2013年 フランス/南アフリカ映画 107分 アクション 採点★★★
南アフリカを舞台とする作品って、その多くが人種隔離政策を題材としている気が。現実問題として人種隔離政策の傷跡ってのは深く残っているんでしょうし、それを描くことが南アフリカを描くこととなっているんでしょうねぇ。如何せん向こうの映画産業について詳しくないんでアレなんですが、なんてことのない娯楽映画を楽しんだ後でクレジットを見たら、監督がズールー族だったみたいな日が来ればいいなぁと思ったりも。
【ストーリー】
南アフリカのケープタウン。元人気ラグビー選手の娘の惨殺死体が発見され、ズールー族出身の刑事アリと私生活に問題を抱えた白人刑事ブライアンらのチームが捜査を担当することに。手掛かりとして浮上した新種の麻薬の流れを追跡すると、その麻薬に絡んで数多くの黒人の子供たちが失踪していることが判明し…。
キャリル・フェレによる同名小説を、『ラルゴ・ウィンチ』のジェローム・サルが映像化したサスペンスアクション。
アパルトヘイト撤廃後も埋まるどころか広がり続ける格差や、当時の亡霊が蘇ったか如くの製薬会社の陰謀など南アフリカが抱える社会問題を描いた本作。とは言っても、正反対の性格を持つ刑事コンビを描くバディアクションとしての構造で作られているので、受ける印象は『ナイロビの蜂』ってよりも真面目な『リーサル・ウェポン』な感じ。確かに堅苦しく語るよりは、娯楽作としても楽しめる一面を持っていた方がメッセージは通りやすい。
同じ国とは思えない白人の生活圏と黒人の貧民街といったビジュアルインパクトのみならず、結局白人が殺されたから事件として動き出す皮肉、一つの手掛かりからとてつもない闇が焙り出されていくスピーディでスリリングな展開など、全く飽きさせずに突っ走る物語も面白い。また、急進的な差別主義者であった父親に反発し父方の姓を捨てたブライアンと、加害者である白人の下で働くことで融和を進めていこうとするアリとの対比や、その二人が迎える結末なども非常に興味深い。
ただ、それぞれのシークエンスがぶつ切れで、上っ面を駆け足で通り抜けてしまっただけの印象も拭えず。なんというか、小説の重要ポイントだけを抜き取って継ぎ接ぎしただけの、ラフ版を観させられているような感じが惜しい。
荒くれ刑事ブライアンに扮したのは、生憎海賊アトラクションの方は観ていないので、私の中でのイメージがエルフで固まったままだった『ホビット 決戦のゆくえ』のオーランド・ブルーム。今回はヒゲにタトゥーとヤサグレ感たっぷりで慣れるのにちょいと時間が掛かりましたが、こんなオーリーも悪くなし。
一方のアリ役には、『フェイク シティ ある男のルール』のフォレスト・ウィテカー。基本インテリで温厚だが、常に何かを我慢しているって役柄が似合うだけに、その押し殺していたモヤモヤが多くの犠牲を払うことで爆発するアリ役にピッタリ。
ただ、たぶん原作にもあるんでしょうが、子供時代の迫害によって性的不能者になったって設定は本作に必要だったのかなぁと。確かにそれも押し殺しているモヤモヤポイントの重要な一つなんでしょうけど、それをウィテカーがアハンウフン喘ぐ娼婦のお尻を真顔で撫で続けるって、前後関係から見ても浮いてるヘンテコなシーンで表現しなくてもなぁと。確かに記憶にだけは強烈に残るある種の名シーンですけど、これにしろタイトルになりながらも劇中名札程度の扱いだった“ズールー”にしろ、この辺が駆け足の継ぎ接ぎ感を強めた要因なのかなぁと。
BGMはケイメン&サンボーン&クラプトンにピーター・ガブリエルを絡めて
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