人間デザインまでもが狂ってる。どこか『デューン/砂の惑星』の男爵家の面々を思い起こさせる人間デザインの中でも、吹き出物に覆われ爛れ切った皮膚を隆々の筋肉を模した鎧で包み、威圧感と恐怖心を与えるにも程がある呼吸器で顔を覆う、『マッドマックス』のトーカッターことヒュー・キース=バーンが扮したイモータン・ジョーのデザインなんて、醜く奇怪で恐ろしいのに、一瞬「美しい」と思えてしまうほど秀逸
また、汚染されていない赤子を作り出すために集められた花嫁たちが閉じ込められてる“赤子工場”や、ひたすら母乳を搾乳され続けるだけの“母乳牧場”など、その世界の異常さを一発で観客に飲み込ませるイカした施設の数々にも圧倒される。

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もちろんビジュアル面の上っ面だけでは終わっていないのも、本作を特別なものへとのし上げた要因。見た目インパクトだけでも十分なウォーボーイズの連中は、単なる凶暴な暴走集団としてのみ描かれているのではない。彼らの願いは戦いの中で栄光の死を遂げ、その活躍を神の如き存在イモータン・ジョーに認められることによって過去の英雄たちの仲間入りをすることだ。それだけなら単なるカルトで終わってしまうし、イモータン・ジョーの存在自体も安っぽいものへと成り下がってしまうのだが、本作はそこに“汚染された土地に生まれたが故に短命”という決定的な要素を付け加えることで、彼らの行動が単なる悪ふざけではなく必然であることを印象付けている。それによって、ジョーもただの狂人や独裁者なんかではなく“部族の酋長”としての貫禄と大きな存在感が生まれているし、ウォーボーイズが死ぬために戦うという相手にするには一番面倒くさい存在として恐怖感を生み出している。
また、それだけでもやはり同じ顔した無個性の恐ろしい集団ってなってしまいそうなところを、『X-MEN:フューチャー&パスト』のニコラス・ホルト扮するニュークスを書き加え、彼にちょいとネジのずれたロマンスを含め多くのドラマを持たせることで“ウォーボーイズ”という部族がさまざまな個性の集合体であることを印象付けるのに成功している。
これらのビジュアルと世界観を、衰えの全く伺えないあの独特な荒々しいカメラワークと演出で描ききったジョージ・ミラー。なんかもう、『マッドマックス2』直後に昏睡状態に陥り、つい最近目覚めたかのようなエネルギッシュっぷりとカオスっぷりに大いに驚かされた次第で。

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狂気に満ち満ちた世界観とネジのぶっ飛んだビジュアルの話ばかりをダラダラと書き連ねてしまいましたが、マッドマックスの醍醐味といえばやはり度肝を抜かれるカーアクション。ただ、こればかりは「度肝を抜かれますよ、はい」としか書きようがない。それか「ブォーンブォーン!ガガーン!ドドガーン!」と延々と書き続けるか
個人的には、ジョージ・ミラーって職人に徹することも出来るけど、本質的には自分の思い描いたイメージを実現するためには、密林をナパームで焼き払うこともジャングルの奥地に巨大な蒸気船を運ぶことも辞さない、狂気に取り付かれた作家のマイルド版だと思ってるんですよねぇ。今回はその狂ってる部分が存分に前に出た印象が。
今の時代、CGIを使えば自分のイメージをそのまま画にすることも可能だし、そもそもロケに行く必要すらない。ところがミラーは、一貫してナミビアにこだわり続けたし、ライブアクションにこだわり続けた。もちろん本作にもCGIは活用されている。砦の景観や地獄のような砂嵐なんてのは、まさにそれ。ただ、アクションに関して言えば、CGIは何かを付け加えたり消したりする補助的な使い方こそされているが、そのほとんどはライブアクションだ。
生意気にも常々CGIを多用しすぎる風潮に苦言を呈してきた私。でも正直なところ「なんかイヤ」って以外明確な理由が思い浮かばなかったんですけど、本作を観てちょっとだけ分かった気がする。カメラが収めた素材を加工し、技術的にも物理的にも不可能なことを可能にするCGIによる映像は、迫力に関して言えば場合によってはライブアクション以上なのは確か。如何様にもアレンジできるし、何度でも寸分違わず再現も出来る。ただ、この“再現が出来る”ってのに何と言うか…“熱”が感じられない。一方、ライブアクションでは車がクラッシュした時に立ち上る砂埃や飛び散るパーツ、同様に舞い上がるスタントマンの身体の動きなどは、撮るテイク毎に違う。100%同じものは二度と出ない。『マッドマックス2』を観た人は思い出してもらいたいんですが、あの数々のクラッシュシーンをもう一度同じに再現しろと言われたら、あともう何人スタントマンが死ぬか分からないし、死んだところで再現は出来ない。その二度とない瞬間をフィルムに焼き付けた映像にこそ“熱”を感じる。そういう意味では、その場所のその瞬間でしか撮れない一瞬を収めた本作は本当に“熱い”一本だったなぁと。

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ちょっと他のレビューやコメントを全く見ていないので断言はしかねるんですが、過去作が神格化されているだけにアレコレ比較して腐す、所謂“原作原理主義”の方々も居られるのかと。そして、その話題の中心となるのは、『ダークナイト ライジング』のトム・ハーディ扮する新マックスなのでは。
確かに今回のマックスは、別に物語を背負っているわけでも牽引するわけでもない。家族を失ったというトラウマを背負っている設定だが、その事実を知ってるのは本人と観客のみで、映画内の住人は誰も知らない。と言うか、名前も何も知らない。タイトルにまでなってる主人公のはずなのだが、“ない”と言えば極端すぎるが、その場に居る必然性は極めて薄い。
一方、『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』のシャーリーズ・セロン扮するフュリオサは常に物語の中心に居て、全てを背負い全てを牽引する。“女版マックス”というか、『マッドフュリオサ』ってタイトルでもおかしくないほど役割が主役。最後に片目になるのもこっちですし
ただ、振り返ってみれば『マッドマックス2』のマックスも似たようなもので、基本的に生き残るための自分本位の行動しか取らないマックスが大事に巻き込まれ、僅かに残っていた正義感を燃やした結果、そこの住人たちの世界が大きく変わる。その住人たちにとっては何者なのかさっぱり分からない、過去から現れた亡霊のような人物の行動が偉業として語り継がれ伝説となるが、当の本人にとっては必死に日々生き残る中での1エピソードに過ぎない。そんなヒーローでもなければアウトローでもない、サバイバー兼風来坊なマックス像ってのがしっかり受け継がれていたのは嬉しいなぁと。
まぁ、フュリオサが強烈過ぎて若干マックスが押され気味だったってのも確かにありますが、その辺はアナウンスはされてる次回作“Mad Max: The Wasteland”で挽回してくれるんじゃないかと期待。予定キャストにシャーリーズ・セロンがいる分、より一層『マッドフュリオサ』になる可能性もありますけど、それはそれで楽しみですし。

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で、こんだけダラダラと長いレビューを書いておきながら最後に愚痴ってのもアレなんですが、気になってしまったのは仕方がないので可能な限り手短に。
今回鑑賞したのは2Dの字幕版。基本的に吹替版は観ませんし、観ていないものなので断言はしかねるんですけど、相変わらず作品の世界観もキャラクターの性質もなにもかにもを考えない、実力度外視&作品愛ゼロのキャスティングがなされてしまっているようで。マックスのセリフが非常に少ないってのが救いなのかも知れませんが、子供らが以前見ていたTVドラマでの様子を見る限りは、喋る度に場が学芸会へと変貌しちゃうのが容易に予想が出来る気も。マックスが鼻声で「やっべーなぁ」とか言ってる様を想像すると、正直鳥肌立ちますし。
ただまぁ、力ある事務所のそれなりに名前の知られたタレントを声優として使うってのは、ビジネスとしては理解できなくもない。ワイドショーなんかが扱ってくれれば、高いCM枠に大金を払うよりも多くの宣伝効果を得れるでしょうし、タレント側もスターの仲間入りしたような気分を味わえてWin-Winの関係になるんでしょうし。そのWin-Winの関係には作品も観客も入っていないってのや、字幕にしろ吹替にしろ、映画の面白さをきちんと観客に伝えるって本来の職務からはかけ離れているって問題もありますが、まだ辛うじて観客には字幕/吹替の選択肢が残されている分マシなのかと。
それよりも、なんなんだあのエンディング曲は?
以前の記事でも書かせてもらったんですけど、あくまで予告編のみのイメージ曲かと思いきや、本来のエンディング曲を強制的にフェードアウトさせてぶち込んできやがる。“怒りのデス・ロード”の“怒り”ってのはこのことなのかい?ファンも少なからずいるんでしょうから曲そのものにはもう触れませんが、いつまでこんなことを繰り返すつもりなんでしょうねぇ。
“日本の映画鑑賞人口が減っている”ってニュースが先頃流れましたけど、厳しい言い方ですけど当たり前ですよねぇ。だって、観客を増やすにしろ作品の面白さを伝えるにしろ、その努力と方法が全て間違ってるんですから。「少なくても作品はキミらの物じゃないんだから、もっと大切に扱え!」と怒ったところで、今日のサブタレ怒りのデス・ロードはこれでおしまいー!

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ワルキューレの騎行も似合いそう

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posted by たお at 12:32 | Comment(16) | TrackBack(55) | 前にも観たアレ■ま行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月27日

レビュー、さっぱり書き終わらず

ヤバイ!
すげぇ面白い!!

ちょっとバカみたいな書き出しでアレなんですけど、先日『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観に行きまして、その日以来興奮状態が続いているんでこうなっちゃってます。
で、観た直後からレビューに取り掛かってるんですが、これがさっぱり終わらない。もう3日目。
常にそうなんですけど、面白過ぎる作品に出会うと「ヤバイ!すげぇ面白い!!」しか浮かばなくなるか、あれもこれも書きたくなって終わらなくなるかのどっちか。今回は後者の方で、書いても書いても終わらず、気がついたら普段のレビューの3倍以上の長さになってるのに、未だ着地点が見つけられないという状態に。あんまり長すぎるのもアレですし、そもそも書いてることも支離滅裂なので書き終わってから削る方向で添削するつもりなんですけど、そうなると尚更いつ終わるのか分からず。このままアベンジャーズやらトムちんのハンサムスパイに突入しちゃうのもなんなので、頑張って今月中に終わらせようかと。
まぁ、ただただ長いだけで、言ってる事は「ヤバイ!すげぇ面白い!!」だけなんですけどね。

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タグ:雑記
posted by たお at 11:53 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日々のあれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月25日

ドン・ジョン (Don Jon)

監督 ジョセフ・ゴードン=レヴィット 主演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット
2013年 アメリカ映画 90分 ラブロマンス 採点★★★

「彼女が欲しい!」と言える立場にも作る立場にも居ないんでアレなんですが、もし万が一そういう状況になったら、やっぱり好きなものが共通している女性が良いですねぇ。若しくは、自分が愛してやまないものを毛嫌いしない人。また、その逆。ただまぁ、それが“映画”のこととなると幅が広過ぎて案外危険。ジャンルの違いなんかもそうなんですけど、相手の女性が「わたしムーラン・ルージュとか好きー!」って言う場合、上っ面の部分が好きなのか、ストレートとゲイの間で揺れ動いてるようなバズ・ラーマンの視点が好きなのかでその後の付き合い方が大きく変わりますし。前者の場合はろくに一緒に映画も観ない浅く短い付き合いになりそうですし、後者は後者で濃くて短い付き合いになりそうだし。

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【ストーリー】
クラブで毎晩美女をお持ち帰りするほどモテモテのジョン。そんな女性に困ることのないジョンであったが、彼にとっての“完璧なセックス”は生身の女性が相手のものではなく、ポルノのみが彼を満足させていた。そんなある夜、彼はセクシーな美女バーバラに出会い一目惚れ。見た目とは裏腹にガードが固く恋に真面目なバーバラにのめり込んでいくジョンであったが…。

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50/50 フィフティ・フィフティ』のジョセフ・ゴードン=レヴィットが、自らの脚本を長編としては初めて監督も務めて作り上げたラブコメディ。共演に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のスカーレット・ヨハンソン、『フライト・ゲーム』のジュリアン・ムーア、『21ジャンプストリート』のブリー・ラーソンらが。
見た目と中身のギャップ若しくは行動のギャップってものには、男女問わず弱いもので。不良が捨て犬に餌やってるのを目撃したり、普段男勝りの女の子が不意に見せるしおらしい仕草とか。そこによろめいて付き合い始めてもそんなシーンに出くわすのは極々稀なんですけど、たまたま当たった宝クジの興奮を味わいたいが如く、それを待ち続けてしまうんですよねぇ。一種の中毒で。
また、私もそうなんですが、自分の予想と違う行動やリアクションを取る“ちょっと変わった子”ってのにも弱いものなんですよねぇ。主導権を握ろうとしていたら知らぬうちに逆に握られてしまう状況に、なんかより一層マイルドになったソフトSM的な悦びすらあるのかも。
そんな男女関係を構築する上で陥ってしまいがちな状況や、双方の本音、そして相互理解の大切さに気づくまでの過程をポルノをモチーフに描き出した本作。テーマを浮かび上がらせるまでちょっと遠回りしすぎた感もあるし、テーマを明確にするためには仕方がなかったにしても、“ポルノはポルノ、本物は本物”と両立させたい派の私としては、“ポルノ=独りよがり”とバッサリいかれるのには若干納得いかないって面も。それでも、捉えるべき本質はしっかりと押さえているし、持て余す女を演じさせたらピカイチのスカーレット・ヨハンソンの使い方など役者ならではのキャラ活かしも光っていた、なかなか侮れない一本でも。
(500)日のサマー』のレヴィットを期待するとショック大な本作。ネタがネタなだけに「キーッ!下品!」と怒られる方も居られるのかも。ただ、もし「ま、描いてる本質は似たようなもんだよね」と楽しんでくれた女性が身近に居たら、もうその人と結婚しちゃえば良いんじゃないのかなと。

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こっから先は蛇足な上に結末に思い切り触れてるのでご注意を
夫と子供を事故で失ったエスターに相互理解の大切さを教わったジョンはプレイボーイからもポルノからも卒業し、エスターと共に“二人は幸せに過ごしたとさ。めでたしめでたし”的な結末を迎えるんですけど、どうもその締めくくりに違和感が。別にアップにならずとも若いお婆ちゃんみたいになってきちゃったジュリアン・ムーアとの年齢差に感じているわけではなく、逆にそこには西原理恵子のマンガだったと思うんですけど“最初の結婚は年上を選んでアレコレ学び、二回目の結婚では若い子を選んで自分が教える”的な深さってのを感じたんで良いんですけど、二人の関係はイコールじゃないのにその結末はどうなんだろうって違和感が。
確かにジョンにとってエスターから得れるものは非常に多いし、真の人間関係を味わえるって意味でも必要な存在。じゃぁ、エスターにとってはどうかと考えると、別に「若い彼氏ができてヤッホーイ!」ってわけでもないし、ジョンから何かを得れるわけでも、ジョンが家族を失った悲しみを誤魔化してくれる存在でもなさげ。そもそも“恋愛”って感情の上に成り立ってるとも思えず
“必要とされることで”とすると何か陳腐だし微妙に違うとも思うんですが、人間として大切なものに欠けていたジョンに自分の経験や考え、その肉体も含め与えることで辛うじて自分のバランスを保っているように思えるんですよねぇ。もちろんそういう上に成り立つ関係ってのは否定しませんし、“結婚”がグッドエンディングで“別れ”がバッドエンディングだとも思わないんですが、結末に至る前まではちゃんと描かれていたエスターの内面が、結末に突然無くなってしまってるかのような印象がちょいと残念だったなぁと。物憂げな眼差しが一瞬でも入ってれば、後々いろいろと考えさせられる作品になるほど印象が大きく変わったのに。
それでも、『ブギーナイツ』の時と同様にセックスの持つ様々な側面までも含めて教えてくれる、母親というか子宮そのもののような懐の深さや存在の大きさを、惚れ惚れするほどチャーミングに且つ豊かに表現してくれたジュリアン・ムーアが素晴らしい。ただベンチに座ってるだけのような小さなシーンにすら感情がある彼女の存在が、本作に非常に大きな影響を与えてたなぁと。

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関係性ってのは自ずと顔に出るもので

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posted by たお at 01:24 | Comment(4) | TrackBack(7) | 前にも観たアレ■た行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月24日

デュラン・デュラン/プレッシャー・オフ (Duran Duran / Pressure Off)

相変わらずロックスミス漬けのたおです。
最近じゃ、映画観ている時間より圧倒的にギター弾いてる時間の方が長いので、すっかり左手の指がカッチカチでございます。キーボードを叩くと、左側だけカチカチと乾いた音を出しております。
まぁ、別にギターが物凄く巧くなりたいとかって訳じゃなく、好きな曲を存分に弾きこなしたいって願望からハマってるので、もっぱらデュラン・デュランとキュアーばっか弾いてるんですが。

そのデュラン・デュラン繋がりでなんですけど、先日彼らからアナウンスされた今年の9月リリース予定であるニューアルバム『Paper Gods』から、ジャネール・モネイと本作のプロデューサーでもあるナイル・ロジャースが参加した第一弾シングルをペタリと。
因みにアルバムの方には元レッチリのジョン・フルシアンテや、どういう繋がりかリンジー・ローハンも参加。また、オフィシャルサイトをよくよく読んでみると、ジャケットデザインのクリエイティブ・プロデューサーとして『ビッグ・ヒット』のチャイナ・チャウの名前も。「なんだい?久しく見ない内にデザイナーにでもなったのかい?」と調べてみると、今回のやつに関しては別の人のイラストをちょちょいと切り貼りして、「ホラ!なんかイイでしょ?」って感じの仕事みたい。相変わらずいかがわしい女ですねぇ。

【Duran Duran - Pressure Off feat. Janelle Monáe and Nile Rodgers [AUDIO]】


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タグ:音楽
posted by たお at 13:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽のあれこれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月22日

スパイ・レジェンド (The November Man)

監督 ロジャー・ドナルドソン 主演 ピアース・ブロスナン
2014年 アメリカ/イギリス映画 108分 アクション 採点★★★

陰ではどうなのか知りませんが、表立ってのあだ名ってのを付けられた事がない私。そのせいか、ちょっとあだ名に憧れのようなものも。“メガネおにぎり”とか“一人バナナマン”とかはさすがにイヤですけど、“死神”とか呼ばれるのはちょっといいなぁと。でもまぁ、こんな平和な国で“死神”と呼ばれる人って、大概は痩せぎすで辛気臭いなんか死んでるっぽい人に対してなので、やっぱヤダ。

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【ストーリー】
“ノーベンバー・マン”と呼ばれていた伝説的なCIAのスパイ、ピーター・デヴェローは、愛していた女性ナタリーの危機を知りモスクワへと飛ぶ。しかし、彼女はピーターの目の前でかつての弟子メイソンによって殺されてしまう。ナタリーが持っていた情報を元にアリスという女性に出会ったピーターは、やがてチェチェン紛争にまつわる米露の陰謀に巻き込まれていき…。

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あんな辛気臭い連作になってしまうくらいなら、もうちょっとこの人のジェームズ・ボンドを観続けていたかったワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』のピアース・ブロスナンが、自ら製作総指揮も兼ねて主演したビル・グレンジャーのスパイ小説シリーズを映画化したサスペンスアクション。メガホンを握ったのは、『ハングリー・ラビット』のロジャー・ドナルドソン。
二大国家の陰謀に伝説的スパイと美女が巻き込まれるという、なんか久しぶりに直球ど真ん中なスパイ活劇だった本作。そこに“荒ぶる初老男”やら“師匠と弟子”って要素をぶち込み、ロジャー・ドナルドソンらしい非常に手堅い演出で楽しませてくれた一本。
「次期ロシア大統領の弱み握っておけば楽勝じゃね?」って如何にもCIAらしい陰謀がベースになるのだが、そのCIAもチェチェンでの自作自演テロに加担しちゃってるからお互い様で弱みになってなかったり、大統領候補が弱みのネタになる写真を後生大事に取ってたり、あれもこれも粗だらけというか粗でしか出来ていないような脚本には多少辟易させられもするが、王道スパイ活劇としての雰囲気だけは十分なので多少目をつぶれば不満も少なし。

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やっぱり本作を楽しませてくれた最大の要因は、ピアース・ブロスナンが持つボンドイメージなんでしょうねぇ。ボンドに比べればかなり荒々しいんですけど、人間味や力強さをボンドに求めてたのならこのピアースでも全然いけたのではと。
また、元弟子のメイソンに扮したのは、『ハートブルー』のリメイク“Point Break”の公開が控えているルーク・ブレイシー。見ようによってはショーン・ビーンに似ていなくもないので、いくら頑張っても007に敵わない006の物語に見えてきたりするお楽しみも。
その他、『007/慰めの報酬』では水着にすらならないボンドガールとして大いに失望させられましたが、今回もその抜群のスタイルを活かして私の鼻の下を存分に伸ばしてくれたオルガ・キュリレンコや、黒幕にしてはちょっと悪人っぷりもエセ善人っぷりも中途半端だった『テッド』のというか、やっぱり“ミレニアム”のビル・スミトロヴィッチ、疑いが晴れると同時に画面から消えちゃう『クロッシング』のウィル・パットンなど、好みの顔ぶれが揃ってるのも嬉しい。
それにしても、“奴が通った後に、生き残ったものはいない”からノーベンバー・マンと呼ばれる主人公。なんかセガールの『グリマーマン』みたいなそのあだ名の由来はめちゃくちゃカッコイイんですけど、「地味目な祝日がちょっとある以外なんの特徴もない11月なのに?」と疑問に思い調べてみたら、欧米では11月は死をイメージさせるそうで。日本だったら驚くほど何の特徴もない地味な人に付ける、可能な限り派手なあだ名って感じなのにと、「文化が違うといろいろ違うネー!」と驚きましたよってことでオシマイ。

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まだまだ若い衆には譲れないポジション

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2015年06月21日

【予告編】ウィル・フェレル&マーク・ウォールバーグ “Daddy's Home”

父の日ですねぇ。いちおう私も父親なんで子供らが何かしら仕掛けてくるのかと思いきや、長男は学校の日ならまず起きない早朝から「トモダチと遊ぶのー!」とどっかへ出掛け、5歳の末っ子は録り溜めしていたヒーロー物を絶賛鑑賞中。で、中3の長女は爆睡中と、どうやら今日が父の日だってのを忘れてるようで。ちぇ

まぁ、そんな父の日だからってわけではないんですけど、ウィル・フェレル&マーク・ウォールバーグの『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』コンビで現在撮影中のお父さん映画の予告編をペタリと。
妻の連れ子を巡ってフェレルと実の父親であるマークが、“どっちが良い父親か?”を争うファミリーコメディのようですけど、予告編を見る限りフェレルもマーク・ウォールバーグもファミリーコメディの枠を軽く飛び越えちゃってる感じが素敵。
監督は『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』など、監督/脚本家としてコメディを多く手掛けるショーン・アンダースとジョン・モリスのコンビ。本国では今年のクリスマスに公開予定だとか。日本での劇場公開は全く期待できませんが、せめてソフトだけは出て欲しいなぁと。“俺たちダディーズ”とかなんか変なタイトルにされそうですけど。つうか、いつまで“俺たち〜”で引っ張るのか逆に期待

【Daddy's Home Movie - Official Trailer】


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タグ:予告編
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2015年06月19日

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (Captain America: The Winter Soldier)

監督 アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ 主演 クリス・エヴァンス
2014年 アメリカ映画 136分 アクション 採点★★★★

社内で何かしらのプロジェクトチームを作る時や、お店のバイトリーダーなんかを決める時って、ついつい仕事の能力のみを重視して決めちゃいがちですよねぇ。あとは声のでかい人とかアピールに余念がない人とかも。ただ、そういう能力のある良いプレーヤーが良いリーダーやマネージャーになるかっていうと、案外そうとも限らず。最終的に良い結果が出たとしても、それはリーダーとなった人がプレーヤーとして人一倍頑張っただけの結果であって、チームが生み出した結果じゃなかったりしますしね。

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【ストーリー】
シールドが進める“インサイト計画”。それは強力な武力により如何なる敵に対しても先制攻撃を行える一方で、全人類の脅威ともなりうる計画であった。その計画に賛同しつつも違和感を感じたフューリー長官は極秘裏に調査を始めるが、何者かによって襲撃されてしまう。シールドが危険な状態にあることを知ったキャプテン・アメリカとブラック・ウィドウも調査を始めるが、危険人物としてシールドに追われる身となった上に、謎の暗殺者ウィンター・ソルジャーにも命を狙われ…。

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キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』の続編で、“マーベル・シネマティック・ユニバース ”としては9作目にあたるヒーローアクション。今回メガホンを握るのは、『トラブル・マリッジ カレと私とデュプリーの場合』のルッソ兄弟。また意外な人選で。
歩く軍需産業であるアイアンマンや、その気になれば月すら壊せそうな異次元的パワーの持ち主ハルク、神様のソーと並ぶとヒーローとしてもアベンジャーズのリーダーとしても影の薄いキャプテンアメリカ。超人的なパワーの持ち主ではあるが、結構生身の人間が彼同等の活躍しちゃったりも。ただ、そのインパクトの弱さは彼最大の能力を“力”と見た場合のこと。彼の特筆すべき能力は“超人的なパワー”ではなく、“超人的な真面目さ”にあるのだから。
そんなキャプテンがその本来の能力を存分に発揮する本作。今回キャプテンが戦うのは、ナチスの技術力や科学力をアメリカに取り込んだ“ペーパークリップ作戦”をベースにしたと思われる、ヒドラに侵食されたシールド。ただ、ヒドラやシールドという非現実的な組織を相手にしているように見えるが、実際のところ自由と平和を守るために構築された強力な武力がそれを扱う人間によっていとも簡単に守るべき人々にとっての脅威となる恐怖や、スノーデンによって暴露された監視システム“プリズム”など、今現実に起きている脅威が相手。その現実問題に対しキャプテンが“真面目”を武器に立ち向かうという、現実的なテーマとヒーローの融合が面白い。良きアメリカの象徴であるキャプテンが、現在のアメリカと戦うって構図も非常に興味深いですし。
政治的スリラーとヒーローアクションの融合が見事だった本作は、『アベンジャーズ』以降の関連作では一番の面白さを持ってた一本。タイトルにもなってる“ウィンター・ソルジャー”が、その悲壮感漂う背景も含め宙ぶらりんになってしまってるのは気になるところですけど、その辺は来年公開予定で、キャストを見る限りアベンジャーズ並みのオールスター映画になりそうな“Captain America: Civil War”で存分にやってくれるんでしょうから、それに期待。クイックシルバーとスカーレット・ウィッチやロキの杖を最後に出したりと、相変わらず引っ張るのが上手いなぁ、マーベルは。

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キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースに扮したのは、もちろん『ルーザーズ』のクリス・エヴァンス。無責任だが行動力だけはあるB型キャラが非常に似合うだけに、真面目の塊というか基本的にモラル観がお爺ちゃんのキャプテン役に正直なところ物足りなさも感じてしまうのだが、清潔感はあるしこれだけ立て続けに見ればいい加減慣れたって感じも。
一方、キャプテンとは正反対に嘘で塗り固められたブラック・ウィドウ役に、『幸せへのキセキ』のスカーレット・ヨハンセンが。持ち前のビッチ臭もさることながら、独特な寸詰まり体型を黒のピチピチコスチュームで包む絶妙な毒物感がぴったりハマってたなぁと。
また、『アベンジャーズ』以降では初登場となる『4デイズ』のサミュエル・L・ジャクソンや、見た目クリーンな政治家然とした顔立ちがピッタリだったロバート・レッドフォードなど、見た目と中身が一緒のキャプテンとは対を成す役柄を好キャスティングで彩ってたなぁと。
その他、安価なティモシー・オリファント程度のイメージしかなかったのに、髪を伸ばした途端に東欧色男へと変貌してて驚いた『レニー・ハーリン コベナント 幻魔降臨』のセバスチャン・スタンや、ちょっとあの翼が欲しくなったファルコンに扮した『崖っぷちの男』のアンソニー・マッキー、もちろん出てくるスタン・リーに、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』へと繋ぐ『オープン・グレイヴ 感染』のトーマス・クレッチマン、エリザベス・オルセン&アーロン・テイラー=ジョンソンの『GODZILLA ゴジラ』夫婦もキャスティング。
相変わらず豪華絢爛な顔ぶれなんですけど、個人的には『人生、サイコー!』のコビー・スマルダーズがイチオシで。TVサイズの女優だなぁとは思うんですけど、あのエージェントっぽい顔立ちがなんとも好みなもんで。

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“真面目でい続ける”ってのも十分超人的能力で

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posted by たお at 09:26 | Comment(4) | TrackBack(39) | 前にも観たアレ■か行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月17日

アイスマン 超空の戦士 (冰封俠 重生之門)

監督 ロー・ウィンチョン 主演 ドニー・イェン
2014年 中国/香港映画 104分 アクション 採点★★

“ロード・オブ・ザ・リング”三部作はもう必然の結果だったんですけど、最近どうにも洋画邦画問わず二部作みたいなのが増えてきましたねぇ。「前・後編に分ける必要あるの?」と疑問の作品も多いですし。まぁ、前向きに考えれば“原作の面白さを損ねないように”ってな意向もなきにしろあらずなんでしょうけど、映画好きからの意見としては600ページに及ぶ原作を2時間以内のスゲェ面白い映画にするってのが作り手の腕の見せ所だと思ってますし、そもそも「1.5本分の予算で2本分の収益ってウハウハじゃね?」な感じの浅はかさとか、「オチを知りたければ、もう1800円払いな!」みたいな姿勢はやっぱり嫌いだなぁ

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【ストーリー】
400年に及ぶ冷凍状態から目を覚ました明の錦衣衛ホー。彼は朝廷に持ち帰るよう命じられた天竺の秘宝を探そうとするも、何もかにもが違う現代の世の中に大いに戸惑ってしまう。一方、ホー同様目覚めた二人の錦衣衛と、警察署の副署長であるチョンらは執拗にホーを追い続け…。

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予告編やパッケージデザインを見ると「お?ドニーさん主演の本格武侠ファンタジーか?」と期待してしまうが、そんな期待は1ミリも叶えてくれないアクションコメディ。登場するや否や凄まじい勢いで立ち小便するドニーさんの姿を見て、瞬時に気持ちを切り替えられるかどうかが本作を楽しめるカギかと。ここで“ウンコ”とか“おっぱい”とかばっか書いてる私はもう全然セーフでしたけど、楽しめたかどうかは微妙
“昔の人が現代に来てアワアワする”っていう思い返してみればそこそこ数のある定番ネタを、大らかなCGとざっくばらんな合成で彩り、要所要所でオナラとウンコで笑わせようとしてくる、小学生男子の心鷲掴みな本作。もともと3Dなので色んな物が手前に飛んできますが、しっかりウンコも飛んできますし。それもドニーさんの
もちろん見所はウンコのみではない。今回のドニーさんは『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』の時の様なロン毛なんですが、どうもロン毛の時のドニーさんはナルシスを爆発させるようで、格闘スタイルがいちいちハンサム。突きを決めては前髪なびかせカメラ目線、蹴りを決めては前髪なびかせカメラ目線。もう、いちいちハンサム。さっきはニヤニヤしながらウンコしてたのに。

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とまぁ、場面場面では楽しめたんですけど、如何せん全体を通すとどうにもかったるい。本作は二部作の前編なんですが、どうも最初から想定して作られてる様子はなく、場面はコロコロ展開するのに物語はサッパリ進まない水増し感ハンパなし。水増しし過ぎてストーリー自体も薄まったのか、観ている最中にもかかわらず登場人物の目的を忘れてしまうこと多々。一本で完結していれば間違いなくあらゆる意味で記憶に残る作品になっていただけに、なんとも残念。
まぁ不満も多く言いましたが、一応本編終了後に次回作への繋ぎが入るんですけど、なんか間を思いっきり端折ったのか繋がってる感じの全くしないそれに妙にそそられてしまったので、次回作ももちろん観ますよ。こういうドニーさんも好きですし。

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ロン毛への憧れ隠し切れず

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posted by たお at 12:17 | Comment(2) | TrackBack(8) | 前にも観たアレ■あ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月15日

スペシャルID 特殊身分 (特殊身份)

監督 クラレンス・フォク 主演 ドニー・イェン
2013年 中国映画 99分 アクション 採点★★

「プロレスが好き!」と言うと、「でも、八百長なんでしょ?」「台本があるんでしょ?」とよく聞き返されますよねぇ。まぁ、私自身はリングに上がったことがないのでどちらとも断言はできませんが、確かにボクシングや柔道のように“決められたルール内で相手を倒す”ことで勝敗を決する類の種目と同列に捉えると、プロレスは八百長と言われるのも仕方なしかと。ただ、技術や美しさを競うフィギュアスケートやシンクロ、若しくはボディビルなんかと同ジャンルのスポーツとして捉えると案外違和感も少ない気が。“美しさ”ってのを“強さ”に変えて、“どちらが強そうか?”“最強を表現できてるのはどっちだ?”ってのを競い合ってるスポーツとして考えれば。もうちょい枠を広げれば、アクション俳優なんかも似たようなものなのかなぁと。

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【ストーリー】
警察官への復職を願いながらも叶わないまま、長年黒社会のボスであるホンの組織に潜入捜査を続けているロン。そんな中、組のブツを奪い逃走したかつての兄弟分サニーを探すよう命じられるロン。同時に警察からもサニー確保の指令を受けたロンは、香港を離れ本土へと向かうのだったが…。

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レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』のドニー・イェンが主演とアクション監督と務めた犯罪格闘アクション。スタントコーディネートをドニー・イェンから全幅の信頼を得ている谷垣健治が務め、クラレンス・フォクがメガホンを握った一本。
高速タックルからのジャーマンスープレックスが衝撃的だった『導火線 FLASH POINT』でも顕著だった総合格闘技スタイルがより深化した本作。寝技の攻防から関節技および絞め技が決め手となる分、ぱっと見は地味であるが凄味と殺伐さ、闘いそのものの怖さってのが伝わる非常にレベルの高いアクションを堪能させられる。スクリーン上での強さをとことん追求した結果、ドニーさんが何か新しい扉を開けかけている瞬間を垣間見させられた気さえ。
しかしながら、ドラマ部がそのレベルの高いアクションに全く付いて行けていない。と言うか、とことん足を引っ張る。ある意味、洗練とは程遠いかつての香港映画らしいといえばらしいのだが、今回は三枚目気味のドニーさんらが繰り広げるバタ臭いドラマはまるで昭和のラブコメを観ているかのようで、シビアなアクションとの食い合わせ悪し。ギャップを狙っていたのならば、生憎その狙いは外れ。
まぁ、別な目論見が見える感じがする香港/中国映画が多くなってきた中で、こういう単純にドロ臭い作品を観れたってのも久しぶりの感覚ではあるので嫌いではないんですけどね。ずっと見てるとだんだん幽霊顔に見えてきたりもしますが、ジン・ティエンの美人っぷりも堪能できましたし。

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ホイチョイ版ドニー・イェン

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posted by たお at 10:29 | Comment(0) | TrackBack(8) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月13日

スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方 (The Skeleton Twins)

監督 クレイグ・ジョンソン 主演 ビル・ヘイダー
2014年 アメリカ映画 93分 ドラマ 採点★★★

兄弟が居るには居ますが如何せん上とは親子ほど歳が離れている末っ子なもんで、ほとんど一人っ子みたいに育った私。なもんで、兄弟が居るってのがどんな感覚なのかさっぱり分からぬまま大人になり、気が付いたら兄弟の親に。子供たちを見てれば多少は兄弟の感覚ってのを理解できるかと思いきや、一番上と一番下は強烈な一人っ子気質で互いに我関せずですし、その上“お前の物は俺の物”なジャイアン気質でもあるので、そんな二人に上下から挟まれた真ん中の長男はただただオロオロする毎日。想像してた兄弟像とは随分とかけ離れているので、やっぱり未だ理解できず。

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【ストーリー】
偶然にも同じ日に自殺未遂を犯していた事がきっかけで10年振りの再会を果たした、二卵性双生児の姉マギーとゲイの弟マイロ。マギーはマイロを夫と暮らす故郷のニューヨーク州へと招き共同生活を送ることに。思い描いていた人生を送れていないことを嘆くマイロと、幸せな生活を衝動的に壊そうとしてしまうマギーは共に時を過ごす中で、ある種の平穏を得たように思えたのだが…。

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クレイグ・ジョンソンが『ブラック・スワン』のマーク・ヘイマンと共に手掛けた脚本を映像化した、フワっとしたユーモアに彩られたドラマ。製作総指揮を『ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡』のデュプラス兄弟が。
誰もが羨むような“良い夫”と共に築いた幸せ“に見える”家庭を自ら壊そうとするが如く浮気を繰り返す姉と、理想としていた人生とは程遠い現実に自暴自棄となった弟が、自殺未遂をキーワードに結び付き、人生そのものを再度見つめ直す様を描いた本作。姉弟を覆う自ら命を絶った亡き父への想いと遺した言葉の呪縛、家族を捨てた母に対する怒りと諦め。それとは別に、“理想の夫”に無理に合わせるために生まれるマギーの虚無感や、初めての相手でもある男性教師との再会が過去との再会を意味し、それによってより一層理想と現実とのギャップに苛まれるマイロ。そんな二人が苦しみながらも一つ一つの重荷から解き放たれていく様を、過度に商業的でも過度にアート的でもない、非常に瑞々しくもフラットに描き上げていた一本。
ただまぁ、この“過度に商業的でも過度にアート的でもない”ってのが良い意味でも悪い意味でも如何にもサンダンス的で、“良い映画”っぽい雰囲気こそ生み出しているが、キャストと題材の割にはそれ以外の個性に非常に乏しいってのも事実な一本で。ちょっと捻くれた言い方をすれば、「この映画面白いよ!」と言っておけば通っぽく見られるって意味で便利な作品だったなぁと。

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マイロに扮したのは、『メン・イン・ブラック3』のビル・ヘイダー。元々表現力の豊かなコメディアンである上に、サタデーナイト・ライブでの持ちキャラにゲイのステフォンがあるので、そのステフォンをちょいシリアスにした本作のマイロ役がハマらないはずもなく。
また、マギーに扮したのはビル・ヘイダーとはサタデーナイト・ライブの同期生であり、『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』『アドベンチャーランドへようこそ』『宇宙人ポール』と4回目の共演となるクリステン・ウィグ。生まれ育った町にまだ住んでいるのに同級生に滅多に出会わない、ぱっと見普通なのに世界観が他者と全く違う隠れ変わり者を好演。綺麗な顔立ちなのに目が虚ろって所が、そんなマギーにピッタリだったかと。
その他『インクレディブル・ハルク』のタイ・バーレルや、『ラン・オールナイト』のボイド・ホルブルックらがキャスティングされているが、やっぱりサブタレ的に一番嬉しかったのが『Gガール 破壊的な彼女』のルーク・ウィルソン。この作品を手に取った7割方の理由がコレ。すごい久しぶりに見たんですけど、ちょいと個性が過ぎる女性を全面的に応援するいつもの応援芸を披露してくれてたので満足。他の役者であったら嫌味な役になりそうな“理想の夫”なんですけど、ルークが演じると全く嫌味がないってのも彼らしかったなぁと。途中からはもう完全にルーク目線で作品を観てましたし。
ただまぁ、展開上仕方がないとは言えただただ可哀想な扱いを受けるルークに肩入れをし過ぎちゃったので、悪い映画じゃないんだけど何処か嫌味に感じてしまったんですよねぇ。負けるな、ルーク!

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すごく近くて遠い存在なんですかねぇ、兄弟って?

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posted by たお at 11:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 前にも観たアレ■さ行■ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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